シネマトゥデイ

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柴咲コウ
『食堂かたつむり』
ちょっとでも料理の大切さを感じてもらえるとうれしい
『食堂かたつむり』柴咲コウ 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:吉岡希鼓斗

小川糸原作の同名小説「食堂かたつむり」が、映画『ウール100%』でデビューを飾った女性監督富永まいの演出で、ファンタジックで個性的な作品に映画化された。失恋のショックから声を失い、故郷で小さな食堂を開く主人公には、女性から絶大な支持を得ている女優の柴咲コウ。大の料理好きだという柴咲の劇中の料理シーンは、吹き替えなしにすべて自身で演じ切ったという。料理というテーマに惹(ひ)かれて本作のオファーを受けたという彼女が、本作や料理についてめいっぱい語ってくれた。

■チッて舌打ちしちゃうようなところのある女の子

Q:本作は、テレビ「王様のブランチ」で紹介され、若い女性を中心に人気を集めた小説です。原作のキャラクターに、柴咲コウというスパイスでどんな味付けをしたのですか?

原作を読むと、芯は強いけど、ポーカーフェイスな女の子っていう印象があったんです。でもわたしがやるからには、淡々としている部分もありつつ、チッって舌打ちしちゃうようなところもある女の子にしたいと(笑)。やっぱりセリフもなくて、能面だと、観客が感情移入しづらいと思ったので、なるべく感情を表に出すように演じました。

Q:富永監督とは、具体的にどんな話し合いをして、役づくりされたのですか?

倫子が料理を作る前に、儀式をするんです。その儀式で料理を作る集中力も高めていったり、料理への気持ちを込めていったりするんです。本番前のカメラテストの段階から、その祈りの儀式をするように話し合いで決め、集中力を高めるように工夫しました。

Q:富永監督は、女性でしたが、男性監督と違う点はありましたか?

女性監督ということは、あまり気にしないようにしました。監督が女性だからといって構えるところもなく、逆にナチュラルにできました。わたしは監督についていくのが好きなタイプなんです。富永監督は、長編2作目だったので、監督自身不安なところもきっとあったと思うんですが、そういうことを感じさせずに、自分の撮りたい物を主張してくれたので、言われたとおりについていくことができました。

■フワフワとした母親だとしっかりした子どもが育つ

Q:余貴美子さんとの親子関係もいろいろ大変そうとはいえ、観ているこちらはとても楽しかったです!

わたしはもう、倫子ちゃんの気持ちがすっごいよくわかりましたね。フワフワしたお母さんだと、子どもはしっかり育つと思うんですよ。ていうのも、わたし自身そうなんで(笑)。わたしの母親は結構フワフワしていました(笑)。何を考えてるんだろう、この人……っていうような人だったので、わたしがしっかりしなきゃと思いながら育ちました(笑)。

Q:たとえどこか頼りない母親でも、その子どもが柴咲さんみたいに立派に育つならいいですね。

いや~でも大変ですよ。小中学校のころは、苦労でしかなかったから(笑)。よく「ちゃんとしてよ~!」とか、家で爆発していましたね。かなり反抗期がありました。

Q:余さんが演じられたお母さんは、かなりすごいですよね。セクシー過ぎるというか……。

女くさいですよね~。何かお母さんっぽくないですよね。

Q:やはり柴咲さんもあのお母さんは嫌ですか?

嫌です(笑)。昔、母親が使っているスプレーがあって、それがすっごい香料だったんですよ。もうずいぶん長いこと家にあったんで、今でも覚えているんですけど。そのヘアスプレーのにおいが嫌で(笑)。でもある日、時間を置いてかいだら、何だか懐かしくて、「嫌いじゃないかも」って思った自分がいたんですけどね。劇中に倫子がお母さんに、香水を吹きかけられて、嫌な顔をするシーンがあるんですが、嫌だった母親のヘアスプレーの記憶を掘り起こして演じていました。素の反応だったと思います(笑)。

