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今週のクローズアップ スタジオジブリだけじゃない!これからのジャパニメーションを占う作品に注目!

 昨年の映画『借りぐらしのアリエッティ』に続き、今年も新作『コクリコ坂から』が公開されたスタジオジブリ。世界に通用する日本の長編アニメーションというと、どうしても『千と千尋の神隠し』でオスカーを獲得したこともあるスタジオジブリが筆頭に挙がりますが、もちろん、それだけではありません。とりわけ今年は、長編アニメーションの豊作年といってもいいほど良作が盛りだくさん。次代のジャパニメーションを占う作品に注目してみましょう!
ポスト宮崎駿世代の筆頭!新海誠監督の新作『星を追う子ども』

 今年のゴールデン・ウイークは、大友克洋が一部のコンセプトデザインを務めた映画『鬼神伝』京極夏彦の小説を3Dアニメーション化した映画『豆富小僧』と国産アニメーションの佳作が続々と公開されましたが、その中でアニメファンに最も注目されていたと言っても過言ではないのが、新海誠監督の新作『星を追う子ども』。映画『ほしのこえ』で思春期の揺れる心を美しい映像と音楽で表現して一躍名をはせた新海監督が、2004年公開の『雲のむこう、約束の場所』以来、実に7年ぶりに世に送り出した長編アニメーションです。

 孤独な少女と国語教師が失ったものを取り戻そうと地下世界を旅するというストーリーは目新しいものではありませんが、綿密な背景の描き込みや絶妙な選曲のセンスなどで「らしさ」を出した作品といえるでしょう。地下世界「アガルタ」の描写が時に恐ろしささえ感じさせるのは、そこを旅する人々の孤独=心象風景が反映されているからだといえます。SF要素はあくまで副次的なものであり、人々の心の揺らぎがストーリーの中心となっているのはこれまでの作品と同じ。そのため、冒険活劇を期待していた人は物足りなさを感じたかもしれませんが、その一方で、思春期に差し掛かった少女と思春期をとうの昔に終えた男を主人公に据えるなどの新境地も開拓しており、次作が待ち遠しいアニメーション作家であることには変わりありません!

 

この背景の素晴らしさが新海作品の特徴!
© Makoto Shinkai / CMMMY


本作の主人公はこの二人。果たしてどんな冒険が……?
© Makoto Shinkai / CMMMY

遺作であることが惜しまれる!飯田馬之介監督&BONESによる『トワノクオン』

 映画『パプリカ』『東京ゴッドファーザーズ』など海外でも評価の高かった今敏監督が亡くなった昨年に、こちらもまだ40代の若さで亡くなったのが飯田馬之介監督。かつては映画『風の谷のナウシカ』で動画を、『天空の城ラピュタ』では演出助手(飯田つとむ名義)を務めたこともある人物で、その飯田監督がアニメーション制作会社BONESと共に生前企画していたのが、今年6月より劇場公開されている『トワノクオン』です。

 その上映形式もあって、純粋な意味での長編アニメーション作品とはいえないかもしれませんが、近未来を舞台に“ベスティア”と呼ばれる特殊能力に目覚めた少年少女たちをめぐって繰り広げられるストーリーはのめり込むこと間違いなし! 『第一章 泡沫の花弁』で息をつく間もないようなアクションシーンが連続したかと思えば、『第二章 混沌の蘭舞』では連続殺人事件を軸にしたドラマがじっくり展開するといった緩急の付け方も絶妙で、1か月に1作しか観られないのが口惜しいほど。能力を持った少年少女たちとサイボーグ部隊との戦いは佳境に差し掛かっており、後は11月5日公開の「第五章 双絶の来復」と同月26日公開の「第六章 永久(とわ)の久遠(くおん)」を残すのみ。これまでに張られた伏線がどのように回収されるのかとドキドキの反面、これでもう飯田監督の新作を観ることができないのだという一抹の寂しさも感じずにはいられません。

