シネマトゥデイ

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ジェームズ・キャメロン
『アバター』
美しくて平和な地球を作ろうという気持ちになってほしい
『アバター』ジェームズ・キャメロン監督 インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:高野広美

12年前のアカデミー賞授賞式で、映画『タイタニック』の言葉「わたしは、世界の王だ!」と叫んだジェームズ・キャメロン監督が、今度は映画の神に近づいた。14年の構想期間を経て作り上げた映画『アバター』では、舞台となっている惑星パンドラを、植物、虫、動物をゼロから作り、言語までも開発し、一つの世界を創造してみせたのだ。ついに本作を完成させたジェームズが、1,000人を超えるスタッフと共に作り上げた本作に懸ける思いを語った。

■僕は根っからのデザインオタク

Q:どうしてこの映画を作ろうと思われたのですか?

例えば君が小さかったころ、空を飛ぶ夢を見たことはなかったかい? そして目覚めたときに、あんな風に飛べたらいいって思わなかった? この物語の主人公であるジェイクは、車椅子に乗った青年で、いつもそんなことを考えている。その夢をかなえてあげるのが僕の仕事で、そんな夢のような映画を作ることが、僕にとっての大きな目標だったんだ。

Q:映画『アバター』の世界は、どのように作られていったのでしょうか?

作品を思いついた時点で、たくさんのアイデアがすでに頭に浮かんでいて、それをデザイナーたちと一緒に作り上げていったんだ。一つわかってほしいんだけど、僕は根っからのデザインオタクなんだ(笑)。いろいろなものをデザインするのが大好きなんだよ。僕のデザインを基に、一緒にアバターの世界を作ったクリーチャーデザイナーたちは、大興奮だったよ! 何でかというと、こんなにデザインするのが大好きな監督はなかなかいないからね(笑)。デザイナーたちは、日ごろのデザインに対する欲求を、この映画で一気に爆発させていたよ。

Q:彼らにとっては、デザイナー冥利(みりょうり)に尽きますね!

そうだね。監督である僕が、「クレイジーにやろうぜ!」って言ったから(笑)。彼らは、本当にすごい威力を発揮してくれたんだ。彼らと一緒に生み出したものは、この映画ではとても使い切れなかった。まだまだ続けていこうと思えば、登場させたいクリーチャーは山ほどいるよ! この映画でたくさん稼げたら、次の作品も作れるんだけど(笑)。

■何もないピュアな環境下で演技

Q:本作は、従来のVFX映像で使われるグリーンスクリーンではなく、ザ・ボリュームと呼ばれるスタジオで、俳優たちがモーションキャプチャーやエモーショナルキャプチャーを附けて演じたそうですね。

特に、ネイティリ役のゾーイは一度もグリーンスクリーンの前で撮影せず、ずっとザ・ボリュームの中で撮影していたよ。小型のカメラが、役者の動きや表情、感情を読み取って映像化するんだ。

Q:何もない場所で、創造力だけを頼りに演出をするのは大変ではなかったですか?

僕が思うに、役者というのは演じる相手が目の前にいれば、どんなところでも演技ができるんじゃないかな。ほら、演劇の練習や演技クラスって何もないところで、演技をするだろ? 彼らはたくさんの演技クラスを受けてきているから、さほどつらくはなかったと思うよ(笑)? 彼らに必要なのは、周りに何があるかじゃなくて、どう感じるかだからね。

Q:確かに、そう考えると逆に演じやすい環境かもしれませんね。

大変じゃないかって思う人はたくさんいるみたいだけど、逆にあんなにピュアな環境で演技をできるってなかなかないはずだよ。というのも、普通の映画の撮影現場って、照明がどうのこうのって組み立てるのを待ったり、ロケで雑音が入ってきたり、演技への集中を邪魔されることが多いんだ。

■映画作りというのは大きな冒険のようなもの

Q:本作のキャストにインタビューをしたとき、みんなが口をそろえて「キャメロン監督は最高の演技コーチ」と言っていました。

僕は自分の作品に登場するキャラクターを誰よりも愛しているんだ。それから、僕が愛するキャラクターを演じてくれる俳優たちのことも愛している。僕はキャラクターの感情を誰よりも知っているから、役者たちが演技に詰まると、みんな「ここでは、どうしたらいい?」という目をしてくる。そんなときはとにかく話し合いだよ。

Q:サム・ワーシントンやゾーイ・サルダナにとっては素晴らしい自信につながったんではないでしょうか?

