シネマトゥデイ

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ともさかりえ
『ちょんまげぷりん』
一人で子どもを育てていると、だんなさんより奥さんがほしくなる
『ちょんまげぷりん』ともさかりえ 単独インタビュー

取材・文:渡邉ひかる 写真:尾藤能暢

『ゴールデンスランバー』などで知られる中村義洋監督の最新作『ちょんまげぷりん』は、現代にタイムスリップした侍と、ある親子の交流を描くハートウォーミング・ストーリーだ。本作で、江戸時代の武士・木島安兵衛との出会いにひるみながらも、心を通わせていく女性・ひろ子を演じたともさかりえ。実生活でも幼い息子の母親である彼女が、女優として、シングルマザーとしての本音を交えながら率直に語ってくれた。

■お侍さんの格好をした錦戸亮に妙な威圧感あり!?

Q:ユニークなタイトルとストーリーの作品ですが、最初にどんな感想を持ちましたか?

最初に聞いたのは、「錦戸(亮)さんが主演で、『ちょんまげぷりん』というタイトルで、お侍さんが江戸時代からタイムスリップしてくる映画です」ということ。「何だ、そりゃ?」というのが本当に最初の正直な気持ちでしたね(笑)。でも、台本を読ませていただいて、わたしの役柄に関して言えば、すごく選択肢のある役で、いろんな演じようがあるなと思えたんです。役の方向性をどう定めるのが一番正しいのか、監督の考えを探りながら、自分なりにイメージアップする作業にやりがいを感じました。

Q:目の前に現れた安兵衛に対するひろ子のリアクションが面白いです。どんな演技プランだったのでしょう?

あざとくやろうと思えばできるような面白さが詰まったストーリー展開ですから、どの程度やればいいのかという迷いは自分の中にありました。でも、ひろ子が初めて安兵衛さんに会うシーンだったり、自宅の部屋で対峙(たいじ)するシーンだったり、そもそも基本的にあり得ない設定だし、一つ一つの状況もとにかくあり得ない。なので、その瞬間に感じた違和感を素直に表現すればいいのかなという考えに行き着きましたね。普段以上に役づくりらしいものは何もしていないかもしれません(笑)。

Q:錦戸さん演じる安兵衛がリアクションを引き出してくれたと?

普段の錦戸さんは年相応で物腰も柔らかく、素朴な方というイメージなんですが、お侍さんの格好をした錦戸さんには妙な威圧感があるんですよ。「何? この人!」って(笑)。「ノー」とは言えない眼力があるし、「こっちを見ないでください」という気持ちになる。だから、ひろ子は冷静に考える回路が安兵衛さんと目が合った瞬間に停止し、自宅に入れてあげたりもしたんだと思います。

■シングルマザーであるひろ子の問題がひとごととは思えない

Q:錦戸さんと共演された感想は?

今回初めてご一緒させていただいたんですが、本当に不思議な方だなという印象です。現場に入ってくるときもカメラの前に立っているときもすごくフラットで、境界線がよくわからないんですよ。そして、そのままの状態で撮影を終えて、来たときと同じように帰られていくという(笑)。わたし自身はどちらかと言うと自分を奮い立たせ過ぎてつまずくタイプなので、錦戸さんのフラットさをうらやましく思いました。わたしも錦戸さんみたいになりたいです。気負っている感じがなく、安兵衛という役に自然と入っていかれるんですよね。

Q:その安兵衛が居候となり、家事を引き受ける前のひろ子は子育てと仕事の両立に悪戦苦闘していますね。

わたしも5歳の息子がいるシングルマザーですので、人ごとに思えない感覚も何となくありましたね。女一人で子どもを育てながら仕事もしたいという、ある意味欲張りなところがひろ子にもわたしにもある。もちろん、自分で決めたことなので欲張りだとは思っていませんが、簡単ではないこと。背負っているという言い方は重くて嫌ですけど、大前提としての大変さはあります。子どもや仕事、さらには人生や生活に対してひろ子が抱える気持ちはわからなくもないですし、家事をしてくれる安兵衛さんは頼れる存在だったと思いますね。

