シネマトゥデイ

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INTERVIEW@big apple

今回は、オスカー戦線にかかわってくると思われるダーレン・アロノフスキー監督の『ブラック・スワン』ニコール・キッドマン主演の『ラビット・ホール / Rabbit Hole』(原題)、そしてハビエル・バルデム主演の『ビューティフル / Biutiful』(原題)、3本の話題作を紹介。

11月18日映画評論家の司会者によってQ&Aが大いに盛り上がる!(アップル・ストアにて)

映画『ブラック・スワン』

ニューヨーク・シティ・バレエ団を舞台に、ベテランのバレリーナ(ナタリー・ポートマン)とライバル(ミラ・クニス)との熾烈(しれつ)な主役争いが繰り広げられるほか、バレリーナの野望、ドラッグ摂取、自傷行為、レズビアン・セックスなど過激な題材を描いた作品。現在、アカデミー賞主演女優賞ノミネートが確実視されているナタリー・ポートマンの演技に注目。

ダーレン・アロノフスキー

ナタリー・ポートマン主演の新作に関する質問を受けるダーレン・アロノフスキー監督/傑作か駄作か? 批評の分かれる、あの問題作についても言及

同作は、ハリウッドで名実共に評価の高いナタリー・ポートマンの主演作で、かつ監督がダーレン・アロノフスキーということで、かなり前から取材を楽しみにしていた。ところが、同作はすでにトロント国際映画祭で大きな記者会見を行っており、ニューヨークでのインタビューはダーレン監督が、ニューヨーク・タイムズなどの大きなアメリカのメディアだけを対象に行ったそうだ。そこで取材できなかった僕は、この映画に関するイベントをインターネットや友人の情報網を使ってリサーチし、アップル・ストアでイベントが開催され、ダーレン監督が登壇するという情報を何とかキャッチしたのだ。ちなみに、このアップル・ストアのイベントは、席が約50~60ほど用意されているが、いつも最前列だけはプレス用となっている。そのため、僕は事前にアップル・ストアのパブリシストと連絡をとり、席を確保してもらっていた。当日は、イベントが始まる30分前に会場に駆け付けたが、すでにプレス以外の席は埋め尽くされ、立ち見をしている観客も多数。そしてQ&Aが開始! 

司会は、ローリング・ストーン誌などで執筆しているアメリカを代表する映画評論家、ピーター・トラヴァース。彼はまずダーレン監督に対し、「なぜバレエの世界を扱った映画を撮ったの?」というフランクな質問から入り、バレリーナにふんしたナタリーが肉体の限界に挑んでいることについて、「どのくらい長い時間ナタリーを拷問にかけていたの?」と場内を沸かせながら尋ねていた。その中で特に印象に残ったのが、ナタリーにとって精神的なダメージが大きい作品であったため、ダーレン監督はナタリーのために精神科医を招いてサポートしたということ。また、ラブストーリー『ファウンテン 永遠につづく愛』は彼の作品の中で最も批評が分かれるが、同時に最もマニアックなファンの多い作品でもあると語っていた。今回のQ&Aは、司会者ピーター・トラヴァースのウイットに富んだトークのおかげで、楽しいイベント取材になった。

12月2日ニコール・キッドマンは一流のスターだけどKY?(トランプ・ソーホー・ホテルにて)

映画『ラビット・ホール / Rabbit Hole』(原題)

少年が起こした自動車事故によって幼い息子を失った夫婦ベッカ(ニコール・キッドマン)とハウィー(アーロン・エッカート)は、事故から8か月たっても、悲しみの中をさまよっていた。だが、二人は生きるために、徐々に家族関係を模索しながら道を切り開いていく。監督は、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のジョン・キャメロン・ミッチェル。

ニコール・キッドマン、アーロン・エッカート、ジョン・キャメロン・ミッチェル、サンドラ・オー、マイルズ・テラー、デヴィッド・リンゼイ=アベアー

ニコール・キッドマン(中)のKYぶりに、アーロン・エッカート(左)&ジョン・キャメロン・ミッチェル監督(右)もタジタジ!?/左からデヴィッド・リンゼイ=アベアー、サンドラ・オー、アーロン・エッカート、ニコール・キッドマン、ジョン・キャメロン・ミッチェル、マイルズ・テラー

映画『ラビット・ホール / Rabbit Hole』の会見取材で、ニコール・キッドマンと、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』ジョン・キャメロン・ミッチェル監督が登壇。実は3年前に、ニューヨーク映画祭に出展された『マーゴット・ウェディング』でニコールを取材した際に、彼女の顔があまりに膨れ上がっていて、別人に見えた記憶があった。そのときは、ボトックス(しわを改善したり、目を大きく見せたりする治療)の注射でも打ったのではないかと、記者たちの間でちょっとした騒ぎになっていた。個人的な見解では、当時彼女が妊娠していたせいだと思う。それから3年を経た記者会見の当日、少し遅れ気味で始まった記者会見に登場したニコールは、元のシャープな顔の美人女優に! そして記者会見がスタート。ちなみにこの記者会見にはラジオの記者も参加していて、俳優たちの前には多くのマイクが置かれていた。そのため、後ろの席に座っていた音響の人たちが音の調整をうまくできていなかったのか、少し雑音が入ってしまった。雑音はすぐにやんだが、ニコールはしきりに「一体これは何の音なの?」と気にしていた。