 本作のように、一定の期間を置いて新作エピソードを劇場で連続公開するという試みは、現在『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』『マルドゥック・スクランブル』でも行われており、今後も同様の手法が増えることは間違いなさそうです。話数があるために長大なストーリーを語ることができる一方で、制作期間や予算が限られているテレビアニメと、比較的予算などに恵まれているものの約2時間という上映時間の制約がある劇場アニメーション。その両方のいいところを生かしたこういった上映形態は、今後の日本アニメーション界で一般的になるかもしれません。

 

『トワノクオン 第二章 混沌の蘭舞』より
© BONES / トワノクオン製作委員会

『トワノクオン 第三章 夢幻の連座』より
© BONES / トワノクオン製作委員会

今日本で最もアカデミー賞に近い!?マッドハウスが贈る『とある飛空士への追憶』は、ファンタジー版『ローマの休日』!

 惜しくも選からは漏れたものの、第83回アカデミー賞の長編アニメ賞にノミネートされるかと盛り上がった『サマーウォーズ』。細田守監督による同作はアニメ界のアカデミー賞と呼ばれるアニー賞にノミネートされたほか、アカデミー賞長編アニメ賞の選考対象作品に選ばれるなど海外でも高い評価を獲得し、すでに世界的評価を確立したスタジオジブリを除けば、マッドハウスを日本のアニメーション制作会社の中で最もアカデミー賞に近い存在にまで押し上げた作品といえるでしょう。

 そのマッドハウスがこの秋に公開する最新作が『とある飛空士への追憶』です。犬村小六の長編小説を原作に、『時をかける少女』『サマーウォーズ』の脚本家・奥寺佐渡子が執筆の際には『ローマの休日』を意識したという、アニメファン以外にも広くアピールする、切ないラブストーリーに仕上がっています。

 ベスタドを呼ばれる混血児である主人公・狩野シャルルと次期皇妃ファナの身分違いの恋はもちろんのこと、そのほかにも明らかに『ローマの休日』を踏まえている個所が本作には盛りだくさん。『ローマの休日』では、オードリー・ヘプバーン演じるアン王女がこなさなければならないスケジュールを冒頭で示すことによって王女であることの退屈さを観客に伝えていましたが、本作でも舞踏会でのちっとも楽しそうでないヒロインの表情が高貴な身分であることのつまらなさを表現。ファナが夜中に屋敷で目覚めたり、慣れないお酒に酔っ払ったり……そういったシーンを『ローマの休日』の該当場面に当てはめてみるのも本作の一つの楽しみ方といえましょう。そして何より、あの“ヘプバーンカット”を生み出した、ロングヘアから思い切ってショートヘアにしてしまうヒロインの大胆さは本作にもちゃんと受け継がれています。シャルルと共に過ごすことにより、だんだんと表情が豊かになっていくファナの魅力には多くの人がノックアウトされてしまうに違いありません。

 また、『ローマの休日』にはない本作ならではの見どころは、全編にわたってちりばめられている空中戦のシーン。戦闘機が空中で舞うシーンは背景美術の美しさとも相まって、それを観るためだけに劇場へ行ってもよいと思えるほどのクオリティーですが、その一方で戦闘機のディテールや動きの描き込み・表現もおろそかになっていません。実際に監督・スタッフがアクロバット飛行をビデオカメラ持参で体験したとあって、その迫力は十二分。とりわけクライマックスのドッグファイトは一瞬たりとも目の離せない名シーンになっています。

 今年の夏はスタジオジブリの『コクリコ坂から』とディズニー/ピクサーの『カーズ2』が相次いで公開されましたが、ここで紹介した3作品は、それらに負けず劣らずの良作。アニメは子どもが観るものという考えはもう昔の話。日本が世界に誇るジャパニメーションは、大人だって子どもと同じくらい楽しめちゃうのです!

映画『とある飛空士への追憶』は10月1日より全国公開

一時はアカデミー賞候補になるかと騒がれた『サマーウォーズ』
© 2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

アニメ界のオードリー・ヘプバーン……?
© 2011犬村小六・小学館 / 「とある飛空士への追憶」製作委員会

大迫力の空戦に注目です!
© 2011犬村小六・小学館 / 「とある飛空士への追憶」製作委員会

文・構成: シネマトゥデイ編集部 福田麗

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