Q:けれど、安兵衛がパティシエとして働き始める中盤以降、二人の間に現実的な問題が立ちはだかります。

そうなんですよね。ひろ子自身は前のだんなさんとの結婚生活に失敗しているわけですから、失敗を繰り返さないようにしつつ、そうできないふがいなさに落ち込んだりもする。ただ、一つ言えるのは、安兵衛さんもひろ子も似た者同士なのに意地っ張りだということですよね。「何で、もっと素直にならないかなあ」と。まさに男と女だと思いました(笑)。エネルギーを注げるものに打ち込む男性をサポートしたい女心がある一方、「わたしだって大変なんだけど!」と爆発したくなる気持ちもひろ子にはある。どちらの感情も理解できるものでしたね。

■どのシーンを撮っていても泣けてきてしまった撮影後半

Q:特異な物語の中、やはり核となるのはリアルな感情の揺れ動きなのですね。

実は台本を読んでイメージしていたときと、実際に撮影を積み重ねてきた中で感じた感覚は全然違うものだったんです。こんなにも人の気持ちの揺れ動きが詰まった映画なんだなって。撮影しながら気付かされるものもたくさんあって、監督やスタッフさんたちとも「こんなにいい話だったんだね」と話していました(笑)。撮影の後半なんて、どのシーンを撮っていても泣けてきてしまって。お芝居でコントロールできず、気付けば泣いちゃうような状態でした。そんなことは今までなかったので、自分でもびっくりしましたね。

Q:ひろ子の気持ちにリンクしたり、登場人物の感情に触れて涙が出てきたのですか?

そうなんですかね……。自分でも原因がよくわからないんです。作品の力もあるでしょうし、役者が何の雑念もなくカメラの前に立てる空間を作ってくれた監督のおかげでもあるのかなと思います。

Q:中村監督からは現場でどんな指示が?

基本的には「とにかく気持ちでやってね」ということだけでした。あとは、カットをかける瞬間の表情やちょっとした間で、どう思われているのかがわかりましたね。「ああ、今のわたしの演技は違ったな」とか。どの現場でもそうなんですが、わたしは監督の観察ばかりしているんです。監督に何を望まれて、それに応えるにはどうすればいいのかを常に考えているので。今回の現場では、おこがましい言い方ですが、中村監督がひろ子に望むものを共有できている実感はあった気がします。

■男性に必要なのは、男気!

Q:ところで、ともさかさん自身は安兵衛のように家事全般をこなせる男性をどう思われますか?

一人で子どもを育てていると、だんなさんより奥さんがほしい気持ちになったりもするから(笑)、「ああ、こんな人がいたらいいな」とは思っちゃいましたね。そうは言っても、安兵衛さんが理想かと言うと、それはそれで難しい問題ですねえ……。ただ、現代ではなかなか見かけない誠実さが安兵衛さんにはありますし、約束をきちんと守るなどのベーシックな男気が見える人はステキだなと思います。

Q:では最後に、ご覧になられる方にメッセージをお願いします!

イメージしにくい作品だと思うので、まずは観ていただきたいです。『ちょんまげぷりん』というタイトルの空気感からは程遠いものも詰まっていますし、人の心が本当に丁寧に描かれている誠実な映画です。錦戸さんのファンの方はもちろん、わたしと同じ働く女性や子どもを育てている女性にも観ていただきたいですね。世代や自分が置かれている状況によって、いろいろな見方のできる映画ですから。

驚くほど気さくなのだが、質問とじっくり向き合いながら丁寧に答える姿に、女優・ともさかりえの魅力が詰まっている気がしたインタビュー。そんな彼女がひろ子を演じ、相手役の錦戸亮共々ストーリーを紡ぎ上げたからこそ、「とにかくあり得ない」というファンタジーにヒューマンドラマとしての確かなリアリティーが備わっていたのだと思う。

スタイリスト:清水恵子(Image)

衣裳協力
トレンチコート、ワンピース、ソックス:KEITA MARUYAMA TOKYO PARIS(ケイタ マルヤマ トウキョウ パリス)
シューズ:ANTEPRIMA(アンテプリマ )

『ちょんまげぷりん』は公開中

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