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松本幸四郎、松たか子
『ライフ −いのちをつなぐ物語−』
まるでキセキを体験できたような気がしています
『ライフ −いのちをつなぐ物語−』松本幸四郎、松たか子 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:尾藤能暢

映画『アース』『ディープ・ブルー』を手掛けたBBCの最新作『ライフ −いのちをつなぐ物語−』。製作期間6年、総製作費35億をかけて撮影された本作は、陸・海・空、あらゆる生物たちの「いのち」の営みを、最新のカメラ技術によって生物と同じ視点からとらえたネイチャードキュメンタリーだ。日本版ナレーターを務めた松本幸四郎と松たか子が、作品にまつわるエピソードや、お互いの素顔についてなど、実の親子ならではのほのぼのトークを繰り広げた。

■ナレーターとして生物の心の声を代弁

Q:「命をつなぐ」という作品のテーマにピッタリな親子共演ですが、お二人にとっても特別な作品になったのではないですか?

松本幸四郎(以下、幸四郎):お互い俳優として、仕事の上で親子ということを意識することはほとんどないのですが、今回はテーマがテーマですし、しかも、何かの役を演じるわけではなかったので、逆に親子でやっているということを生まれて初めて意識しました。この映画には人間が一人も出てこないんですが、生物たちが愛し合い、子を産み育て、生きるために戦い、学習する。発せられる言葉は一言もないのだけれど、人間にいろんなメッセージを送ってくれている言葉がたくさん聞こえてくるような気がしました。「人間って、そういう生き方でいいんですか?」ってね。その、言葉を持たない動物たちの心の声を、僕とたか子がナレーターとして、やらせてもらったような感じでしたね。

松たか子(以下、松):わたしはとにかく、言葉をしっかり伝えることを考えていました。父のナレーションパートを先に入れたので、そのパートからうまくナレーションをつないでいくのが難しくて……。親子だからこそ、その場に一緒にいなくても息が合っていたいし、俳優同士としてバトンをきちんと受け取っていきたい。純粋に仕事としてリレーがつながって、そこに親子として何かが生まれたら、わたしたちにとっても貴重な体験になるのではないかと思っていました。

幸四郎:今回のように、生物たちの魂の受け渡しを描いた作品を親子でできるという機会は、もうそうないと思います。まるでキセキを体験できたような不思議な気がしています。

Q:松本さんは松さんに対して、「娘ではなくライバルだと思っている」とおっしゃっていましたね。

幸四郎:親子であろうと兄弟であろうと、僕たちの仕事は最終的にはお客様の評価で決まるものですから、そういった気持ちでやるというのは当然のことだと思います。

松:完成版を観たとき、父の表現力と比べると、わたしの声はその縮小版のように感じてしまいました。自分なりに一生懸命がんばったんですけどね(笑)。

■神様が味方をした驚異の映像!

Q:作品の中で、印象に残っているエピソードはありますか?

幸四郎:僕は、ネズミがトカゲに追いかけられて逃げるところですね。どうやって撮ったのか、本当に信じられない映像でした。この映画をわれわれに見せるために、神様が味方をしたんじゃないですかね。

松:わたしは、がけを上っていたコイシガエルがクモと出会ってしまい、体を硬直させて転げ落ちるところでしょうか。落ちる瞬間を何回か撮っていたんでしょうけど、その撮っている人たちの姿を見てみたくなりました(笑)。着地する瞬間って、簡単に何度も撮れるわけじゃないでしょうし、それを、あの小さいカエルやクモの視線で追い続けることの根気強さに感服しちゃいました。

幸四郎:あと、ゴリラとライオンの父親が出てくるシーンがあるんですけど、その2匹の後ろ姿が実にしみじみ寂しげでね。やっぱり、どの動物も父親の背中は寂しいものだなと感じました(笑)。

Q:ご自身と重ねてしまうところがあったのでしょうか?

