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渡辺謙
『インセプション』
僕は目の前の作品に集中して、取り組んできただけ
『インセプション』渡辺謙 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:吉岡希鼓斗

緻密(ちみつ)なストーリー展開と華麗な映像美で、世界を圧倒したクリストファー・ノーラン監督作映画『インセプション』がブルーレイ&DVDで登場。眠っている間に潜在意識に侵入し、他人のアイデアを盗み出すスペシャリストのコブ(レオナルド・ディカプリオ)。彼に、人生を取り戻すことと引き換えに「インセプション」=“潜在意識にアイデアを植え付ける”というプロジェクトを持ちかけるサイトー役を熱演したのは、ハリウッドに愛される日本人俳優・渡辺謙。そんな彼が、作品に隠された多くの謎を改めて語った。

■何回「ワオッ!」という言葉を聞いたことか!

Q:本作の映像世界は、脚本だけでは想像しきれないですよね!

実際に僕らが演じたことが、こういうふうにつながるのかってことや、こんなシーンになるのかってことを想像できなかったですね。たぶん、何の知識もなくこの映画を観た方より、僕ら役者の方が10倍くらい驚いたと思います。

Q:ディカプリオさんをはじめ、ほかのキャストたちも驚いていたんですね!

驚いていましたね(笑)。皆で試写を観ているとき、何回「ワオッ!」という言葉を聞いたことか! あちこちから「ワオ!」「ワオッ!」と声が上がっていたのをよく覚えています。

Q:スタッフの方々も熱が入っていたんでしょうね。渡辺さんが本作でハリウッドならではのこだわりを感じた部分はありますか?

小さいことなんだけど、無重力状態のシーン撮影で、僕らは浮くことができるにしても、洋服までは無重力にできないでしょ? 特にズボンの先って、どうしてもちょっと下に引っ張られる。それを落ちないように、針金でズボンのすそを浮かせて、靴ひもにも針金を入れたんです。最初は真意がわからなかったのですが、浮いた状態のときに納得しました。本当に細かいところなんだけど、「好きだよね~、君たち!」って感じですよね。

Q:針金を入れるというのは、ノーラン監督からの指示なんですか?

いえ、ワードローブの方々が楽しんだのでしょうね。もちろん、ノーラン監督に許可は得るんですけど、スタッフたちは結構好き放題やっていたように思います。

■撮影がハードで、打ち上げを楽しむ余裕もなかった。

Q:東京からスタートし、ロサンゼルス、ロンドン、パリとさまざまな場所でロケを敢行した本作ですが、ここまでロケする映画はハリウッドでも珍しいですよね?

撮り方がすごくうまいんですよ! モロッコで撮影した中のワンシーンは、ロンドンで撮影しているんです。ロケハンもセットデザインも、すべてが素晴らしいですよね。

Q:ロケ地を回ってみて、印象的だったことはありますか?

ロケ地ごとに、現地のスタッフがいるんです。ロンドンクルー、モロッコクルー、ロスクルーというように。ずっと一緒に回るメインクルーは、上から20パーセントくらいのスタッフなので、例えばロケ先で、ワードローブの3番手くらいからは、「またね~」ってその場でお別れになるんですよね。

Q:では、ロケ先ごとに打ち上げですね!

うん。でも撮影がハードで、撮り終わったころにはヘロヘロにバテて、打ち上げを楽しむ余裕もなかったです(笑)。

■皆セットに入ると、鼻の穴が膨らむ!

Q:ノーラン監督は、どのくらいのペースで撮影を進めるのですか?

結構撮りましたね(笑)。朝8時過ぎに入って、9時にはもう撮影開始。そこから夕方まで、きっちり回しますからね。フィルムを次から次へと変えて、ずっと回していたことはとても印象的でした。

Q:ワンシーンで、何テイクくらい撮るんですか?

通常は、3テイクから5テイクくらいでした。それから、意外だと思うんですけど、この映画のカメラマンはハンディーカムが好きだったんですよ。安定したステディーカムじゃなく。詳しいデータはわからないですけど、僕の感覚は6割くらいハンディーで撮影していたと思います。

Q:演出は、細かい指示があったのでしょうか?

ノーラン監督は、そんなに細かい指示は出さないですね。でも、ややこしいシーンでは、ちょっとだけヒントを与えてくれる。彼はあまり、キャストに対してシーンの説明をする方じゃないんです。だから、この映画の世界を全部理解した上で演じることが正解かって考えるとそうじゃないんですよね。つまらないことを入れようとすると、フェイクにもならないし、トラップがきかなくなりますからね。

Q:役者としても演じがいがありますね!

そうですね。レオも、セットに入る前から、みんなを集めてセリフ合わせをして、どんどんビートを作っていくんです。もうセリフ合わせの域を超えていましたね。だから、皆セットに入ったときには、気合が入って鼻の穴が膨らんじゃっていることがよくありました。

■目の前の作品に集中して取り組んできた。

Q:虚無の世界に落ちたサイトーが老人になった姿は、かなり衝撃的でした!

コブとサイトーが、虚無に落ちた時間のタイムラグってとても短いはずなんですけど、ほんのちょっとのズレでも、大きな差になってしまった……のかなあと理解しています。

Q:これだけの大作に、日本人の俳優が出演していることは、すごくうれしいことでした。

僕は常に、目の前の作品に集中して取り組んできたんです。ただ、それだけなんです。積み重なって、7~8年、もう10年になるのですが、あまり先は考えないようにしています。これまで日本で俳優としてやってきた経験が、すべて役に立ったかといえば、そうでもない。自分にわからないことを恐れないようにはしています。それとは逆に自分で大事にしているものは、守り通す。そのバランスは崩したくないですね。

Q:最後に、ソフトがリリースされる『インセプション』の新たな楽しみ方を教えてください!

ハンス・ジマーの音楽にも、ぜひ注目してもらいたいですね。マリオン(・コティヤール)が演じて、アカデミー賞を取ったエディット・ピアフの歌も話題になりましたが、本当は劇中で流れているハンスの音楽にも、トリックが仕掛けられているんです。映像を観ながら注意深く音楽を聞くと、あるところで不協和音の旋律に変わることがわかるはずです。僕はプレミアで生演奏を聴けたのですが、本当に美しい音楽で感動しました。ブルーレイやDVDで観るなら、ぜひ音楽も一緒に楽しんでもらいたいですね。

どのスタッフに対しても気さくな笑顔で対応する渡辺は、まさに紳士。ハリウッドで活躍していても、本作のような豪華な作品に出演しても、おごり高ぶることは一切ないところが、渡辺が世界に愛される理由の一つだろう。ディカプリオが「謙は、日本の宝だよ!」と絶賛したが、俳優としてだけではなく渡辺の人格そのものに対しての称賛に違いない。そんな渡辺が、ハリウッドの「こだわる」スタッフたちと作り上げた『インセプション』。今度は家で、一つ一つのディテールに注目して楽しんでもらいたい!

【衣装】Ermenegildo Zegna(ルメネジルド ゼニア)/ゼニア ジャパン(株)

『インセプション』ブルーレイ&DVDは12月7日ワーナー・ホーム・ビデオより発売

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