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神木隆之介、鈴木敏夫プロデューサー
『借りぐらしのアリエッティ』
ちゃんと向き合っていけば、相手も受け入れてくれる
『借りぐらしのアリエッティ』神木隆之介、鈴木敏夫プロデューサー 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美

小人の少女アリエッティと人間の少年・翔との出会いと交流を、美しい映像と音楽で描いたスタジオジブリの最新作『借りぐらしのアリエッティ』。本作でどこか寂しげな翔の声を務めたのは、俳優としても絶大な人気を誇る神木隆之介。2001年公開の『千と千尋の神隠し』で坊の声を担当して以来、数々のジブリ作品に参加してきた神木が、彼の才能をよく知るスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと共に、作品にまつるわるエピソードを語ってくれた。

■神木隆之介の芝居を鈴木プロデューサー大絶賛!

Q:ジブリ作品ではすっかりおなじみとなった神木さん。顔なじみのスタッフも多い中での今回の現場はいかがでした?

神木:これまでのジブリ作品だと2、3日はスタジオに通っていたのですが、今回は1日だけだったんです。あっという間に収録が終わってしまったので、あまり監督さんやスタッフさんとお話ができなくて、ちょっと寂しかったです(笑)。でも、皆さんの温かい雰囲気は変わらなかったので、まるで親せきの家にいるような感じでした。

Q:ということは、鈴木さんは親せきのおじさんのような存在なのでしょうか?

神木:そうですね(笑)。

鈴木:おじさんというよりも、おじいちゃんでしょ(笑)。

Q:鈴木さんも、幼いころから成長を見守ってきた神木さんには、特別な思いがあるのでは?

鈴木:神木くんは、とにかく芝居がうまいんですよ。よく、「うまい子役は大人になると難しい」というじゃないですか。そこを突き抜ける人ってなかなかいないんだけど、彼は違いますね。『千と千尋の神隠し』で初めて声優をお願いしたときは、まだ10歳に満たなかったのに天才的な才能を発揮してくれた。それから、『キリクと魔女』『ハウルの動く城』、あとは・・・・・・。

神木:「星をかった日」ですね。

鈴木:そうそう。いろんなジブリ作品に出てもらったけど、そのたびに、「芝居のうまさが途切れてしまったのでは?」と心配になるんです。ところが、まったく途切れない。今回も、翔の声は神木くんでと最初から決めていたのですが、あの難しい役を見事にやってのけてくれて…・・・。でも、この先はどうなんだろうね(笑)。

神木:そんな! これからも精いっぱいがんばります(笑)。

■残酷なセリフを言うときのポイントは「焼きもち」

Q:優しさと残酷さを併せ持ち、自分の病気も冷静に受け止めている翔は、神木さんにとって感情移入しやすいキャラクターだったのですか?

神木:僕も小さいころは体が弱かったので、翔くんの思いはよく理解できました。それから、アリエッティに「小人は絶滅する」と残酷なことを言うところは、監督の麻呂さん(米林宏昌)に、「翔は、アリエッティの口からスピラー(小人の少年)の名前が出た瞬間に焼きもちを焼く。その気持ちで残酷なことを言ってほしい」と言われていたので、「わかるわかる」という感じでした。

鈴木:わかったんだ(笑)。

神木:だって僕、焼きもち焼きですから(笑)。

鈴木:どんなときに焼きもちを焼くの?

神木:僕は、お母さん子だったので、母が父や姉と話しているだけでも焼きもちを焼いていたんです。だから、翔くんの気持ちはすごくよくわかります(笑)。

Q:とはいえ、翔はあまり感情を表に出さないので、気持ちを表現するのは難しかったのでは?

神木:すごく難しかったです。アニメのアフレコをやるときって、キャラクターの表情がそのまま自分の表情になると思うんですよ。例えば、コミカルな表情のときは、自分もコミカルな顔を作りながら声で思いっ切り表現する。でも、今回の翔くんは、悲しいときはうつむくくらいだし、うれしいときもほほ笑む程度なので、フラットな芝居をしながら気持ちを伝えなきゃいけなかったんです。感情表現がオーバーでもダメだし、抑え過ぎると無感情になってしまう。そのバランスをとるのが大変でした。

鈴木:それを、あっという間にやってのけるんだよね。一番初めに撮ったのが冒頭のナレーションだったんだけど、作品のイメージを決めるところなので、決して簡単ではないんです。それが、一発でやってのけたからビックリしたんですよ。「これはイケる!」と思いましたね。あと、アリエッティに「怖がらないで」と声を掛けるところもすごく良かった!

