シネマトゥデイ

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アントニオ猪木
『ACACIA-アカシア-』
アゴをこんなに褒められたのは初めてです
映画『ACACIA-アカシア-』アントニオ猪木 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:吉岡希鼓斗

子どもを亡くした過去を持つ孤独な老人と、親の愛情を知らない少年のきずなを、辻仁成監督が温かな視線で描いた映画『ACACIA-アカシア-』。主人公である元プロレスラーの老人を演じるのは、自身もプロレスラーとして活躍していた、アントニオ猪木。自らも子どもを亡くした過去を持つ猪木は、本作で、これまで誰も見たことがなかった孤独な一面を、演技と共にさらけ出した。日本が誇るプロレスラーとして歴史に名を刻み、現在は多方面で活躍を続ける猪木に、映画初主演の感想を語ってもらった。

■映画の出演も、迷わずいけよ! ってことで、すぐにOK

Q:今回、どのようないきさつで映画に主演されることになったんでしょう?

ホテルのロビーで偶然、辻監督を紹介されて、すぐに映画出演のオファーを受けたんです。最初は、「おれが映画やるの?」ってびっくりしましたね。人間っていうのは、「よし! やろう」っていう気持ちが浮かんだ後に、「いやいや、そんなことやめとけ」っていう気持ちの振り子が振れると思うんです。でも、映画の出演は、迷わずいけよ! ってことですぐにOKしました。

Q:辻監督との初タッグとなりましたが、タッグを組んだ感触はいかがでしたか?

僕は誰とでもタッグを組める人間なので楽しかったですよ(笑)。彼がこの映画を作りながら、悩んだりしている姿を見て、監督って本当に大変なんだなあって思いましたね。

Q:映画の中では、“大魔神”というリングネームでしたが、このネーミングはいかがでしたか?

フフフ。あんまりいないよね、大魔神は。魔王はいるけどね。最初は、違和感があったけど、撮影が進んでいくうちにだんだん違和感はなくなっていったよ。

■台本通りにセリフを読む作業は大変でした!

Q:回想の中でプロレスをされるシーンは、とてもかっこよかったです!

本当はあんまりプロレスを映画ではやりたくなかったんだよね。でもこの映画のストーリーをちゃんと読んで、監督と話していったことで、自分の中でも納得できたから。プロレスのシーンも、監督と打ち合わせしながら動きを決めていったんだよ。

Q:初めての映画出演で、一番苦労したのはどんなところでしたか?

僕は原稿を読むのが非常に苦手だから、台本通りにセリフを読む作業は大変でしたね。自分がやりやすいように直したり、辻監督と話し合いながら決めていきました。

Q:この映画では、普段見ることのできない猪木さんをたくさん見ることができました。例えば、猪木さんが背中を丸めてお裁縫をするシーンなんかとても印象的だったんですが、普段お裁縫とかされたりするんですか?

あんまりないですねえ(笑)。でも、ボタンが取れちゃったときなんか、付けたりするよ。そんなに得意な方じゃないんだけどね。

Q:猪木さんが、ボタン付けっていうのも、ちょっと意外ですね!

そうかな(笑)。ハハハ! 最近、ボタン付けをする人、あんまりいないから、珍しいのかもしれないね。

■子どもたちに、体をぶつけ合うことの楽しさを教えてあげたい

Q:少年に、プロレスを教えるシーンはとても楽しそうでしたね!

タクロウ役の少年(林凌雅)は本当に人懐っこくてね。演技もうまくて、天才少年だったんだよね。撮影のとき、ちょうど腰を痛めていてあまり動けなかったんだけど、もうちょっと腰の調子が良ければ、大技もかけてあげたかったんだけどね。残念だよね。

Q:あのシーンは、猪木さんが現代の子どもたちに、プロレスの良さを教えているようにも見えました

うん。昔は、相撲をしてよく遊んだもんだけど、今の子たちは、体をぶつけ合って遊ぶことが少ないように思うね。子どもたちには、ゲームで戦うよりも、体をぶつけ合うことの楽しさを教えてあげたいんだよね。

Q:男の子が覆面をかぶってプロレスごっこをするシーンがありましたが、猪木さん自身は覆面をかぶってリングに上がったことはなかったですよね? 実はひそかに覆面にあこがれたりしたことはないんですか?

ハハハ(笑)。あこがれというか、リングの上じゃなくて、いたずらで覆面をしたことはあるよ。会場に覆面をかぶって、黙って会場に入ったりしたことはあるよ(笑)。

Q:猪木さんって、いたずらがお好きなんですか?

うん(笑)。好きなんだよね。ハリウッドまで行って衣装探して、あごを隠すためにひげを付けて、カウボーイの変装して、サングラス掛けてさ(笑)。みんなをだませはするんだけど、なかなかお金がかかるんだよ(笑)!

■子どものころの苦労は、人それぞれ、感じ方次第

Q:猪木さんは、この映画に登場する少年ぐらいのときブラジルに渡って、大変な子ども時代を過ごされたんですよね?

みんな苦労って言うけど、あんまり苦労とは思っていないんだよね。ほら、苦労したっていう方が、ストーリー性が出るじゃない?(笑)子どものころの苦労は、人それぞれ感じ方次第だと思うから。確かに、あのころは大変だったよ。朝早くにラッパで起こされて、夜まで休みなく農作業して……確かに大変だったんだけど、そのころはその生活が当たり前だったから、大変だと思っていなかったんだよね。

Q:そのころの猪木さんを支えていたものって何だったんでしょうか?

うーん。やっぱり家族が一緒だったっていうのは大きいよね。今は、少子化になっているから、この映画に登場する少年のような孤独な子どもも多いかもしれない。それはすごくかわいそうなことだよね。

■アゴをこんなに褒められたのは初めて!

Q:辻監督が、「猪木さんの横から見たあごのラインほど、セクシーなものはない!」とおっしゃっていました。

いえいえ。アゴをこんなに褒められたのは初めてです(笑)。昔は、このアゴがいやだったんですから……。

Q:そんなふうに思っていらしたときがあったんですね! それは、いつごろだったんですか?

入門してすぐのころかな。日本に来てすぐに、お客さんに「アゴ、アゴ」って呼ばれていましたから。ほんとにお嫁さんもらえないんじゃないかって心配になっちゃって、お医者さんに行ったんですよ。そしたら、「心配しなくていい。あんたの顔は一度見たら絶対に忘れないから、人気商売にはもってこいだ!」って言われて(笑)。褒められたのか何だか知らないけど、そのときからあまり気にしなくなりましたね(笑)。

Q:最初のシーンの猪木さんの横顔は、辻監督がおっしゃるとおり、とてもすてきでした。アゴのラインも!

そうですか? 昔からのお知り合いに思えませんでしたか?

Q:え……?

ロングロングタイム・アゴ!!!ってね(笑)。フフフ。

最後は、世界最強のダジャレで締めてくれたアントニオ猪木。一つのことに、生涯を懸けて頑張っている人は、こんなにもおおらかで、こんなにも温かいということを、この取材で彼は教えてくれた。彼の持つ器の大きさ、心の優しさは、スクリーンからもひしひしと伝わってくる。プロレス界の頂点に立つまで、彼が乗り越えてきた悲しみや、苦労は、計り知れないはずなのに、目の前にいる猪木は、それをみじんも感じさせなかった。この映画には、猪木の生きざまが投影されている。猪木の背中からにじみ出る温かさをぜひとも感じ取ってほしい。もちろん、セクシーなアゴのラインのチェックも忘れずに!

映画『ACACIA-アカシア-』は6月12日より角川シネマ新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国随時公開

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