シネマトゥデイ

クエンティン・タランティーノ監督
『イングロリアス・バスターズ』
大好きな作品のアイデアを、故意にパクる
『イングロリアス・バスターズ』クエンティン・タランティーノ監督 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:高野広美

『キル・ビル』『デス・プルーフ in グラインドハウス』など、日本の映画ファンを熱狂させてきたクエンティン・タランティーノ監督が、今度は大物俳優、ブラッド・ピットとタッグを組んだ、過去最強の痛快アクション『イングロリアス・バスターズ』を引っ提げて来日。一足早く公開されたアメリカで、自身の過去作品が持つ興行収入成績を塗り替えた本作について熱く語ってくれた。

■ブラッド・ピットのスケジュールを押さえた瞬間に成功を確信!

Q:なぜブラッド・ピットだったんでしょうか?

なぜブラッドかって!? いい質問だね! 彼が演じたキャラクターのレイン中尉は、ずっと僕の頭の中で大切に育てていたんだ。でも誰が演じるかというのはなかなか想像がつかなかった。脚本が仕上がるちょっとくらい前に、「さて、誰に演じてもらおうか」ってことを考え出して、ふと思いついたのがブラッドだった。そうしたら、もうほかに演じる役者は考えられなくなってね。ラッキーなことに彼がイエスと言ってくれたから、考える必要もなかったけど(笑)。

Q:どのようにオファーを取り付けたんですか?

監督にとって、自分が演じてもらいたい役者にオファーして出演を取り付けるのは一番大切なプロセスだけど、僕は思い立ったらすぐ行動するタイプ。ブラッドを思いついた瞬間、すぐ行動に出た。彼とはずっと一緒に仕事をしたいと思ったから、今だ! ってね。そして幸運にも彼は、僕が大好きでとても仲のいいユマ・サーマンと同じエージェントだったから、すぐに電話したんだ。「あと3週間で脚本を書き終わるから、ぜひ読んでほしい!」ってね。そしたら奇跡的にブラッドも、ちょうど出演作品を探していたところだったんだ。

Q:多忙なはずなのに、最高のタイミングだったってわけですね!

まったくその通り! 映画っていうのは作るときからそうなんだけど、スタートがうまくいくと、どんどんうまくいく。ダメなときは、初めから壁にぶつかったりするけど(笑)。あの忙しいブラッドが、このタイミングでスケジュールが空いていたってことがわかった瞬間、この映画の成功を確信したよ。

■オマージュだらけ! 映画小僧ならではの面白さ!

Q:あなたの映画はいつも奇想天外で、思わず頭の中をのぞきたくなってしまいますが、今回の作品はどのように生まれたんですか?

作品が誕生する瞬間っていうのは、そんなに複雑じゃなくて至ってシンプル。この作品の場合は、まず何かミッションを与えられた男たちの戦争映画を作ってみたいってところから始まった。そこで始めるのは、キャラクターづくり。僕は脚本を書く前に、まず登場人物をつくり出すところから始める。そうやって書き始めるとキャラクターたちが勝手に動き出す。彼らが僕にストーリーを語ってくれる感じさ。だからとてもスペシャルで、ユニークな作品が誕生するんだと思うな。

Q:今回もこの映画にはさまざまな作品へのオマージュがありますが、どのようにアイデアを見つけていくんですか?

僕は、本当に大の映画ファンだから、いろいろな映画にインスパイアされる。そして大好きな作品のアイデアを、故意にパクッてる(笑)! 意味わかるよね? でも僕が普通と違うのは、この映画のように戦争映画だからといって、過去の戦争映画だけにインスパイアされるわけじゃない。マカロニウエスタンや、ホラー映画。いろんなジャンルの映画からインスパイアされちゃう、映画小僧ならではの面白さじゃないかな?

■僕の映画には、グロさの中にもユーモアという砂糖が入っている

Q:普段、暴力的な映画がダメでも、あなたの作品の場合はとても楽しめてしまいます。その秘密は?