質問はほぼニコールに集中し、時々アーロン・エッカートとジョン監督が答えていたが、残りの参加者には全く質問が回らなかった。こういうときは、質問を一番多く受ける人(今回はニコール)が、「あなたはどうだった?」と、ほかの俳優に質問を譲ったりしてバランスをとるものだが、そういう機転が利かないニコールに業を煮やしたのか、彼女が返答を終えた瞬間、サンドラ・オーが自ら「わたしも意見があるから答えさせて」と言って、ようやく流れが変わった。質問をニコールに集中させてしまった記者たちにも問題はあるが、取材対象が自ら質問を促すのは前代未聞の事態。そして、ついに僕の順番が回ってきた! ところが、ニコールは僕の質問がわかりにくかったのか、質問の意味をアーロンに尋ねていた。しかも、その返答は、僕の意図とはまったく違った、とんちんかんな内容だったのだが、時間も限られているのでもう一度聞き返すわけにもいかず、結局そのままになってしまった……。

ニコール以外の返答では、ジョン監督が、この映画で亡くなった息子と同じ年齢の兄弟を亡くしたことがあったのだと教えてくれた。さらにマイルズ・テラーは、最初に撮ったシーンが、アーロンが演じるキャラクターに怒鳴られるシーンで、本気でビビって萎縮(いしゅく)してしまったと答えていたのがほほ笑ましかった。この会見で一番印象に残ったのは、やはりニコールで、彼女はハリウッドを代表する実力派で、最も稼いでいる女優の一人だが、親しみの持てるイメージはまったくわかなかった。

12月3日ハビエルの取材ではペネロペとの結婚話は一切NG!(パレス・ホテルにて)

映画『ビューティフル / Biutiful』(原題)

バルセロナの闇社会で不法滞在者を相手にあっせん業をしていた男(ハビエル・バルデム)が、医者から突如、余命数か月だと言い渡される。『バベル』で高い評価を得たアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が、バルセロナの喧騒(けんそう)の中で、死の宣告を受けた男が二人の子どものために自分の生きた証を示していく姿を、現代が抱える問題を交錯させながら詩情豊かにつづる。

ハビエル・バルデム、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

公私共に絶好調のハビエル・バルデム/F-Word連発(!?)のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督

この取材の前日に、「ハビエル・バルデムの私生活についての質問はしないでくれ、もし質問をした場合は、取材部屋から退出してもらうことになる!」というE-mailが送られてきた。要するに、この間ハビエルが結婚したばかりの女優ペネロペ・クルスに関しての質問はしちゃいけないというわけだ。ゴシップ系の記者なら、この知らせに憤りを覚えるかもしれないが、逆に僕はくだらない質問が減って自分には好都合な取材になると思ってうれしかった。取材当日は2部屋に分かれ、それぞれの部屋に10人ぐらいの記者が参加することになった。

まずは、ハビエル・バルデムから。以前、『ノーカントリー』で彼に取材した際は、少し英語の発音が聞き取りにくかったのだが今回はかなり上達していてボキャブラリーも増えており、わずか3年ほどで英語をマスターしてしまうところも仕事熱心なハビエルらしいと感心した。ちなみに彼は、映画のリサーチのために、不法滞在者が多く住むパルセロナの居住区を訪れ、いろんな人々から話を聞いたらしい。撮影期間は5か月で、精神的にかなりキツい撮影だったそうだ。最後にハビエルは、「アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督との仕事は、自分の人生の一部分に値するほど意味のあるもの」としている。そして結局、ハビエルの私生活に関しては遠回しに聞く記者もいないまま取材が終わった。

次に、アレハンドロ監督が「オラ!」(こんにちは)とスペイン語で元気よくあいさつをしながら登場。まず彼は、「毎回、じっくり時間をかけて映画を制作していますよね?」という質問に、「3~4年の周期で監督するのがベストのペースだ」と答えていた。脚本は、ハビエルに出演を依頼することを念頭に置いて執筆していたようで、アレハンドロ監督の父親もこの映画の主人公のように、がんを患ったことがあるそうだ。彼が発した言葉の中で特に印象に残ったのが、「脚本のセリフは少なければ少ないほど良い」ということだった。映画にはあらゆる伝達手段があるのだから、セリフにすべてを委ねる必要はないということらしい。この概念は彼の作品に非常に生かされているように思うし、彼が映画制作に長い時間をかけている理由も理解できた気がする。余談だが、彼は別に怒っているわけではないのだが、言葉を強調する度にF-Word(Fuck)を使うことが多かった(笑)。

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