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岡田将生&榮倉奈々
『アントキノイノチ』
役として生きているときの一瞬一瞬を大切に
映画『アントキノイノチ』岡田将生&榮倉奈々 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:吉岡希鼓斗

2009年にさだまさしが発表した同名小説を、映画『ヘヴンズ ストーリー』で数々の映画賞を獲得した瀬々敬久監督が映画化した『アントキノイノチ』。高校時代のいじめがきっかけで心を閉ざしてしまった青年・永島杏平と、衝撃的な過去を持つヒロインの久保田ゆきが、遺品整理業の仕事で知り合い、心を通わせていく姿を描いた癒やしと再生の物語だ。杏平を演じた岡田将生と、ゆきを演じた榮倉奈々が、作品に対する熱い思いを明かした。

■実は、撮影現場に入るのが怖かった!その理由とは?

Q:心に傷を負った杏平とゆきが、とてもリアルで切なかったです。役づくりのために、事前の準備が必要だったのではないですか?

岡田将生(以下、岡田):杏平は吃音(きつおん)を抱えた少年だったので、撮影前に吃音(きつおん)についていろいろと勉強させていただきました。人それぞれ症状が違うことを知って、杏平の吃音(きつおん)というのを考えなければいけないと思ったのですが、答えが出せないまま撮影が始まってしまいました。現場で、瀬々監督と話し合いながら、その答えを見つけていくのが大変でした。

榮倉奈々(以下、榮倉):このお話をいただいたときから撮影までに4か月も時間があって、悲しい経験を持つゆきの気持ちを想像しようとしたんですが、頭の中で考えているだけだと、どこまで自分を追い込んだらいいのか、収拾がつかなくなってしまって。だから、早く現場に入って監督と話をしたくて、撮影が始まるのを待ち望んでいました。

岡田:僕も早く現場に入りたかったです。でも、入るのが怖いという気持ちもあって、「あー、あと1週間か……。もう明日か……」と考えてしまいました。「この役をちゃんと全うできるのだろうか? 撮影の1か月間を乗り越えられるのだろうか?」という不安は大きかったですね。

榮倉:岡田くんは、撮影前にわたしに「ごめん、迷惑掛けるかもしれない」って謝ったんですよね。

岡田:そうそう、先に謝っておこうと思って。男としてはちょっと情けないけど。

榮倉:わたしもそう思っていたから、「こっちこそごめんね」って返しました。

■岡田は役者よりもサラリーマンがお似合い?

Q:杏平とゆきの感情があふれ出るシーンに圧倒されたのですが、撮影が終わった後も、役の感情に引っ張られたりしませんでしたか?

榮倉:わたしは、映画の撮影中って友達と会えないんです。オンとオフの切り替えがうまくできないんですよ。ゆきちゃんの気持ちになるためには、自分自身が幸せであってはいけない気がしちゃって……。

岡田:ストイックですねえ。

榮倉:そうかなあ。たぶん、本当にお芝居がうまい人は、そんなこと必要ないと思うんですが、わたしは自分に自信がないから、そうやって自分を追い詰めていかないとだめなような気がしちゃうんです。

岡田:僕なんて真逆ですよ! 大変なシーンがあったら、「次の日は休みだ!」と思うことでモチベーションを上げていますからね。「この日を乗り越えたら未来があるんだ!」といつも自分に言い聞かせています。まるでサラリーマンの金曜日(笑)。僕って、本当は役者よりもサラリーマンが似合うタイプなのかもしれない(笑)。

榮倉:それを言ったら、わたしも新橋のOLですよ。新橋に住みたいくらい(笑)。

Q:岡田さんは、気持ちの切り替えが早い方なんですね。

岡田:ただ、今回の作品では、気持ちを切り替えるということはあまり意識していなかったような気がします。自分自身と杏平とが重なる部分がたくさんあったので、役として生きているときの一瞬一瞬を大切にして、自分の気持ちを探っていこうという感じでしたね。

榮倉:どうやって役と向き合うのかって、作品ごとに変わっていくと思うんです。わたしも、もっと楽になれる日が来るかもしれない。いつかそうなりたいです。

■遺品整理業の現場でプロのすごさを実感!

Q:お二人は、撮影の前に遺品整理業の現場を経験されたそうですが、そこで何を感じましたか?

岡田:僕たちがお手伝いをした部屋は、亡くなった方の生活感があふれていて、最初は何をしたらいいのかわからなくて戸惑いました。でも、作業しているうちに、「これは思い出の品だからご供養品」「これは不要品」って、自然にわかってくるものなんです。それは、とても不思議な感覚でした。きっと杏平も同じことを考えているんだろうなと思えたので、遺品整理業を体験できて本当に良かったです。

榮倉:「ここで人が生きていたんだ……」と思うと、いろいろな感情がわいてくるんですけど、今回お世話になった“キーパーズ”の皆さんは、個人的な感情は一切出さずに、とても手早く作業を進めていくんです。亡くなった方への思いがありながらも、ちゃんと仕事として割り切っているところがプロだなと感じたし、それが優しさなのかもしれないってすごく思いました。

■モントリオールで楽しんだ映画通の人々との交流

Q:本作は、第35回モントリオール世界映画祭でイノベーションアワードを受賞しましたが、映画祭はいかがでしたか?

岡田:すごく楽しかったです!

榮倉:あんなに観客の方々の生の感想が聞けるなんて、日本では考えられないですよね。観客の方々との距離が近いので、本当に楽しかったです。

岡田:映画好きの人たちが集まっているので、記者さんの中にもコアな質問をしてくる方がいるんです。例えば、「セリフが少なかったけど、表情だけでお芝居をするのは大変だったのでは?」とか……。

榮倉:それから、瀬々監督の大ファンの方がいて、「監督は暴力を描かれることが多いですが、この作品における暴力にはどんな意味があるんですか?」とか。

岡田:そう、ものすごく深いことを聞いてきたりして、日本との違いが面白かったです。

榮倉:宿泊したホテルに映画を観た方が泊まっていて、「すごく良かった!」って声を掛けてくださったり、ライターさんもすれ違いざまに「観たよ!」って言ってくださったり、フランクな雰囲気があってよかったです。貴重な体験でした。

Q:最後になりますが、お二人は、この作品からどんなメッセージを感じましたか?

岡田:この作品には、いろいろなテーマが入り交じっているのですが、一番明確なのは、「人と人がつながっていくことの大切さ」なんです。観ればきっと何かを感じてもらえる作品になっていると思います。

榮倉:わたしにとって、いろいろなことを考えるきっかけになった作品です。観る人の性別や世代や環境によって、それぞれが違うテーマを感じるかもしれません。観た方々が、何かを考えるきっかけとなる作品になったらうれしいです。

繊細でナイーブな役柄が多い岡田と、明るいキャラクターを演じることが多い榮倉。一見対照的な二人だが、役と真摯(しんし)に向き合う姿勢には共通するものがあるようだ。撮影では精神的に追い込まれることが多かったそうだが、その大きなハードルを乗り越えた二人の、ふっ切れたような笑顔が印象的だった。モントリオール世界映画祭で絶賛された本作は、どこかユーモラスなタイトルからは想像できないくらい、善と悪が一体となった人間の複雑な感情を鮮烈に映し出すヒューマンドラマだ。見終わった後は、「元気ですかー?」の掛け声が、大きな感銘と共に心に響き渡ることだろう。

(C) 2011「アントキノイノチ」製作委員会

映画『アントキノイノチ』は11月19日全国公開

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