そうだろうね。映画作りというのは、ある意味大きな冒険のようなものなんだ。役者と監督が必死に模索していると、そのうち最高の演技が見つかる。だからそれを信じて、お互い助け合いながら冒険している感じだよ。すべてのシーンの撮影が、新たな発見につながるんだ。

■自分が映画監督になれると思った瞬間

Q:あなたには天性の監督としての才能があるんだと思います。若いころにはいろいろな仕事をしていたそうですが、監督という仕事を選んだきっかけはいつだったんですか?

昔から映画が大好きで、アートやデザインも好きだった。それで映画の世界に最初は美術監督として入ったんだ。あるとき、低予算映画の美術監督をしていてね。その映画のセットを作ったんだ。その撮影で、監督が毎回毎回おかしなところにカメラをセッティングするんだよ。「何でそんなとこから撮るんだ?」って思ったよ(笑)。そのときまで監督をするなんて考えもしなかったんだけど、その瞬間、初めて「おれならこの監督よりうまくできる! おれは監督になるべきだ」って思ったんだ。1980年のことだよ。

Q:それからもう30年……、あなたはこんなにすごい映画を作ってしまいました!

自分でも、あのころは今自分がこんな作品を作るなんて想像もしていなかった。監督になろうって決めてから、映画『ターミネーター』を撮るまで結局4年かかったからね。その後10年して、僕はユニバーサル・スタジオの『ターミネーター』のアトラクション用に、12分間の3D映像を作った。そのころに、映画『アバター』のプロジェクトも始動したんだけど、実際にこの映画を3D にしようと考えたのは、さらにその10年後だ。そう考えると僕は何をするにも時間がかかる男なのかもしれないね(笑)。

■平和につながる親子の会話に役立ててほしい

Q:ナヴィと地球人とのバトルシーンは、アメリカのイラク戦争を彷彿(ほうふつ)とさせました。

人類の歴史というのは、インベージョンすなわち侵略に血塗られた歴史なんだ。原住民たちは、すべてのものを破壊されて、たくさんのものを奪われてきた。自分たちの欲求を満たすために、ほしいものはすべて奪う。それが侵略だよ。じゃあ侵略される側はいったいどんな気持ちなんだろう? そういう被害者の側から描いたのがこの映画で、いったい政治家たちがどんなことをしているのか、地球の人たちに目を開いて見てほしいというメッセージがこめられているんだよ。

Q:この作品は、親子連れでも観に行ける映画ですね。5人のお子さんがいるキャメロン監督は、親として子どもたちにはどんなことを感じてほしいですか?

大人には、先ほど言ったように政治家がしていることに対して目を向けてほしい。そして、子どもたちには、美しくて平和な地球を作ろうという気持ちになってほしいんだ。木々が倒されたり、森が燃やされたりしているのを見て、怒ってほしい。正義感から生まれる怒りは、子どもにとって大切だからね。そして映画を観た後に、あれは今地球上で起きていることだと、たくさんの親が子どもに伝えてほしい。この映画が、平和につながる親子の会話に役立てば、とてもうれしいよ。

短いインタビュー時間では、語り尽くせない思いが、目の前のキャメロン監督からはひしひしと伝わってきた。14年もの歳月を経て、ようやくたどりついたゴールで、やっとひと呼吸ついている彼に今一番したいことを聞いてみると、「家族とゆっくり休みたい」という言葉が出てきた。だが、そう言いながらも彼の頭の中は、本作の続編への思い、2012年に訪れるタイタニック沈没後100周年に向けての映画『タイタニック』の3D化など、まだまだ映画への情熱であふれている。スピルバーグが認めた鬼才は、これからもわたしたちにたくさんの驚きと感動をプレゼントしてくれることだろう。

映画『アバター』はTOHOシネマズ 日劇ほかにて全国公開中

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