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広末涼子
『ゼロの焦点』
知りたくない真実が見えてきたら、放り投げてしまうかもしれないです
『ゼロの焦点』広末涼子 単独インタビュー

取材・文:鴇田崇 写真:尾藤能暢

昭和の文豪・松本清張の生誕100年を記念して、「ゼロの焦点」がスクリーンによみがえった。「砂の器」「点と線」などと並ぶ清張作品の最高傑作との呼び声も高い人気作に、アカデミー賞外国語映画賞に輝いた『おくりびと』でヒロインを演じた広末涼子が主演した。失踪(しっそう)した夫を追い、連続殺人事件に巻き込まれる妻・禎子役を演じた感想や、本作が現代に投げ掛けるメッセージなどさまざまな話を聞いた。

■時代を超えた価値観がある松本清張作品の魅力

Q:最初に脚本を読まれたときはどんな印象を持ちましたか?

脚本を読み終わったときの疲労感がすごかったことを覚えています(笑)。個人的にはサスペンスやミステリーみたいなジャンルの小説や映像作品は、その緊張感や緊迫感が体に入ってくるので苦手でしたが、今回「ゼロの焦点」を読んで思ったことは、それだけ読者を惹(ひ)き付ける魅力があるということでした。わたし自身、気が付くと世界観に引き込まれていましたし、あっという間に読み終わってしまいました。ただ、脚本を読んだだけですごく疲れてしまったので、果たして撮影が始まって、数か月間も禎子のままでいられるのだろうかという不安はありましたね。

Q:松本清張作品に対しては、どのようなイメージを持っていましたか?

清張作品のイメージは、男の人の視点で物語が進んでいくということでした。「砂の器」「点と線」をはじめ、社会派ということも含めて、男性がグっと来るストーリーですよね。でも、「ゼロの焦点」は女性の視点で、しかも3人の女性が登場して、どの女性にも共感できます。それに、悲劇が人の悪意だけではなく、時代や社会に翻弄(ほんろう)された人たちのドラマに基づいているので、同情ではなく共感を持てるストーリーだと思いました。

■愛する人のすべてを知りそうになったとき

Q:禎子はどのような性格の女性だと受け止めて演じましたか?

最初は、今とは違うお見合い結婚が主流の、女性が不自由だった時代性も含めて、だんなさんに対する忠誠心で結婚したために、妻としての責任で彼を探し求めて旅に出ていくのかと思っていました。でも、彼女は自分とも闘っていて、幸せになることをあきらめたくない思いが強い女性なんだと思いました。

Q:禎子のように愛する人のすべてを知りたいと思いますか?

本作のキャッチコピーを見て、愛する人のすべてを知らなくちゃいけないの? と思いましたが、わたし自身も待っていることが苦手なタイプなので、禎子のように自分で答えを探す行動力はあるとは思います。でも、途中で相手の知りたくない真実が見えてきたら、放り投げてしまうかもしれないですね(笑)。もう! 聞きたくない! というような感じで(笑)。

Q:反対に自分のことをすべて知ってほしいですか?

そうですね……。すべては知られたくないかもしれません。相手のことは知りたいのに、ちょっと都合がいいかな……? ただ、そもそも価値観は人それぞれ違うものだと思いますし、すべてを善悪では、分けられないと思うんです。もしだんなさんの秘密があった場合は、善悪でいうと善でないことが多そうですよね(笑)。

■演技派女優たちとの共演に圧倒!

Q:中谷美紀さんとの共演はいかがでしたか?

いつもそのシーンの空気を作ってくださっていたので、そこにわたしが立てばお芝居が成立するような感じで、本当に助けていただきました。怒っている感情や秘めた悲しみなどが肌で伝わってくる、役柄の体温を感じさせる方ですね。実は撮影中は禎子でいたために、中谷さんが演じた佐知子の気持ちに対して共感できない部分があったんです。でも完成した作品を観たとき、佐知子にも感情移入してしまい、とても悲しくなって、不思議な感覚になりました。これがお芝居の説得力なのだと思いました。

Q:木村多江さんとの共演はいかがでしたか?

『ぐるりのこと。』が大好きだったのでお会いできてうれしかったです。共演シーンは少なかったのですが、いろいろお話させていただいた中で、「わたしって不幸な役ばっかりで、大体死んじゃうの。不幸な役の多い女優と書かれるのはいいとしても、不幸な女優と書かれるとわたしが不幸みたいだよね」とおっしゃっていました。そんなふわっとした感じのままお芝居に入っていかれるので、不思議ですてきな空気感を出せる方だと思いました。

■アカデミー賞授賞式どころではなかった!?

Q:昭和30年代を舞台にした作品ということで、特別な準備をしましたか?

純粋にまっさらな状態で作品に入りたいと思っていたので、撮影の一週間前に勉強の時間をくださいとお願いして、スケジュールを空けていました。その時代を描いた別の作品を一気に観ることで時代背景に慣れて、その時代にどっぷりと入りたかったのですが、ちょうど『おくりびと』でアメリカのアカデミー賞授賞式があり、急きょロサンゼルスに行かせていただくことになりました。が、その中で、本作の勉強をしなくてはならなかったので、すごく葛藤(かっとう)がありました。クランクインする前の緊張感や焦燥感は、今でも覚えています。

Q:最後に、広末さんから『ゼロの焦点』を待っているファンに一言お願いいたします。

松本清張さんの作品は時代背景が大きく、そして色濃く出てくるのと、わたし自身ミステリーがあまり得意ではなかったので、知らなくてはいけないことが多くてチャレンジでしたが、良いものは時代を超えて永遠に残っていくと改めて感じました。清張作品と聞くと、世代が上のファンの方を想像しがちですが、世代は関係なく、女性目線で進むストーリーには女性をはじめ、共感していただけるメッセージが多いと思いますので、多くの方に観ていただきたいです。

昭和30年代を舞台にした『ゼロの焦点』は、時代背景や社会情勢など色濃く投影しながらも、3人の女性たちが幸せな生を求め、一生懸命に生きるドラマとして現代人、とくに女性の共感を呼ぶに違いない。広末演じる禎子をはじめ、中谷美紀演じる佐知子、木村多江演じる久子それぞれの姿を通じて、自分の人生を見つめ直すことができる本作を、ぜひ大スクリーンで堪能してほしい。

(C) 2009 「ゼロの焦点」製作委員会

映画『ゼロの焦点』は11月14日より全国公開

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