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こはたあつこのうわさの現場潜入ルポ
ウィル・スミスがほれこんだ! 社会に貢献するスタント・パイロットの巻

取材・写真・文:こはたあつこ(LA)

今回は、映画『ブロークン・アロー』『イレイザー』などで活躍したヘリコプターのスタント操縦士をご紹介。といっても、この男、ただ者じゃないんです! 映画の撮影の仕事以外に、子どものための飛行訓練学校を作り、ボランティアで運営。感動したウィル・スミスが彼を題材に映画を作ることに!?

ロビン・ペットグレーブという男

さっそくロサンゼルス近郊のコンプトン空港へ。ここはセスナやヘリコプターが並ぶ小型飛行機専用の飛行場。その一角にロビン・ペットグレーブの飛行訓練学校「トゥモローズ・エアロノティカル・ミュージアムTomorrow's Aeronautical Museum(ビデオ参照:http://www.tamuseum.org/)」の事務所があるんです。中に入ると小さな子どもたちが遊んでいて、アットホームな雰囲気。奥のオフィスでは資料の束で山積みにされたデスクがあり、そこにパイロットスーツ姿のロビンが。

「やあ、こんにちは!」

「スタント」操縦士というタイトルがぴったりのがっちりとした体形。実はロビン・ペットグレーブ(48歳)、スタント操縦の仕事と同時に、ヘリコプターの会社も立ち上げていて、その会社の成功し、30代で百万長者に! その後、会社を売り、1997年には犯罪が多い地域の子どもたちが放課後に通える飛行訓練学校を設立。しばらくして生徒のジミー・ヘイウッドくんが当時、世界最年少の11歳でアメリカからカナダの往復飛行に成功し世界新記録を樹立。ほかにもジョナサン・ストリックランドくんは当時14歳でヘリと小型飛行機の同日単独飛行に成功したり、ケリー・アニャディーケちゃん(当時15歳)が世界最年少の女性としてアメリカ横断に成功し、立て続けに世界記録を樹立。

事務所の壁には、10歳前後の生徒たちの活躍をたたえた記事や表彰状がずらり。また、ロビンが懇意にしていたマイケル・ジャクソンの直筆の感謝状も。

子ども飛行訓練学校を始めたきっかけ

学校を開いた理由は「金もうけよりも人の役に立ちたかったから」と説明するロビン。30代でビジネスに成功したとき、若手黒人実業家としてマスコミに注目され、地元の小学校でスピーチをする機会が増えたそう。

「学校の校庭にヘリで到着すると子どもたちは目を輝かせて喜んでくれる。でも、どんなに夢のある話をしても、結局あの子たちは恵まれない家庭に戻り、僕はランボルギーニで豪邸に帰るんだ。そんな生活に矛盾を感じた」と説明する。

ちょうどそのころ、第2次世界大戦で活躍した黒人飛行部隊のパイロットたちと知り合い、彼らが若い世代に操縦技術やチャレンジ精神を伝えたいと思っていたこともきっかけになったそう。

ロビン自身もジャマイカの犯罪が多い地域で子ども時代を過ごし、いわゆる不良といわれる子どもの気持ちが何となくわかるそうで、「そういう子たちは、負けず嫌いなんだ。だからあえて『ギャングなんて誰だってなれる。まじめに生きる方がずっと難しいんだ』と言うとよく聞いてくれる」と話す。放課後、この飛行学校に通っていたため、犯罪に手を染めずに命拾いをした生徒も多いそう。また、この学校で勉強の仕方を覚え、成績が上がった子も。

気になる授業料は、生徒が掃除やペンキ塗りなどの地域のボランティア活動をすれば、それに費やした時間が授業料になるため、家が貧しくてもまったく大丈夫。学校の運営資金はボーイング社や市などからの寄付金と、ロビンの映画の仕事の収入でまかなわれている。

ロビンのヘリでスタント遊覧飛行!!

