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荻上直子監督、デヴィッド・レンドル、もたいまさこ
『トイレット』
愛情をかけられた思い出はとても大切
『トイレット』荻上直子監督、デヴィッド・レンドル、もたいまさこ 単独インタビュー

取材・文:平野敦子 写真:高野広美

映画『かもめ食堂』と『めがね』を大ヒットに導いた、荻上直子監督の3年ぶりとなる待望の最新作『トイレット』がついに完成。今回は北米東部を舞台に、母親が亡くなる前に日本から呼び寄せた英語を話せないばーちゃんと残された3兄妹のなんともユニークで心温まる家族の物語を紡ぎ出す。長年温めてきた企画を映画化した荻上監督と、ほとんどセリフのないばーちゃん役に挑んだ荻上作品常連のもたいまさこ、そして繊細な長男モーリーを好演したデヴィッド・レンドルが和気あいあいと取材に応じてくれた。

■日本のトイレは最高!

Q:この映画のタイトルにもなっている、温かい便座やお尻を洗浄してくれるなど、至れり尽くせりの日本のトイレについての感想を聞かせてください。

荻上:とっても清潔できれいで便座が温かくて、日本人の性質に合っていると思います。

もたい:日本のトイレの今のテクノロジーってすごいなぁ……と感心してしまいますね。先日テレビでドキュメンタリー番組を見ていたら、最近はトイレの節水に命を懸けてメーカー同士競い合っているらしいんですよ。この日本の優れた技術を世界に広めてあげたいと思いますよね。

荻上:今は輸入できるみたいですよ。マドンナとかハリウッドのセレブたちはこぞって日本のトイレをお買い求めになっているみたいだし。

デヴィッド:僕は来日して初めてホテルの部屋でウォシュレット機能付きのトイレを使ったんだけれど、こそばゆかった!(笑)。

■死ぬまで人生はわからない

Q:次男のレイは「人生は退屈の繰り返しに耐えること」だと思っていますが、皆さんにとって人生とはどのようなものですか?

もたい:この映画のようにきっと死ぬまでわからないんじゃないのかしらね……。きっとばーちゃんもあんな結末になるとは思わずに海外に行ったんだろうし。本当に人生は生きてみないとわからないですね。最期は笑って「さようなら」と言って死にたいですよね。

荻上:まだまだ人生はわからないですね……。ただ、わたしはとにかく動けなくなるまで現役で映画を撮り続けたいと思います。103 歳ぐらいまでとか(笑)?

デヴィッド:僕はアーティストとしてもっと自分自身に磨きをかけたいと思っているんだ。画家として、あるいは映画を通して、よりクリエイティブな仕事を続けていけたらいいと思っているよ。より大きなプロジェクトに挑戦して、もっともっとアーティストとして成長できたらうれしいかな。人生というのは毎日物事を違った視点で見ることだと思うから、自分にとってはアートがその一つの手助けになっていると思う。

■大切なのは映画という共通言語

Q:日本には「以心伝心」とか「あうんの呼吸」といった言葉があるのですが、今回映画の撮影中に海外クルーとの間でそのような気持ちを感じましたか?

もたい:日本語と英語で言葉は違うんだけれど、映画としてやっていることは日本と同じなので、役者にしてもスタッフにしても特別違う人たちと仕事をしているという違和感は全然なかったですね。きっとみんなの共通言語が映画なんですよ。

デヴィッド:僕ももたいさんにまったく同感!

荻上:『かもめ食堂』のフィンランドでの撮影もそうでしたが、今回もやはりカメラマンはカメラマンで、照明さんは照明さんなんですよね。世界中どこへ行っても映画の撮影現場というのは変わらないんだと思いました。

Q:劇中では餃子やすしなどを食べるシーンも多かったのですが、一番お気に入りの食べ物は?

もたい:どれもおいしかったんですが、やはりフードスタイリストの飯島奈美さんの作ってくれた餃子は絶品でしたね。

荻上:本当にみんなでおいしくいただきましたね!