幸四郎:ええ、いつの世も、父親っていうのは本当に寂しいもんです(笑)。

松:わたしは、背中の寂しさはよくわかりませんけど……。

幸四郎:ほら、なんて冷たい(笑)。

松:いやいや(苦笑)、いろんな見方の参考になります。父親目線だったり、「えー、何言ってんの!」っていうわたしのようなお調子者の娘だったりとか(笑)、やいのやいの言いながら観られる映画だと思います。家族それぞれの立場によって共感ポイントが違うかもしれないので、それを話し合ってもらうのもいいですよね。

■娘は小リス、父はライオン……それぞれの思い

Q:お二人は、プライベートでもこういった作品のお話をされるのですか?

幸四郎:いえ、ほとんどしません。相づちとか、否定肯定の合図とか、そんな程度です。

松:そうですね。家でも外でも同じようにしゃべっていたら疲れちゃいますし(笑)。仕事の相談をすることもほとんどないです。

幸四郎:僕よりも母親と話すほうが多いんじゃないかな。僕なんて粗大ゴミですよ(笑)。

松:そんな(笑)。でも、一つの仕事をやっていく上で、よっぽどのことがないと父に話すことはないです。ヘタでもなんでもまずは自分でやってみて、結果を判断してもらう感じですね。母には、そこに行き着くまでのウジウジした気持ちを聞いてもらうこともありますけど、父に対しては何とか形になるまで頑張って、それを観てほしいという気持ちが強いです。

Q:松本さんは陰ながら見守っている感じですね。

幸四郎:まあ、俳優として言うべきことや教えることは伝えているつもりですけど、あとは本人の才能や努力でやっていくしかないですから。娘としてのたか子が、ある日突然人妻になって、「なんてすばしっこい、まるでチーターかピューマのようだ!」と思ったこともあったけど、やっぱりいくつになっても小リスですな。娘っていうのはいつまでたってもかわいい小動物ですよ(笑)。

Q:松さんから見ると、お父様はライオンのような存在なのでしょうか?

松:ああ、そうかもしれません。家庭内での父というよりは、俳優としての父に理想を求めたというか。それが良いか悪いかは別として、仕事をしている姿が父だという意識が強かったです。でも兄夫婦に子どもが生まれて、孫を見つめる父は初めて見るような表情をしたり、歳月の重みを感じます。これからも、父の人間的なところを発見し続けていくのかもしれませんね。

■人間も地球上の生物の一つだと実感!

Q:最後に、お二人がこの作品から得たものを教えてください。

松:初めて知る動物の生態がたくさん出てきて、とても勉強になる作品です。わたしたち人間も、地球上の生物の中の一つなのだと感じました。あちらから見れば、人間だって摩訶(まか)不思議な生態を持つ生物なんじゃないかなと思います。

幸四郎:僕は、大震災が起こってしまった今、俳優である自分がこういう仕事ができるということを本当に感謝しないといけないと思いました。人を傷つけたり誹謗(ひぼう)中傷することは誰にでもできる。でも、人を感動させたり、勇気や希望を与えることはなかなかできません。そのなかなかできないことを仕事にしているのが俳優です。そのことを改めて思い知らされました。願わくは、この作品が公開されるころには、被災された方々の状況が今より少しでも良くなっていてほしいですね。災害に遭われた方が、映画でも観てみようかなという気持ちになっていてくれればいいと祈るばかりです。

威風堂々たる大俳優、そして愛情あふれる父親という二つの顔を見せた幸四郎。そんな幸四郎を、やや照れながらも優しく見つめる松。親子のきずなに、ほっこりとさせられたインタビューだった。「この映画を観ると、本当の生きるためのエネルギーは、一人一人の人間の中にあるような気がしてくる」と熱く語った幸四郎の言葉通り、過酷な自然の中で力強く生きる生物たちの姿は、大事なものに気付かせてくれる。どんなに巧妙なフィクションよりもドラマチックな「いのち」の物語を、ぜひとも大スクリーンで堪能してもらいたい。

(C) BBC EARTH PRODUCTIONS (LIFE) LIMITED MMXL ALL RIGHS RESERVED.

映画『ライフ −いのちをつなぐ物語−』は9月1日より全国公開

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