いよいよロビンのスタント操縦士としての腕前を体験することに。ヘリのドアを閉め、マイク付きヘッドフォンを装着。最後にシートベルトを締める。飛行機の場合と違い、滑走路の助走の必要がないため、とたんにヘリが上昇し、あっという間に家々がマッチ箱サイズに!

「うわー! すごい、すごい!」

隣でロビンは鼻歌を歌いながら、わたしの驚きようを楽しんでいる。
気が付くとすでにL.A.のダウンタウンの上空を、高層ビルすれすれに飛んでいる。こんなにビルの屋上に近づいたのは初めてなので、ひたすら感動。すると今度はビルの谷間で、何と45度傾く!「きゃーーーー!」

これじゃ、まるでローラーコースターだ! いやーん、もういいです!

さすがの腕前。撮影の仕事では、橋の下すれすれでヘリを飛ばしたり、高層ビルの上でヘリをくるくる回しながら、スタントマンをビルの屋上に飛び下ろさせたこともあるとか。また、ミュージック・ビデオの撮影時、「狭過ぎて、絶対に着陸不可能」といわれたドクター・ドレーの裏庭に、周りの木がプロペラにくっつきそうな状態で着陸させたこともあるそう。

「不可能と聞くとやりたくなるんです。僕も負けず嫌いなんですね(笑)。でも、大丈夫。どんなときも、安全第一に運転しています」

ロビンの夢

そんなロビンの夢は「アメリカ中に子どもたちの飛行訓練学校を作ること」。

「小さいころから飛行訓練を受けていると、大人になったら僕らには考えられないような発想で、航空宇宙技術を発展させることができると思います。そんな新世代を大勢生み出していきたい」とエネルギッシュに語る。すごいなー、並外れた夢に向かって行動する男。

そんなロビンの活躍に映画界が目を付けないはずがありません。現在、ウィル・スミスの事務所の人たちがロビンと脚本の話をしているんだとか!

「今一番楽しいんじゃないですか?」と聞いてみたら、意外な答えが。
「いや、むしろ、フラストレーションの塊です。夢に全然追い付いていない。資金も足りないし。もっと頑張らないと……」

うーむ、ずっと先を見ているんですね。いやあ、ロビン・ペットグレーブ。やっぱりただ者じゃない……。大いに刺激を受けた取材となりました。

~あとがき~

ロスの観光飛行 (http://www.celebheli.com/tours/) も行っているロビンの会社Celebrity Helicopters (http://www.celebheli.com/) はセレブの家や、ハリウッドサインの上も飛んでくれるそうです。収入の多くは学校の資金に当てられるそうなので、L.A.観光にいかが?夜は治安の関係上コンプトンに直接行かずにホテルまで送迎してもらってくださいね。また、成人向けの飛行学校もあり日本人の卒業生もいるそう。70ドルの体験レッスンもあるので、度胸のある方はいかが?(日本語の翻訳は卒業生が行っているそうです)

コンプトンの空港。小型飛行機が並ぶ小さな空港。
生徒の記事や表彰状でびっしりの壁と手紙や資料の山で埋もれた机!
クリントン元大統領から世界記録を出した学生に送られた、お祝いの手紙。直筆サイン入り。
マイケル・ジャクソンからの直筆カードも!
フライトシュミレーターで着陸の練習をする生徒。
学校を案内してくれたキーランくん。飛行学校のおかげで普通の学校でも成績優秀。将来は空軍パイロットになりたいそう。
フライトのすごさに興奮気味のわたし。
ダウンタウンの上空。飛行機と違い、高層ビルのかなり近くを飛ぶ。
ヘリでの足元。周りはほとんど透明な窓なので、まるで壁がないみたい!
鼻歌を歌いながらジョークを飛ばすロビン。
イエイ!
第2次世界大戦で活躍した黒人飛行部隊。当時黒人には飛行機の操縦は無理だといわれていた時代に大変な活躍をした。黒人のヒーロー的存在。
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