シネマトゥデイ

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INTERVIEW@big apple

今月は、;マイケル・ファスベンダー主演作『ア・デンジャラス・メソッド(原題)/ A Dangerous Method』アントニオ・バンデラス主演、ペドロ・アルモドバル監督作品『ザ・スキン・アイ・リブ・イン(英題)/ The Skin I Live In』、そしてニューヨーク映画祭の取材を紹介します。

10月3日非常識な黒人女性記者に、マイケル・ファスベンダーも動揺!?(リージェンシー・ホテルにて)

『ア・デンジャラス・メソッド(原題)/ A Dangerous Method』

分裂症(統合失調症)の解明に多大な影響を与えたスイスの心理学者カール・ユング(マイケル・ファスベンダー)と、彼の恩師で、精神分析の創始者であるオーストリアの精神分析学者ジークムント・フロイト(ヴィゴ・モーテンセン)。二人は、ロシアの女性患者サビーナ・シュピールライン(キーラ・ナイトレイ)を通して分析心理学の研究を進めていくが、ユングと彼女の関係が深まるにつれ、変化が生じていく。

マイケル・ファスベンダー、デヴィッド・クローネンバーグ、クリストファー・ハンプトン

『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』で若かりしころのマグニートーを演じ、一躍注目を集めたマイケル・ファスベンダー/ユングとフロイトという2人の偉人について、知性とウイットに富んだ言葉で語り明かしたデヴィッド・クローネンバーグ監督

この日は、午前中に鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督の映画『ア・デンジャラス・メソッド(原題)/ A Dangerous Method』を取材後、12時からニューヨーク映画祭にて、サンダンス映画祭でセンセーションを巻き起こした話題作『マーサ・マーシー・メイ・マリーン(原題)/ Martha Marcy May Marlene』の試写を鑑賞し、その後に開かれる同作の記者会見を取材する予定だった。まずは、デヴィッド・クローネンバーグとマイケル・ファスベンダーの取材。当然この二人ならば、多くの取材記者が詰めかけて、ろくに質問できないだろうと心配していたのだが、二つの取材部屋にそれぞれわずか3人の記者しかおらず、ビックリした。同時に、映画の題材が心理学者ユングと精神分析学者フロイトという偉人であるため、事前にしっかりリサーチをしておいて良かったと安堵(あんど)した。

まずはマイケル・ファスベンダーが登場。インタビューが始まった途端、黒人女性記者が、テーブルの下をのぞいたり、周りを見渡したりと何かを捜しているようで落ち着かない様子だった。その行動にマイケルも気付いて「どうしたの?」と彼女に話しかけると、「携帯をなくしてしまった!」とのこと。僕らも取材を中断し、しばらく周りを見渡したのだが結局見つからず、取材を再開した。ところが、その黒人女性記者は取材の最中であるにもかかわらず、携帯を捜すためか部屋を出て行ってしまったのだ……! 確かに携帯の行方が気になるのはわかるが、そのとっぴな行動に、残された我々はあっけにとられてしまった。それから10分ぐらい経過して、ようやくその黒人女性記者は落ち着いた顔で戻ってきて、向こうの部屋で携帯が見つかったことを報告した。なんて人騒がせな記者だろう……。

マイケルは、ここのところ忙しかったため、2か月程度の休暇を取っているそうで、ニューヨーク映画祭などで忙しいだろうと僕らを気遣ってくれた。ユングの女性関係については、彼なりの見解で面白かった。そしてマイケルのインタビューが終わると問題の黒人女性記者は早々に引き上げてしまい、僕ともう一人の記者で、デヴィッド・クローネンバーグを取材することに! 僕は学生時代にフロイトの本を読んだことがあったため、かなり突っ込んだ質問もしてみたが、クローネンバーグは映画制作にあたって万全のリサーチをしていたのか、時間をかけてよどみなく答えてくれた。時折辛らつなユーモアを絡めていて、会話の端々に知的な印象を受けた。おそらく一人で取材していたら彼の知性におじけづいていたかもしれないが、もう一人の男性記者が、かなり心理学を勉強しているようだったので、プレッシャーを感じることなく質問できた。二人のインタビューを終えた時点で1時間40分近くたっていたので、最後の脚本家クリストファー・ハンプトンの取材はパスしてニューヨーク映画祭に行きたかったのだが、パブリシストのダナ・ダニエルズが「クリストファーはすぐに来るから」という。ダナは、1990年代後半のミラマックス作品を宣伝してきたすご腕のパブリシストで、彼女を敵に回すと大変なので『マーサ・マーシー・メイ・マリーン(原題)/ Martha Marcy May Marlene』の試写には途中入場することに決め、引き続きクリストファーを取材することに。結果的には映画『つぐない』の脚本も手掛けたクリストファーの取材をして良かったのだが、それにしても随分取材をナメている記者もいるものだと、例の黒人女性記者の姿が脳裏をよぎっていた。

