
取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美
港町の小さな美容室を舞台に、大人の女性の切ない恋を描いた西原理恵子の同名人気漫画を、映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の吉田大八監督が映像化した映画『パーマネント野ばら』。男運の悪さを自覚しながらも、たくましく生きる町の女たちの良き相談相手であり、自身も秘密の恋をしているバツイチのヒロインなおこを、演技派として知られる菅野美穂が繊細に演じている。そんな菅野が、作品の裏話から作品を通して感じた恋愛観まで、素直な気持ちを明かしてくれた。
■ヒロイン役に決まって、うれしいと同時に残念でもあった!? Q:西原理恵子さん原作の作品だけに、ユーモラスな場面と叙情的な描写とのバランスが絶妙でした。 西原さんは、本当に悲しいことをギャグや下ネタで表現されるんですよね。だからこそ、その悲しさが胸に迫ってくる。「パーマネント野ばら」は、映画化されると聞いてから原作を読んだんですけど、キャラクターもそれぞれ個性的でエネルギーにあふれていて、こんなにパワーのある物語が映画になったら面白くなりそうだなと思いました。 Q:最初に原作を読んだときは、どの役をやるのかわからなかったそうですね? そうなんです。もしもパンチパーマのおばちゃん役だったら、わたしもパンチにしなきゃいけないのかな? と思っていたんですけど(笑)。実際は、なおこの役だったので「ありがとうございます!」と思うと同時に、ちょっと残念でもありました。 Q:なるほど、菅野さんとしては、パンチのおばちゃん役のオファーでもOKだったんですね(笑)。 原作を読んで一番印象に残ったのが、パンチのおばちゃんたちだったんです。かなりはじけたキャラなので、演技としてはやりがいがありそうじゃないですか(笑)。 Q:そんなエキセントリックな登場人物が多い中、菅野さんの抑えた演技が印象的でした。 今回は、あまり演じたことのない受身の役柄だったので、なるべく気負わないように心掛けました。役に集中して取り組んだというよりは、できるだけ肩の力を抜いて、ゆっくり呼吸しながら演技をした感じです。ロケ現場が西原さんの故郷の高知県で、合宿スタイルだったことも大きかったですね。あの場所にいるだけで、自然に役に入っていけたような気がします。 | ![]() |
![]() | ■恋人役の江口洋介に助けてもらった! Q:下ネタもバンバン飛び出すおばちゃんたちとのシーンは、かなり楽しかったのではないですか? すごく楽しかったです。でも、控え室はもっと面白かったんですよ! 皆さんのこれまでの人生を話してくださるんですけど、きっちりフリとオチがあるので、いつも爆笑の連続でした。アドリブでも十分面白いおばちゃんたちだったんですけど、吉田監督はハッキリとしたイメージを持たれた方なので、映画の中ではアドリブは一切ないんです(笑)。 Q:恋人のカシマと一緒にいるときのなおこが、とても初々しくてかわいらしかったです。それは、カシマ役が江口洋介さんだったことも大きいのでしょうか? 江口さんには、本当に引っ張っていただきましたね。お店にいるときのなおこは、自分の気持ちを押し殺しているけど、カシマといるときだけは、隠していることを取り払って素直になれる。そんななおこの気持ちを、江口さんがうまく引き出してくださったんです。それに、とてもパワフルな方なので、演技だけではなく、精神面でも助けてもらいました。江口さんは撮影の後半から参加されたんですけど、ちょっと疲れていたわたしたちも、江口さんが来てくれたことで元気になりました(笑)。 Q:なおことカシマの胸キュンシーンが満載ですが、菅野さんがアイデアを提案された場面もあったのですか? 西原さんの作品は、相手にあまがみ(軽くかむ)をすることで「好き」という気持ちを表すことが多いのです。でも、今回の台本には書いていなかったので、なおこがカシマの手をかむシーンは、わたしから監督に提案してみました。そしたら、監督が「こうですか?」って江口さんの手をかもうとするんですよ! ちょっと危なかったです(笑)。 |
■ダメ男に尽くす女性に対して思うこととは? Q:なおこの母親や親友など、本作に登場する女性の大半は、浮気性やギャンブル好きな男に振り回されますが、ダメ男に尽くしてしまう女性に共感できますか? 「もったいない!」って思いますね。わたしの友達が振り回されていたら、「良くないと思うよ」と意見したくなってしまうと思うんですけど、そう言うとほとんどの女の人は、「でも、本当はいい人なのよ」とか言って、彼氏をかばうじゃないですか(笑)。だから、正しい意見を言うのではなく、その人がどうしたいのかを考えてあげることが大切ですよね。 Q:ということは、友達が不幸な恋愛をしていても、あえて意見はしないタイプなのですね。 そうですね。この作品の女性たちも、相手の恋を否定せずに、その人がしようとしていることを黙って聞いて見守ってあげますよね。女同士って、相談ごとがあっても自分の中で答えを決めていて、相談した相手から欲しい答えが出てくるまで永遠に話が続いてしまうことが多い。それって不毛かもしれないけど、悩みを打ち明けること自体が友情の証だったりするし、誰かに話すことによって心が癒やされる、セラピーのようなものなんですよね。 Q:菅野さんご自身は、女性に甘えてしまうダメ男をどう思いますか? わたしはイヤです! 男の人って、尽くせば尽くすほど甘えてしまうような気がするんですよ。人間って便利になると、便利になった分、怠けるじゃないですか。この映画の中でも、女の人は自分が変わった方が早いと気付いてどんどん大人になっていくのに、男の人はずっと子どものまま。そんなのはイヤだなあと痛感しました(笑)。 | ![]() |
![]() | ■この作品に出演して、「恋をしていい!」というハンコを押してもらった Q:主人公のなおこはもちろん、パンチのおばちゃんに至るまで、誰もが恋をしている本作から、何か影響されたことはありますか? この作品に出演して、いくつになっても恋をしていいんだと教えてもらいました。「恋をしていい!」ってハンコを押してもらったような気がします(笑)。わたしが子どものころは、女の人は母親になる前に最後の恋をしなきゃいけなくて、その後に恋心が芽生えたとしても消さなければならないと思い込んでいたんです。でも、全然そうじゃないんだと思えるようになって、気持ちがとても楽になりました。 Q:大人の女性の恋を体現した菅野さんから、これから映画を観る女性たちにメッセージをお願いします。 西原さんが過去に経験されてきたことが色濃く出ている作品なので、女性たちのセリフに重みがありますし、胸に刺さるシーンがたくさんあると思います。あとは、しょうもない恋をしている女性ばかりが登場するので、「自分の恋の方がマシ!」と思ってもらえるんじゃないでしょうか(笑)。個性豊かな恋の物語を、皆さんに楽しんでもらえたらうれしいです。 |
まるで少女のように華奢(きゃしゃ)でキュートでありながら、しっかりとした自分の意見を持つ男前の菅野。テレビドラマでは個性の強い役を演じることが多い彼女だが、本作では透明感あふれるヒロインを熱演。劇中で恋人とデートをしているときの菅野の表情は、まさに「恋する乙女」そのもので、観ているこちらまで恋愛モードになれること確実だ。ちなみに、自身の原作作品には必ずカメオ出演する西原が、今回は意外な場面に登場するので、そちらもお見逃しなく! ヘアメイク/ 北 一騎(アユターレ) (C)2010映画『パーマネント野ばら』製作委員会 | ![]() |
『パーマネント野ばら』は5月22日より新宿ピカデリーほかにて全国公開
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