シネマトゥデイ

マーティン・スコセッシ監督&クロエ・グレース・モレッツ
『ヒューゴの不思議な発明』
名匠が若き俳優たちに託す、映画への愛
『ヒューゴの不思議な発明』マーティン・スコセッシ監督&クロエ・グレース・モレッツ インタビュー

取材・文:山口ゆかり

名匠マーティン・スコセッシ監督初の3D映画『ヒューゴの不思議な発明』は、スコセッシ監督にとって初のファミリー向けの映画だ。しかし、そこはスコセッシ監督、マジカルで子どもたちも楽しめるストーリーでも、色濃く漂う戦争の影や失意の人々が心に迫る。同時にスコセッシ監督の映画への愛も強く感じられる。そんな、ひと味違った深みのあるファミリームービーとなった本作について、スコセッシ監督とヒロインを務めたクロエ・グレース・モレッツが語った。

■寂しい少年時代だったスコセッシ監督

Q:本作は、監督の個人的な映画のようにも思えますが?

マーティン・スコセッシ監督(以下、スコセッシ監督):この映画を作ることについては、ヘレン(スコセッシ監督夫人)や周囲の人々から話を聞いて決めたことだから、わたし自身はそうは思わなかった。このヒューゴ(エイサ・バターフィールド)という少年の孤独に惹(ひ)かれたことを除いてはね。孤独というのはわたしの人生の中でも大きい部分だ。特に3歳くらいのときは、いろいろな面で切り離されていたよ。そういう意味では、自伝的な映画といえるのかもしれないね。

Q:劇中には、ずいぶん懐かしい映画も出てきますね?

スコセッシ監督:父親に連れられて、よく映画を観に行ったものだよ。そういえば、自伝的な部分といえば、父親とのきずなを描いている部分もそうだね。1940年代後半くらいからだよ、父親に映画に連れて行ってもらえるようになったのは。初めて自分で映画を観に行ったのは1950年代に入ってからだった。

Q:特に記憶に残っている作品はありますか?

スコセッシ監督:夢中で映画を作る美しさといえば、すぐに思い出すものがある。父親が連れて行ってくれた『ザ・マジック・ボックス(原題) / The Magic Box』という作品だよ。イギリスの映画で、確か1951年だったと思うけど、映画の発明家の一人であるイギリス人ウィリアム・フリーズ=グリーンについての物語なんだ。ロバート・ドーナットが主演で、テクニカラーの映画だった。彼演じるウィリアムが、動く絵で物語ることに夢中になる様子といったら! 実際にはたいして動いてもいないんだけどね。それと、色を使えることにも夢中な様子で! 愛すべきキャラクターだけど、その発明と可能性にとりつかれたようになって、プライベートな生活が完全に破壊されてしまう。いやなやつ、ひどいやつというのではないけど、ある意味素晴らしく、ちょっとマッドな人物なんだ。わたしにとって、子ども時代に父と観た中でも、とても重要な映画だよ。

■クロエのクラシック映画の鑑賞歴は5、6歳から!

Q:これまでにスコセッシ監督の映画をご覧になったことはありましたか?

クロエ・グレース・モレッツ(以下、クロエ):『アビエイター』はすでに観ていたの。それと、今回の出演に合わせていろいろと観たわ。『レイジング・ブル』に『ディパーテッド』『シャッター アイランド』や『ギャング・オブ・ニューヨーク』とかね。

Q:あなたの年齢で観るには、暴力描写が激しすぎませんでしたか?

クロエ:でも映画だから。『キック・アス』や『モールス』のような映画でも、キャラクターとして(暴力シーンを)演じているし。実生活とは違うものとして分けて考えているから、両親も許してくれているんだと思うわ。

Q:本作では、『月世界旅行』を監督したジョルジュ・メリエスについて語られますが、彼のことは知っていましたか?

クロエ:映画の父みたいな人だということは知っていたわ。

Q:出演にあたって、スコセッシ監督に観ておいたほうがいい映画などは薦められました?

クロエ:たくさん! 箱三つ分もの映画を渡されたのよ!

Q:全部ご覧になりました?

クロエ:できるだけ観るようにがんばったわ。(笑)

Q:特にお気に入りの映画はありましたか?

クロエ:黒澤明監督の作品が、すごくかっこよかった! 『七人の侍』『用心棒』『椿三十郎』とか!

Q:ふだん観ている作品より、重く感じませんでした?

クロエ:そんなことないわ。お兄ちゃんが映画好きで、映画史にも詳しいの。それで、クラシック映画をよく観せてくれるのよ。もう5~6歳くらいから古い映画を観ているわ。

■人生の終わりをいつも考える

Q:監督の過去の作品とはかなり毛色が違いますが、年齢と共にセンチメンタルになってきたということでしょうか?

スコセッシ監督:そうじゃないことを願いたいよ。センチメンタルというのは、表面に出たところだけを表す言葉だよね? もっと深いところでの、真のセンチメンタルということなら、そうかもしれない。年齢を重ねながら、同じ面々に囲まれて暮らす中で、生まれたり死んだりする人もいる。20代、30代でも子どもを持ったけど、年を取ってから子どもを持つのはまた違う体験だしね。ジョージ・ハリソンの映画(『ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』)を作って、人生の終わりについて考えもした。いつも終わりについては考えているけれど。

Q:そのときが来るまでに、こんな映画を観ておきたいというものはありますか?

スコセッシ監督:それはないね。必ずしも質がいいとは限らないけど、ここ20年で、ほぼどんな映画でも作ることが可能になった。わたしの家にだけでも、そんな映画の数々、何千というDVDがあるんだ。

Q:若い映画製作者に望むことはありますか?

スコセッシ監督:今は、本当にワクワクする時代だと思うよ。何でもありだからね。そこに新しいものを加えていけるかは、その人次第なんだ。いつの時代でも大事なのは、若い人に過去の映画を観せることだよ。今、わたし自身が子どもにやっていることだけどね。

インタビューの最後には、日本のファンにとって待望の企画となる、遠藤周作の小説「沈黙」映画化の進行状況についても語っていたスコセッシ監督。これからの活動からも目が離せないところだが、まずはスコセッシ監督が、若手女優の急先鋒(せんぽう)であるクロエを、名作クラシック映画の数々を観せて鍛え、映画への愛を注ぎ込んだ3Dファミリームービーへのチャレンジを成功させた本作を、お見逃しなく。

クロエ:Matt Carr / Getty Images
スコセッシ:Fotos International / Getty Images
(C) 2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved

映画『ヒューゴの不思議な発明』は全国公開中

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