10月11日アルモドバル、20年経てもセクシーなバンデラスを絶賛!(リージェンシー・ホテルにて)

『ザ・スキン・アイ・リブ・イン(英題)/ The Skin I Live In』

一流の整形外科医として名をはせたロバート(アントニオ・バンデラス)は、過去に自動車事故で全身にヤケドを負った妻を救えなかったことから、どんな外傷にも耐えることのできる人工皮膚を開発した。やがて彼は、その人工皮膚を謎の女性ベラ(エレナ・アナヤ)に移植するが、その先には大きな落とし穴が待ち受けていたというサスペンス・ドラマ。監督は『神経衰弱ぎりぎりの女たち』『アタメ』などでアントニオ・バンデラスと度々タッグを組んできたペドロ・アルモドバル。

アントニオ・バンデラス、ペドロ・アルモドバル、エレナ・アナヤ

若干老けたものの、セクシー・オーラは健在なアントニオ・バンデラス/左からアントニオ・バンデラス、エレナ・アナヤ、ペドロ・アルモドバル

この日、取材現場に到着すると、用意されていたのはドリンクとクッキーだけ……。ニューヨーク映画祭で多忙を極め、ろくに食事する時間がなかったため、取材現場にランチが用意されていることを期待したのだが……。結局、空腹のまま取材に参加することに(もちろん、腹は減っていたのでクッキーを持って移動した)。ところが、取材部屋に入ると開始まで20分以上あるにもかかわらず、前列の席はスパニッシュ系の記者が占領し、僕は仕方なく後ろの席に座ることに。しかも、待っている間にも記者の数が増え、10人近くの記者がテーブルを囲んでいた。

まずは、短髪でラフな服装のアントニオ・バンデラスが登場。今年で51歳になる彼は、さすがに1990年代の映画に出ていたころと比べると老けたように思った。映画では、黒髪で肌つやの良い顔で映っているが、近くで見ると年齢を感じさせる。だが、ダンディーでセクシーな雰囲気は健在で、前列に座っていた女性記者は、前に乗り出して質問をしていたほど。バンデラスはかなり長い間アメリカにいるはずだが、意図は的確に伝えられても英語の発音は完ぺきとはいえない。それでも、90年代にバンデラスにインタビューした記者が言うには、当時と比べるとだいぶ上達しているそうだ。インタビュー中、陽気なノリで返答するバンデラスは、まさにスパニッシュの血が流れていることを感じさせ、ジェスチャーを交えて話す彼に記者全員が見入っていた。そして、バンデラスの取材が終わり、写真を撮ろうとしたら、パブリシストから「今日は写真はなし」とのお達しが! 仕方ないので、ニューヨーク映画祭の記者会見で撮影することに。

続いて、サングラスをしたペドロ・アルモドバル監督が登場。目があまり良くないペドロが、おそらく記者のカメラのフラッシュを嫌がって、撮影を禁止したんだろうとふに落ちた。よく考えたら前回アルモドバルにインタビューしたときも撮影禁止で、代わりに映画祭の写真を使ったことを思い出した。アルモドバルは少しだけ英語を話せるが、この日は通訳を介してインタビューに応じた。アルモドバルは、バンデラスを起用した理由について語る際に、「20年前に仕事をしたときと変わらず、今もバンデラスはセクシーだ」と言って記者たちを笑わせた。さらに、劇中で使用されているダリや他の画家の美術作品は、その後に展開されるストーリーに深い意味を持たせていると話していた。時々、映画の内容を説明するときに興奮気味になって、通訳を介さずに英語で話しそうになるアルモドバルの姿がほほ笑ましかった。彼が去った後、女優エレナ・アナヤが登場。彼女は今年で36歳になるそうだが、20代といってもおかしくないぐらい若々しく見えた。まずエレナは、ヒロイン、ベラの過去を演じる女優が、自分とはまったく違うタイプであったため、この女優と会って情報を得て、キャラクターにブレがないように演じていたらしい。彼女は通訳を介さずにインタビューに応じたが、チャーミングな話し方で非常に聞き取りやすかった。この作品でアルモドバルとバンデラスが再タッグを組んだこと、そして二人に取材できたこともうれしかった。翌日、ニューヨーク映画祭でアルモドバル、バンデラス、エレナが集まった記者会見に参加し、取材用の写真を撮ってこの映画の取材を終えた。

