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窪塚洋介
『パンドラの匣』
人生は自分自身で作っていくものだけど、最後のピースは自分で埋められるものじゃない
『パンドラの匣』窪塚洋介 単独インタビュー

取材・文:鴇田崇 写真:高野広美

今年で生誕100周年を迎えた人気作家・太宰治の同名小説を映画化した映画『パンドラの匣』が公開される。太宰作品の中でもポジティブな世界観で知られ、健康道場と呼ばれる風変わりな療養所に入所した結核の若者が、看護師や療養者たちと出会い、生きる活力を取り戻していく希望に満ちたストーリーが展開する。そんな本作で主人公の年上の友人を演じた窪塚洋介が、自身の死生観を交えながら太宰作品の魅力について熱弁をふるってくれた。

■意外にポジティブだった太宰治の世界観にびっくり!

Q:今回出演を決めた理由は?

それはですね……。ちょっとここでは言えないので、メールで(笑)。いや、一番の理由は、太宰治さんの原作ということですね。ずっと気になっていた作家さんでしたが、イメージが陰というか、暗かったので、手に取らないでいたんです。でも、今回『パンドラの匣』のお話が来たので、読むべき時期が来たなと思いました。

Q:太宰さんの作品を初めて読まれたときの感想はいかがでしたか?

まず脚本を読んで思ったのは、明るい(笑)! これほど楽しい世界観を持っている人だとは知らなかったので、今度は原作を読み、そうしたらより濃縮した感じでもっと明るかった(笑)。ただ、死に対する考え方は独特で、思わず本を伏せて考えてしまうほど深かったですね。すごく考えさせられたり、腹を抱えて笑ったり、グッと悲しくなったり、いろいろな感情をかき立てられて、最後には日だまりで希望を手渡されるような感じ。2~3回読みましたが、毎回泣いてしまうほど良かったですね。

Q:具体的にどんなところに惹(ひ)かれましたか?

ちょうど自分自身がパンドラの匣を開けてしまった時期で、はい上がっていこうと思っていたときに、太宰さんが差し出してくれた無条件の優しさがありがたかったですね。劇中の最後に「つるが伸びるほうに日が当たるよ」というセリフがあるんですが、日が当たるほうにつるが伸びていくのではなくて、伸びていくほうに日が当たるという言葉が優しいなあと(笑)。そこに惹(ひ)かれて、出演したというのはありますね。

Q:その、パンドラの匣を開けてしまった時期には、何があったのでしょうか?

そこを拾われるなと、話しながら思っていましたけど(笑)。特に何か深い事情があったということではなくて、自分自身の中でがむしゃらにはい上がっていく最中だったという、そういう気持ちになっていた時期があったということですね。ちょっと、大げさに言ってしまってすいません。深い意味はありません(笑)!

■太宰治流人生のパーフェクトな終わり方に納得

Q:本作で「健康道場」という名の療養所施設が登場しますが、入ってみた感想は?

そうですね。おれはもう1回入ったほうがいいかなと思いました(笑)。おれも入院していたので……この話ですか、求めているのは(笑)。ただ入院すると、自分自身が丸出しになりますよね。相部屋なら相手のメシの食い方なども見えるし、弱っていて自分のことでいっぱいいっぱいだから他人に気を遣うこともないし、普段よりも自分そのものがさらけ出されている。そんなことを思いましたね。

Q:確かに、主人公のひばりは自分自身を解放することで、希望を持ちますよね。

当時の人たちは結核で死んでしまうし、死と隣り合わせの状況にいるということで、一体感があるような気がするじゃないですか。太宰さんがすごいなと思ったのは、そっち(死)に引っ張ることで、ものすごく暗く描けるのに、そういうことをしなかった。死というものをあえて遠くに置いているから、全員に光が当たっていて、希望にあふれる物語が描かれている。肯定している目線がすごくいいなと思いました。

Q:そこが、太宰作品の中でも異色で人気を集めている理由ですよね。

人間を肯定する優しさを感じましたね。人って自分自身で人生を作っていくものだけど、最後のピースは自分で埋められるものじゃない。たとえば、おれが死ぬとき、葬式にどれだけの人が来てくれたとか、もちろん人数だけじゃないけど、泣いてくれてたとかそういうことで完結するのかなって気がしましたね。死をもって、その人が完成するという考え方は、すごくうなずけるものがありましたね。うまく言えないけど。

■染谷くんは、同い年ぐらいのころの自分にそっくり!?

Q:ところで、ひばり役の染谷将太くんとは、『ピンポン』で共演していたとか?

そうなんですよ。『ピンポン』のころはだいぶ子どもだったので、見た目は完全に変わっています(笑)。染谷くんは、すごく凛(りん)としていて、主役、座長の責任感もあるし、現場では主役として柱になっていましたね。ずっと現場にいて、楽屋に戻ってこないし、休憩に行けるのにカメラの横にいたりして、その姿を観ていて、すがすがしいなって。まっすぐな男なので、すごく好きですよ。

Q:染谷くんぐらいのころのご自分と重ね合わせてみて、いかがでしょう?

確かに、似ているところは多々あると思いますね(笑)。おれはとにかく現場のことをいろいろと吸収したくて強欲だったので、自分に関係ないことでもとにかく知りたかったですね。照明部や録音部とか、いろいろな現場を知りたくて、長時間現場にいたことがありましたね。

■人生で何かを残すということは魂を込めるということ

Q:今年で、太宰治さんは生誕 100年になりますが、これほど支持される理由はどこにあると思いますか?

人生が波乱万丈なところかな。彼は何回も死のうとして、最後は結局入水自殺しますよね。そのドラマチックな人生が作品の魅力に拍車をかけていると思いますけど、なんせ作家としての才能がすごいんでしょうね。文章に太宰さんのパワーが宿っているというか、自殺で人生を終えた有名人はたくさんいますけど、太宰さんの場合はそれだけじゃない。作品が本当に素晴らしいから、残っていく。改めて日本語はいいなと思わされたし、日常の言葉とは違う響きが心に残りますよね。

Q:同じクリエーターとして、何か後世に残していきたい願望はありますか?

それはありますね。音楽にしても映画にしても、本能に近いかもしれないですが、子孫を残したい思いに近いかもしれない。自分の作品、イコール自分の魂みたいなね。その自分の魂が一番リアルに伝わるのが、自分の子どもですよね。子どもの次に、映画や音楽を残していきたいという欲求は、すごくありますね。

Q:最後に、ご自身の今後の抱負や読者へのメッセージなどをお願いします。

たとえ、今言ったようなことが残せなくても、満足して死んでいけるような男になりたいと思います。今しかない、今を生きることに一生懸命みたいな、刹那的な人生を送りたいわけじゃないけど(笑)、死ぬその瞬間に、成功はしなくても栄光はあるみたいなイメージですね。自分が評価されたいからクリエートするわけじゃなくて、やりたいからやっているということが、ぶれないように生きていけたら、人生の最後は満足すると思います。おれは『パンドラの匣』でそう感じたので、これから映画を観る人にも何かを感じてもらえればと思います。

言葉に余計な装飾をせず、ストレートに考えを言うスタイルが窪塚流なら、最初から最後まで窪塚そのものが貫き通されたインタビューになった。太宰に出会い、それまで抱いていたイメージが変わったことが良かったと語る窪塚が、自身の体験も交え赤裸々に太宰への想い、死生観について熱弁してくれた。現代人に強烈な影響を与える太宰文学の威力を思い知らされる。窪塚にとって、新鮮な体験だった『パンドラの匣』は必見だ。

映画『パンドラの匣』はテアトル新宿ほかにて全国公開中

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