■アリエッティは陽、翔は陰、プラスとマイナスはくっつく!?

Q:アリエッティの声を担当した志田未来さんと神木さんは何度も共演されているので、今回もやりやすかったのでは?

神木:すごくやりやすかったです! 彼女も僕も、お互いに気を使わないんです。ダメなものはダメ、いいものはいいとハッキリ言い合えるので、久しぶりに会っても距離を感じなかったです。

鈴木:ちなみに、神木くんは相性の悪い人っているの?

神木:(ちょっと考えて)・・・・・・いますね。

鈴木:いるんだ。名前は言わなくていいよ(笑)。

神木:いや、誰か特定の人を思い浮かべたわけじゃなくて、世の中にはいろんなタイプの方がいるので、僕と合わない人もいるかなと思って・・・・・・。でも、志田未来さんとはすごく合いますね。

Q:鈴木さんから見ても、神木さんと志田さんの相性はバッチリだったのではないですか?

鈴木:良かったですねえ。少し自分勝手なところがあるけど元気なアリエッティと、病気がちで人生に希望が持てない翔は、陽と陰の設定なんだけど、二人はそれを見事に表現してくれました。それに、陽と陰というのはプラスとマイナスだから、やっぱりくっつくんだなあと思いましたね。映画の中での話だけど(笑)。

■二人が小人たちの暮らしから感じたメッセージとは?

Q:本作の麻呂さんこと米林監督は、ジブリ最年少の監督としても話題ですが、抜てきされたのは鈴木さんだったそうですね。

鈴木:僕が選んじゃったんだよね(笑)。宮崎(駿)がズルくてね、今回の監督を決めるとき、「誰にするの?」って僕に聞いてくるわけですよ。誰かの名前を言わないといけないから、「麻呂!」って答えたら、それでいこうということになって。でも、麻呂に監督をやってほしいと伝えたとき、本人はビックリしちゃってね。2週間くらい考えた後に、「他にやる方がいないのなら、今回は監督をやります。でも、終わったらまたアニメーターに戻してください」って言うんです。

Q:なんて欲のない方なんでしょう!

鈴木:そう、麻呂は欲がないんですよ。でも、その欲のなさが今回の企画に合っていたのかなという感じもします。

Q:「借りぐらし」という言葉にも欲のなさを感じます。「所有する」のではなく「借りる」という発想が新鮮でした。

鈴木:この作品の小人たちは、自分で何かを生産しているわけではないんです。それが、大量消費が終わりかけている今の時代を生きる僕たちに、どこか通じるものがあると思ったんですよね。

神木:僕は、自然の描写がたくさん出てくるこの作品を最初に観たとき、「小人たちも自然の一部なのでは?」と思ったんです。お手伝いのハルさんは、自分の欲望のままに小人をつかまえようとするから、小人たちに嫌がられてしまうじゃないですか。でも、翔のようにちゃんと向き合っていけば、相手も受け入れてくれる。だから、人間も自然をきちんと理解しようとすれば、自然もわかってくれるのかなと思いました。

鈴木:なるほど、それはいい見方だね。

どんな質問にも素直に答えてくれる神木と、その答えに絶妙なツッコミを入れる鈴木プロデューサー。二人の間に流れる親密な空気が、長年にわたってはぐくまれたきずなの深さを物語っていた。特に、鈴木は神木の才能に心底ほれ込んでいるようで、何度も称賛の言葉を繰り返していたのが印象的だった。ジブリを代表する名プロデューサーが「うまい!」と断言するだけあって、本作の神木の芝居は絶品の一言! 聡明(そうめい)で才能豊かな彼が、この先どんな俳優になっていくのか、期待せずにはいられない!

【神木隆之介】ヘアメイク:MIZUHO(vitamins)、スタイリスト:高橋毅(Decoration)

映画『借りぐらしのアリエッティ』は全国公開中

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