■熊さんと倫子の関係が、実はすごくうらやましかった

Q:お母さんもとても個性的でしたが、倫子を取り巻くキャラクターも個性的でしたね。ブラザー・トムさん演じる熊さんとの名コンビぶりも楽しめました。

熊さんとの関係は、バックグラウンドがなくても成立するんですよね。二人が久しぶりに会うシーンを観るとわかると思うんですけど、あの二人にはすごくナチュラルな空気が流れているんですよ。画面を通しても、あの空気は伝わると思うし、説明のいらない温かい関係なんです。

Q:確かに二人がスクリーンに映ると、すごく温かい感じがしました。

たぶん、あれこそが隣人愛だと思います。赤の他人ではあるけど、自分が小さいときからずっとそばにいて、見守ってくれている人。そういう人って、10年ぶりに故郷に帰って会っても、「あら~久しぶり、元気?」という一言で、瞬時に昔の関係に戻れる。熊さんと倫子もまさにそういう関係で、実はすごくうらやましかったですね。

■倫子のように料理はなるべく手をかけて作る

Q:映画『食堂かたつむり』を観ると、ゆっくり時間をかけてご飯を作ることの大切さが伝わってきました。忙しい仕事をしていると、ついコンビニ弁当を買う生活になってしまうのかと思うんですが、ご自身で料理はされますか?

作って食べるのが基本ですね。コンビ二で買うのは、よっぽど興味があって食べるときくらいで、面倒くさいとか、時間がないという理由でコンビニ弁当を買うことはないです。

Q:すごいですね! 大変ではないですか?

なるべく火を使うようにしてるんです。買ってきたものをそのまま食べるのが嫌なんです。レトルトのマーボー豆腐とかも好きなんですけど、お豆腐を切ったり、いためたり、料理として成立するところがあるじゃないですか? それが最低限です。

Q:この映画に出演されて、改めて感じたお料理の大切さはありましたか?

やっぱり、料理に込めた思いは必ず伝わるってこと。だから、倫子ちゃんのように、料理にはなるべく手をかけて作るようにしています。普段料理をしない人が、この映画を観てちょっとでも料理の大切さを感じてくれるとうれしいです。

■炊飯器を使わずに、土鍋でご飯を炊いています!

Q:この映画では食に対するこだわりがたくさん描かれていますが、柴咲さんの最近のこだわりは何ですか?

最近、炊飯器を使わずに、土鍋でご飯炊いています。時間がかかるかと思ったんですが、30分くらいあれば炊けちゃうんですよ。

Q:土鍋でお米炊くとは、かなりこだわっていますね!

最初使い出したときは、面倒だからやめよってところがあったんですけど、続けていくうちに、土鍋でご飯が今では生活の一部になりました。もうそれが日常なんです。だからいつのまにか土鍋でご飯炊くのも、全然苦じゃない。だって、土鍋でお米を炊きながら、ほかのおかず作れるんですよ。時間もゆっくり使えるから、いいですよね。

Q:この映画には、たくさんの料理が登場しますが一番印象的だった料理は?

一番印象的だったのは、鳩(笑)! わたしもよくわからないで食べていました(笑)。ソースがめちゃくちゃおいしかったんです!

Q:映画はバレンタインごろに公開されますが、柴咲さんはバレンタインに手作りチョコを作る予定はありますか?

バレンタインには、まったく興味ないんです(笑)。去年初めて、生キャラメルを作って周りのスタッフさんに配ったんですけど、それ以前はまったくキュンときたことないんですよ。むしろ「ください」って思っていました(笑)。

Q:最後に、劇中に登場する料理の中で、大切な人に作ってあげる一番お薦めの料理は?

参鶏湯(サムゲタン)とティラミスが、すごくおいしかったです! ティラミスは簡単にできるレシピもあるので、バレンタインにぜひ作ってみてください!

「お料理が大好き!」という柴咲は、土鍋で米を炊く話を始めると、もう止まらなくなるくらいに熱っぽく語ってくれた。その分、この映画にかけた気合もハンパではなかったようで、原作ではほとんど感情を表に出さなかった主人公の倫子が、柴咲が演じると、クルクルと表情を変え、さらに魅力を増していた。これが、柴咲コウという名のスパイスの効き方なのだろう。自分自身の持ち味を誰よりもわかっている彼女が、また新たに愛すべきヒロインを作ってくれた。

映画『食堂かたつむり』は2月6日より全国東宝系にて公開

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