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今週のクローズアップ 第84回アカデミー賞のカギを握る必見の5タイトル

 いよいよ、目前に迫る2月26日(現地時間)の第84回アカデミー賞授賞式。最多11部門ノミネートの3Dファンタジー『ヒューゴの不思議な発明』、10部門ノミネートのサイレントモノクロ映画『アーティスト』など、注目すべき作品&人物をフィーチャー。
作品賞部門の注目は……映画への愛を古典&最先端、対照的な手法で描いた2作品

 作品賞にノミネートされた9作品の中でも、一騎打ちとなったのが11部門ノミネートの『ヒューゴの不思議な発明』と10部門ノミネートの『アーティスト』。「世界初の職業映画監督」といわれるジョルジュ・メリエスにオマージュをささげ、最先端の3D映像を駆使した前者と、サイレントからトーキーに移り変わる時代の哀愁をサイレント&モノクロで描いた後者。どちらも古き良きサイレント時代を回顧しながら、古典&最先端、対照的な技術で映画への愛を高らかにうたい上げた2作品の対決には、全世界の映画ファンが興奮していることだろう。

 「亡き父親が残した機械人形をよみがえらせようとする少年が巻き起こす奇跡」という老若男女が楽しめる設定、「テーマは普遍的だけど技術は最先端」というバランスの良さからも、『ヒューゴの不思議な発明』が優位と考えられるが、ここはデジタル時代にあえてサイレントモノクロ映画に挑んだ『アーティスト』をプッシュしたいところ。落ちぶれゆくサイレント映画の大スターと、トーキー映画の売れっ子に成長する若手女優の恋を通して描かれる、「忘れ去られていく者の哀愁」は涙なしに観られない。新たな時代に進むためには古いものは淘汰(とうた)されるのが自然の流れだが、時には過去を振り返ることで得られることもあるのではないのか。そんなふうに潔く時代を逆行する勇気は、なかなか持てるものではない。「いまの時代があるのは、映画史を作ってきた偉人たちの功績があるから」というメッセージは、きっと誰の心にも届くはずだ。

 

主演を務めるのは、監督と3度目のタッグとなるジャン・デュジャルダンと、監督の愛妻ベレニス・ベジョ。すれ違いを繰り返す大人のロマンスに加え、鮮やかなタップダンスも披露して抜群のコンビネーション!(4月7日公開の映画『アーティスト』)
(C) La Petite Reine - Studio 37 - La Classe Americaine - JD Prod - France 3 Cinema - Jouror Productions - uFilm

 

乗客、物売り、警官など多くの人々が行き交う駅のせわしい光景、少年ヒューゴのみる不思議な夢など、各シーンの特性に合った迫力の3D映像に目がクギづけに!(3月1日公開の映画『ヒューゴの不思議な発明』)
(C) 2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved

俳優部門の注目は……そろそろ受賞しどきの本命クルーニー兄貴と大穴ブラピ

 「家族」「きずな」「絶望と再生」、そして「誇り」。このキーワードを見ただけでも、『ファミリー・ツリー』の主演を務めたジョージ・クルーニーが、主演男優賞候補の中で最も妥当といえそう。ゴールデン・グローブ賞、ナショナル・ボード・オブ・レビューなど前哨戦で快進撃が続き、圧倒的な強さを見せつけているが、実際に彼の演技を観れば誰もが納得するはず。クルーニーが演じるのは、妻が昏睡(こんすい)状態に陥り、同時に先祖代々から受け継いだ広大な土地の売却、存続の決定権を突き付けられ、父親として、ハワイの一市民として大きな転機を迎えた男。これまで家庭を顧みなかった彼は、妻に浮気され、娘たちからは完全に無視され、手痛いしっぺ返しをくらうことになる。そんな「悪い人ではないんだけどいい人でもない」ごく平凡な父親像を、とことんぶざまに演じ切ったクルーニーの熱演は圧巻。『シリアナ』で助演男優賞に輝いていることからも彼の実力は証明済みで、そろそろ主演男優賞をあげるころ合いと考えるアカデミー会員も多そうだ。

 一方、クルーニーを上回る人気を持つブラッド・ピット『マネーボール』でノミネートされたことも事件だ。これまでトム・クルーズジョニー・デップレオナルド・ディカプリオらが度々ノミネートされながらも、ことごとく無冠に終わっているところを見ると、まるで「人気スターはオスカーを取れない」という法則があるかのようだ。今年はほぼジョージ・クルーニーで決まりとささやかれてはいるものの、もし番狂わせでブラピが受賞すれば、来年以降の受賞予想に大きな波紋を呼ぶだろう。

 

主人公マットの心を揺り動かす雄大な自然に満ちたハワイ・オワフ島のロケーションも見もの。ご当地映画としても楽しめる5月18日公開の映画『ファミリー・ツリー』
(C) 2011 Twentieth Century Fox

 

1995年の『12モンキーズ』で助演男優賞を、2008年の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』で主演男優賞を逃がし、2011年の『マネーボール』で三度目のリベンジに臨むブラピ
Courtesy of Sony Pictures Releasing

女優部門の注目は……人種差別をテーマにした感動作で3人の女優がノミネート

 ヴィオラ・デイヴィスが主演女優賞に、オクタヴィア・スペンサージェシカ・チャスティンが助演女優賞にWノミネートされ、一気に注目を集めたのが『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』エマ・ストーン演じるジャーナリストの卵が黒人メイドに投げかける「自分の子どもを他人に預けて、他人の子どもを育てるというのはどんな気持ちなのか」という疑問から始まる本作は、差別する側と差別される側の戦いを女性の視点で描き、完全に男性を役立たず、添え物として扱っているのが面白い。まさに女性のパワーがさく裂した快作で、強固なきずなをもって白人社会に反旗を翻す黒人女性という、いかにもアカデミー会員好みの「社会派」のキャラクターを好演したヴィオラとオクタヴィアは受賞の可能性が濃厚。が、このキャラクターたちが決して「正しい人」とひとくくりにはできない、観客のド肝を抜くような図太さを持ち合わせている点が本作最大の魅力だ。

 また、忘れてはならないのがノミネートされた3人の女優陣に劣らない存在感を見せつけるブライス・ダラス・ハワードの悪役ぶり。アメリカ上流家庭で育った高慢な人種差別主義者にふんし、見事「起爆剤」としての役割を果たしている。ヴィオラやオクタヴィアから計り知れない激情を引き出しているのも、彼女の力があってこそと言っても過言ではない。そんな彼女が、いまだかつてアカデミー賞でノミネートすらされていないのは残念でならない。

転んでもただでは起きない陽気なミニーをはつらつと演じたオクタヴィア・スペンサー(中央)と、息子を亡くした悲しみを抱えて生きるエイビリーンの葛藤を繊細に体現したヴィオラ・デイヴィス(右)。どちらも有力!(3月31日公開の映画『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』)
(C) 2011 DreamWorks II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

各家庭に「黒人メイド専用トイレ」の設置を主張する、典型的な差別主義者を憎々しく演じたブライス・ダラス・ハワード(右から2番目)。『ヒア アフター』『50/50 フィフティ・フィフティ』など、近年は助演として目覚ましい活躍を見せ、着実にキャリアアップ
(C) 2011 DreamWorks II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

文・構成:シネマトゥデイ 石井百合子

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