それはうれしい。そう! ただの暴力的でグロい作品が、苦くてとても飲めないコーヒーだとすると、僕の作品には一さじのお砂糖が入っているんだ。だから苦いのが苦手な人でも、ちょっと甘いから飲めちゃう。そのお砂糖って何かわかる? それはユーモアさ! 僕の作品には、すべてユーモアというお砂糖が一さじ入ってるんだ。デビュー作の『レザボアドッグス』のときから、その砂糖は欠かしたことがないよ。

Q:この映画にも、甘いお砂糖が入っていました。

うん! たぶん最初に戦争映画って聞くと、みんな「よし! 重くて、殺りくいっぱいの戦争映画を観るぞ」って気持ちになるかもしれないけれど、まずは2回観てほしい。僕の映画の面白さは、2回目からどんどん出てくると思うから。観れば観るほど、楽しんで観られるようになると思う。脚本を書いているときも、観客の笑い声が聞こえてくるからね(笑)。

■僕の作品にインスパイアされた日本映画ができたら光栄

Q:日本にはあなたのファンがたくさんいます。

日本のファンには本当に感謝している。彼らは、『レザボアドッグス』のときからすごく気に入ってくれて応援してくれた。作品を作るたびに、みんなが熱烈に歓迎してくれるから、うれしく思っているよ。

Q:日本のファンに、ここまであなたの作品が歓迎されるのはなぜだと思いますか?

僕が思う理由は……僕は世界中のギャングスター映画からインスパイアされているんだ。日本のヤクザ映画も山ほど観ているし、香港のギャング映画、フランスのギャング映画、イタリアのギャング映画って具合に。そう、アメリカのマーティン・スコセッシ監督の映画だけにインスパイアされたわけじゃないんだ(笑)。

Q:だから日本人は、あなたの作品にシンパシーを感じるんでしょうね?

そうだと思う。例えば『レザボアドッグス』を観た日本の映画製作者が、「お! このアイデアで日本の俳優を使って映画を撮れば、明日にでもかっこいいヤクザ映画が作れる!」って思ってくれるんじゃないかな? 今回も、日本人のみんなが共感してくれるところはきっとたくさんあると思う。僕の作品からインスパイアされた日本映画ができてくれれば、僕は光栄で仕方がないよ!

Q:『キル・ビル』のときは、脚本が長くてシリーズ化となりましたが、今回の作品はいかがでしたか?

今回は、尺ぴったりの脚本に仕上がったよ(笑)。もともと長い映画にはしたくなかったから、脚本の段階でタイトに仕上がるようにしたんだ。それから、今回はもう最初から最後までとにかくみんなが楽しめるエンターテインメントな感じをずっと保つように心掛けた。

Q:確かに、今回の映画は最初から最後まで息切れすることなく、ジェットコースターのように楽しい感じが続いていました。

実を言うと、脚本は『パルプ・フィクション』の脚本と比べるように執筆していたんだ。この映画は『パルプ・フィクション』より長くしたくはなかった。それで僕は、この作品を書いている間、隣には『パルプ・フィクション』の脚本を置いておいた。例えば、僕が66ページを書いているときは、『パルプ・フィクション』の66ページを開いてどんなシーンだったか参考にしたり。そうすると、実際に映画の中のスピードがつかめてくるんだよ。どこに盛り上がりを入れていこうか、『パルプ・フィクション』のときにちょっともたついたところには、さらに盛り上がるシーンを入れてみようとか。だから最高傑作が出来上がったんだよね。

■最低2回は観て、どんどん出てくる面白さを味わって!

Q:最近ハリウッドでは3D映画がブームですね? もし3D映画を作るとしたら、どんな映画を作りたいですか?

僕は小さいころから3D映画が大好きさ! もしこの映画を3Dにできるなら、したいくらい! 最近思うのは、『キル・ビル』シリーズを3Dに作り直したらめちゃくちゃ面白いんじゃないかってこと。刀が目の前に飛び出してきたり、頭がぶっ飛んできたり! できることならぜひやってみたい!

Q:それはかなり楽しみですね! それでは今回の作品を楽しみにしている日本のファンに、メッセージを。

最初から最後まで、息つく暇がないくらい面白い作品に仕上がっていると思う。それは、このインタビューで言ったとおり面白い方法を使って、脚本を書いてきたからさ。 ブラッドも最高だし、ストーリーも一流! ぜひ2回は観て、どんどん出てくる面白さを味わってほしい!

とにかく映画が大好きなタランティーノ監督は一度話し出したら止まらない。いくつもの取材を受けているはずなのに、疲れたところを一切見せずに作品の誕生秘話を明かしてくれた。そんなタランティーノ監督が全身全霊で作った本作は、最初から最後までとにかく楽しめる最高級エンターテインメント作品。映画小僧が作った映画だからこそ、多くの映画ファンに愛される。ぜひ最低2回は劇場に足を運んでもらいたい。

(C) 2009 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

映画『イングロリアス・バスターズ』はTOHOシネマズ 日劇ほかにて全国公開中

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