シネマトゥデイ

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こはたあつこのうわさの現場潜入ルポ
不況の中でけらけら笑う!パクリ映画専門の製作会社の巻

取材・写真・文:こはたあつこ(LA)

アメリカと日本のビデオ屋さんに並ぶ冗談みたいなタイトル。映画『トランスフォーマー』をパクった『トランスモーファー』、映画『ダ・ヴィンチ・コード』ならぬ『ダ・ヴィンチ トレジャー』、そして映画『紀元前1万年』のそばに『紀元前1億年』! 何じゃ、こりゃ!? ……実はこれすべて、有名作品のパクリを得意とするB級映画専門の製作会社の作品なんです。さあ、今日はそんなアサイラム社をゴホーモーン!

ローラーブレードで登場した社長!

ブロックバスターならぬ「モック(模倣)バスター」と呼ばれるアサイラム社の作品。不況の風をものともせず、小さな製作会社なのに、毎月1本のペースで、年間約15本もの作品を作り続ける。批評家たちにぼろくそに言われながらも、「売れるんだから!」と開き直り、模倣作品、スプラッターもの、青春エッチ系や低予算SF作品など、B級路線をまっしぐら! 映画館では公開せず直接ビデオでリリースするので、R指定内容もばっちりOK!

それって一体どんな会社なの? 興味津津で訪問したロス近郊のバーバンクにあるアサイラム社。出迎えてくれたのは、デヴィッド・マイケル・ラット社長、43歳。何と、ローラーブレードを履いての登場だ。「会社が広いから、これで移動すると便利なんだよ」とシャーっと別の部屋に滑っていく。その後を小走りについていくわたし。うう、なんてぶっ飛んだ社長なの!? そんなデヴィッドは笑いながらツアーを始める。「これが編集室で、あっちはスタジオ。ここでセット撮影もできるよ。」広いスタジオ内にはポップな色のオフィスが並び、天井にはメタルの配管がはう。まるでニューヨークソーホーのアートスタジオだ。そんな中、8名の常勤社員と2、30名の非常勤スタッフが撮影や編集の仕事をする。スタッフは皆若く、自由な雰囲気が漂う。社長のデヴィッドも、自らコーヒーを入れてわたしに差し出す。

「モックバスター」誕生のいきさつ

1997年に設立されたこの会社、もともとインディーズ系のアート作品やホラー作品を製作していた。ところが、2005年に、方針が大きく変わる。当時、デヴィッドは、H・G・ウェルズ原作の「宇宙戦争」の映画化を試みていたが、たまたまスティーヴン・スピルバーグも同じことをしていると聞き、「こりゃ、勝ち目がない」とやめることに。ところが、アメリカの大手レンタルビデオチェーンのブロックバスター社が「逆に、ぜひ作ってくれ」と後押しした。「さすがだ。二匹目のドジョウは売れると見込んだんだね」とデヴィッド。結果、ブロックバスター社はアサイラム版の『宇宙戦争』を、アサイラム社としては前代未聞の本数で購入することに。それ以降、会社の方針を大きく変え、恥も外聞もなくパクリ路線をまっしぐら!

その製作過程だが、まずは大手映画会社が製作している作品のうわさをインターネットなどで調べる。どうやらマイケル・ベイ監督がトランスフォーマーというタイトルで、機械がロボットに変身する映画を作っているようだ、と。その情報を基に、アサイラム社はオリジナルの脚本を書く。別にベイ監督の脚本を盗むわけではない。そして、マイケル・ベイ監督の映画『トランスフォーマー』が公開される2日前にビデオでアサイラム社版をリリースする。デヴィッドいわく、「タイトルは、『ロボット・ウォーズ』でも良かったが、『トランスモーファー』の方が売れると思ってね」とにやり。

20世紀フォックスから訴えられた!?

でも、そんなタイトルをつけて、大手映画会社から訴えられないんだろうか? 「今まで訴訟で負けたことは一度もない」と、デヴィッド。「実は、『地球が静止した日』を製作したとき、映画会社ではなく『地球が静止する日』のプロデューサーから苦情の手紙が届いた。『訴えるぞ!』と、強い口調で書かれてあったから、負けない口調で反撃した。大手映画会社だって同じようなことを合法的にやっているじゃないかとね。いろいろ例を挙げてやったら、相手もびびってね」とデヴィッド。「アサイラム社は何でも派手にやる。戦って変に注目を浴びて損するのは相手なんだ」と教えてくれた。この会社、配給会社出身で共同経営者のデヴィッド・リマゥイーなどがビジネス面や法律面をがっちり固めているので、敵に回したら怖いかも!?

日本が海外で一番のお得意さま

ところで、聞いてびっくり。アサイラム社の海外での一番の得意先は日本だそうだ。収益の半分は海外からというからその比重も大きい。そして、見せてくれたのが、日本語版DVD『メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス』だ。巨大なサメとタコが絡み合っているジャケットは、「さすがアメリカのB級映画」と、吹き出しそうになる。ところが、何と驚き! 実はこの作品、長年のお得意先である日本の配給元ニューセレクト社(アルバトロス・レーベル)がストーリーを発案したそうだ! え、アメリカ人じゃなかったのー? うーん、B級映画も逆輸入の時代!?

ちなみに、アサイラム社の作品内容はすべて配給会社との話し合いで決めていくそう。日本とアメリカの両方の配給会社が興味を見せた場合は、双方に伺いを立てながら内容を決める。「例えば、ディザスターものを好む日本側から『潜水艦ものでディザスター映画をつくれないか』という要望が入る。それをアメリカ側に持っていくと、『潜水艦ものはもう売れないからねー』と渋い顔。そこで、「巨大なモンスターを登場させたらどうか」という案を双方に戻す。すると双方が喜び、両方とも購入してくれるという確信ができる。それで初めて撮影を開始するんだ」と、デヴィッド。まるで、若いカップルが双方の両親の要望を聞きながら披露宴の内容を固めていく過程とそっくりだ。「その通り。業界には、それに嫌気がさして、勝手に自分の作品を作る監督がいるが、結局リリースされないんだ」と答える。「じゃあ、アサイラム社は?」と聞くと、デヴィッドは胸を張って答えた。「配給会社が『売れる』と太鼓判を押すストーリーしかつくらないよ」ときっぱりと言い切った姿に、不況をたくましく生き延びる会社のエネルギーを感じた。

一見普通な概観
社長のデヴィッド。彼のほかに後二人経営者がいる
ローラーブレードですべりまくる社長
編集室
アメリに似たスタッフ
NYのアートスタジオみたいな内装
ブルーの箱に過去の作品のフィルムがいっぱい
どこまでも自由な社長
3人目の経営者のポール。まじめな彼はデヴィッドのローラーブレードに苦笑
『メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス』の日本版ジャケット
インディーがこんなことに……
たしかにパイレーツっぽい
ターミネーターが隊列組んでます
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