Q:デヴィッドさんは何が一番お好きでしたか? 普段からよく和食を召し上がるんでしょうか?

デヴィッド:撮影中の食事はどれも本当においしかったよ! 僕は昨日日本に着いたばかりなんだけれど、日本で食べる和食はどれもたまらなくおいしくて。和食は普段から割とよく食べるんだけれど、僕の好物はうなぎで、うな丼が大好物なんだよね。

もたい:それじゃあ、ぜひともみんなでうな丼食べに行かなきゃね!

Q:うなぎは蛇みたいで嫌いだという外国人の方も多いようですが?

デヴィッド:バーベキューになっちゃっているから大丈夫、ちっとも怖くないよ(笑)。

■洋服はお母さんの手作り!

Q:この映画はみんなで餃子を包んだり、ミシンで縫い物をしたりと手作りのぬくもりのある作品だと思いますが、皆さんの手作りのこだわりは何かありますか?

もたい:最初にわたしが監督と知り合ったとき、監督はお母さんの手作りのお洋服を着ていらっしゃったんですよ。だから監督がこの映画を作ったというのがとてもよくわかります。足踏みミシンの思い出とか、デヴィッドが演じたモーリーがママに作ってもらったお洋服を思い出して、自分で新しい一歩を踏み出して行く場面も、本当に荻上監督らしいシーンだと思うんです。愛情をかけられた思い出ってやはりとても大切なんだなぁ……と思いますね。そういう人はちゃんと立ち直れるんですよ。自分も小さいころ母親に洋服を作ってもらったり、セーターや手袋を編んでもらったりした記憶があって、今でもそれがうれしかった温かい思い出として心に残っているんですよね。

荻上:足踏みミシンが家にあったのはよく覚えています。広い意味で物を作るというその体験が、わたし自身が映画を作りたいと思う原点になっているのかもしれません。

デヴィッド:母も僕と同じように画家で、僕は彼女が水彩画を描くのを見ながら育ったし、彼女から画家として学ぶところも多かったと思うんだ。水彩画というのは描くのにとても時間がかかるんだけれど、完成したものを彼女が壁に掛けたりしているのを今でも鮮明に覚えているしね。母の描く題材が家族の肖像画や、飼っていた動物だったりすることも多かったから、それらすべてが家族の記憶として大切に残っているんだ。

Q:映画のタイトルが『トイレット』ということなので、最後に皆さんにとってトイレとはどのような場所か教えてください。

荻上:うーん、用を足す以外に考えられない! 家族と住んでいた時は一人になれる場所だったけれど、今は家で一人で居ることが多いので、そこが自分にとって特別な場所という感じはなくなってしまいましたね。映画の中では彼らの住んでいる家が古いこともあって、トイレが生々しくならないようにとても清潔な場所として描こうと努力しました。

もたい:わたしも特にトイレという機能以外は思いつきませんね(笑)。

デヴィッド:いろいろと思い返したり、考え込むのにいい場所かな? 文章を書いたり、絵を描いたりしてスランプに陥ったときにぱっといいアイデアが浮かんだりする場所かもしれないね!

もたい:がんばっていい答えを考えたね。ナイス、デヴィッド(笑)!

監督ともたいは日本語、そしてデヴィッドは通訳を介しての英語でのインタビューという状況だったにもかかわらず、3人の息は ぴったり! これぞまさにあうんの呼吸!? 日本食の話題で盛り上がり、トイレとは一体何ぞや……と真剣に考え込む監督とデヴィッド に無言で温かいエールを送るもたいを見ていると、まさにこの映画の中の「ばーちゃん」そのものでうれしくなってくる。映画という共通言語を使って彼らが作り上げた温かい物語を通して、時には家族について、あるいは人生について思いを巡らせるのもいい。

映画『トイレット』は8月28日より全国公開

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