9月30日~10月17日秀作の多かったニューヨーク映画祭!(リンカーン・センター、ウォルターリード・シアター、フランチェスカ・ビール・シアターにて)

ニューヨーク映画祭

今年のニューヨーク映画祭は質の高い選考ばかりで、その中でも巨匠マーティン・スコセッシがジョージ・ハリソンの軌跡を追ったドキュメンタリー『ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』、ベルリン国際映画祭で金獅子賞を受賞した『ア・セパレーション(英題)/A Separation』、オスカー候補の『ジ・アーティスト(原題)/ The Artist』、ミシェル・ウィリアムズ主演の『マイ・ウイーク・ウィズ・マリリン(原題)/ My Week With Marilyn』、ジョージ・クルーニー主演の『ザ・ディセンダント(原題)/ The Descendants』などを紹介。

マーティン・スコセッシ、アスガー・ファルハディ、ミシェル・アザナヴィシウス、ミシェル・ウィリアムズ、アレクサンダー・ペイン

マーティン・スコセッシ監督の映画は3時間半もの長尺で、途中15分の休憩があったが、まったく長さを感じさせない内容に仕上がっていた。ニューヨーク出身のスコセッシは当然記者会見に参加するものと思っていたら、なんとイギリスでこの映画のプレミアが同時期に行われており、スコセッシはSkypeを通して会見に応じるという不満の残る取材になった。しかも、それまでSkype形式の取材に関しては、事前にE-mailで知らせてくれていた映画祭のパブリシストが、この映画に関しては取材記者が少なくなるのを恐れてか、その通達を行っていなかった。

映画『ア・セパレーション(英題)/ A Separation』は、ニューヨーク映画祭のラインナップの中で、個人的に最も完成度の高いと思った作品。その演出は、往年のシドニー・ルメット作品を彷彿(ほうふつ)させるほどで、アスガー・ファルハディアッバス・キアロスタミに続いて、イランの監督の中でこれから注目すべき監督だと思った。『ジ・アーティスト(原題)/ The Artist』は、サイレント時代のスターと、トーキーの時代に活躍した若き女優との関係を描いた話。モノクロ映像と往年の名作の引用が施され、アカデミー会員が好む要素がふんだんに盛り込まれているため、アカデミー賞作品賞ノミネートは確実といえよう。『マイ・ウイーク・ウィズ・マリリン(原題)/ My Week With Marilyn』は、予告編を観た時点では、マリリン・モンロー役がミシェル・ウィリアムズで大丈夫かと不安に思っていたが、ミシェルは話し方、しぐさ、雰囲気をしっかりつかんで見事マリリンに成り切っていた。オスカー候補といってもいい名演だが、個人的にはミシェルにはマリリンが持つセクシャルな要素が少し欠けていたように思う(生まれながら備えているか否かの素質だとは思うが)。最後に『ザ・ディセンダント(原題)/ The Descendants』は、ニューヨーク映画祭では平日に試写を行い、週末に記者会見を行うスケジュールだった。だがその翌週に同作のキャストと監督の取材が控えていたため、僕はこの記者会見をパスして、翌週の取材だけにフォーカスするつもりでいた(ほかの取材が山積みになっていたからでもある……)。翌週の取材で主演のジョージ・クルーニーは不参加の予定だったため、当然のように映画祭の記者会見でもクルーニーは参加しないと思っていた。ところが、クルーニーが急きょ記者会見に参加することになり、パブリシストはそれを知らせなかった。結局、クルーニーは翌週の取材にも参加することなく、完全に取材機会を逃してしまったのだ……。自分はかなり注意深いはずだが、思わぬところで油断してしまったと、後悔した。この映画は、ハワイに住む上流階級の女性がボート事故に遭って危篤状態に陥り、その家族がその後どのように対応していくかを描いたドラマ。これまでのハワイをロケーションにした映画とは一線を画す、真のハワイの家族が描いた秀作だ。ジョージ・クルーニーは確実にアカデミー賞にノミネートされるだろう。

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  5. ~第36回 2011年10月~