シネマトゥデイ

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ウディ・アレン監督
『ミッドナイト・イン・パリ』
雨の降ったパリの街並みを映画音楽と共に楽しもう
『ミッドナイト・イン・パリ』ウディ・アレン監督単独インタビュー

取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki

知的センスが光る饒舌(じょうぜつ)な会話を銀幕に映し出し、世界中の映画ファンを魅了してきた巨匠ウディ・アレン監督。彼の新作『ミッドナイト・イン・パリ』は、タイトルのとおりパリを舞台にした物語だ。第84回アカデミー賞で作品賞を含めた4部門にノミネートされ、脚本賞を受賞したこの秀作についてアレン監督が語った。

■パリという都市は究極のアート

Q:オープニングでは、およそ3分もの間パリの美しい風景が映し出されますが、これはパリを一つのアートと見なして表現しているのでしょうか?

そうなんだ。パリという都市は究極のアートといえるだろう。これまで訪れた都市とは全く違った顔を持っている。見ているだけで目の保養となり、観客は日に照らされたり、雨の降ったパリの街並みを映画音楽と共に楽しんだりできると思うんだ。本当に素晴らしい街だと思っているよ!

Q:映画『マッチポイント』以来、ニューヨーク以外で映画を製作することが増えたと思いますが、それにはどういった理由があるのでしょう?

実は、向こうが予算を捻出(ねんしゅつ)して、映画を作るようにと僕を招待してくれただけなんだ。これまで訪れたバルセロナ、ローマ、そしてパリすべてが魅力的な都市で、それぞれの都市からインスピレーションがわいてくるんだよ。僕はこれまで30作以上もニューヨークで撮影してきたわけだから、違った環境であれば当然のように刺激を受けるんだ。

■偉人たちには会いたくない?

Q:本作には、ヘミングウェイやダリなど誰もが知っている芸術家がたくさん登場しますよね。どういったところに気を配って彼らのキャスティングをしたのでしょうか?

劇中に登場する偉人たちは、誰もがその習慣や特性を知っている有名人だ。だから僕らは、単に彼らに似ているだけでなく、演技もしっかりできる俳優を雇う必要があったんだよ。偉人たちに似ていて、演技もできる俳優を探し出すのには苦労したし、時間もかかった。ただ、最終的には(素晴らしいキャスティングができて)幸運だったと思っている。この映画の舞台となる1920年代当時の年齢に適した画家ピカソ、うり二つのようなヘミングウェイ、そして若き日のサルバドール・ダリに似た、それぞれの俳優を雇うことができたからね。

Q:もし、あなたが本作の主人公のように作家F・スコット・フィッツジェラルドに会えるとしたら、どんな言葉を掛けてみたいですか?

実は、僕は自分のアイドルに会いたいと思ったことがないんだよ。唯一、グルーチョ・マルクスには会ったことがあるけど、実際に彼に会ったら、それまでの僕が彼に対して抱いていたマジカルな要素が消滅してしまったんだ。彼を、まるで僕の叔父や家族みたいなありふれた存在に感じてしまったんだね。だから、ジャズ・ミュージシャンのルイ・アームストロングに会える機会もあったけれど、あえて会わなかったよ。僕が偉人たちに会いたくないのは、彼らも僕らと同じ心配性で欠陥を持っている普通の人々だと気付きたくないからだよ。

■意外なキャスティング

Q:オーウェン・ウィルソンを主役にした経緯は?

完全に偶然の産物といえるだろうね。僕自身も誰がこの主役に適しているかわかっていなかったんだ。ある人がオーウェンを提案してきたとき、僕は「彼はカリフォルニアのサーファーみたいに落ち着き払っていて、ビーチのイメージがあるから違う」と言ったんだよ。ただ、しばらくしてから、彼には才能があって面白いうえに、良い俳優でもあるじゃないかと思い直したんだ。そこで、それならオーウェンに適したキャラクターを書けば良いのではないかと思い、脚本を改稿することにしたんだ。その改稿した脚本を彼に見せたら「ぜひ出演させてください」と言ってくれたんだよ。

Q:オーウェンは、ウェス・アンダーソン監督の『天才マックスの世界』などでは脚本家としても活躍していますよね。

そうなんだ。彼は非常に博識な人物だ。僕が予想していた人物とは異なっていたよ。彼はビーチにいるサーファーというよりは、洗練された知識人だね。

Q:フランス大統領ニコラ・サルコジの夫人であるカーラ・ブルーニのキャスティングについては?

パリでサルコジ夫妻と共に朝食を取ったことがあってね。そのときに、彼女が容姿端麗で、さらにショービズの世界で働いていたことに気付いたんだ。だから、僕は彼女に「映画に参加してもらえないだろうか?」と依頼してみた。すると彼女は「もし時間がかからないのであれば……」と答えてくれたから、すぐに美術館のガイド役を依頼して、撮影現場を見学するように気楽に訪ねてくれたら早急に撮影すると告げたんだ。すると彼女は「もちろん参加させていただくわ! わたしの孫にも、過去に映画に出演していたことがあると言えるから(笑)!」と言って出演を決めてくれたんだよ。

■アレン監督の今後

Q:あなたは毎年コンスタントに映画を製作してきましたが、あえて2、3年という時間をかけて、あなたが好きな『自転車泥棒』や『大いなる幻影』のような傑作を製作したいと思ったことは?

もしそんな傑作が作れるのなら時間をかけるだろうけど、実際にはそんな簡単なことではないんだ。確かに僕は毎年映画を製作しているけど、決して急いで製作しているわけではないんだよ。実際にはかなり時間をかけて脚本を執筆していて、これ以上良いものができるとは思っていないし、僕のすべてが脚本に記されているとも思っている。もっとも、僕には傑作を製作するような素質がないだけなのかもしれないけどね(笑)。

Q:映画『アニー・ホール』でアカデミー賞作品賞を受賞したとき、あなたはニューヨークのマイケルズ・パブでクラリネットを吹いていましたよね。もしアカデミー賞が「ベスト作品」ではなく「一番気に入った作品」を表彰するものだとしたら、授賞式に参加するつもりはありますか?

うん、参加するかもしれないね。一番気に入った作品とする方がより的確なアプローチだろう。もしみんながそろって一番気に入った作品とすれば、仮に自分の気に入った作品ではなく、ほかの人たちが気に入った作品であっても同意できるし、話し合うこともできる。だがベストと決定してしまうと、なかなか僕個人は同意できる作品がないんだよ。

取材前は、アレン監督に繊細で、少々神経質なイメージを抱いていたが、実際には気さくな人柄で、質問にも丁寧に答えてくれた。映画『ミッドナイト・イン・パリ』は、1920年代のパリを敬愛する主人公がタイムスリップし、自分が心酔してやまないアーティストたちと巡り合う奇跡の日々をつづった幻想的なラブコメディー。全編を通して、ウディ・アレン作品特有のジョークがさえ渡っている本作は、彼のキャリア最大のヒット作となっている。

(C) Jason Frank Rothenberg
(C) 2011 Mediaproduccion, S.L.U., Versatil Cinema, S.L. and Gravier Productions, Inc.

映画『ミッドナイト・イン・パリ』は5月26日より新宿ピカデリーほか全国公開

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