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宮崎あおい、大沢たかお、細田守監督
『おおかみこどもの雨と雪』
“母親の輝き”を映画に
映画『おおかみこどもの雨と雪』宮崎あおい、大沢たかお、細田守監督 単独インタビュー

取材・文:永野寿彦 写真:斉藤美春

『時をかける少女』『サマーウォーズ』で国内外の映画賞に輝き、今や世界中の注目を浴びる細田守監督の最新作『おおかみこどもの雨と雪』。誰もが体験するような日常の生活の中に、ファンタジックな要素を盛り込む、細田監督のテイストは、今回も健在。おおかみおとことの間に生まれた二人の子どもを育てる母親の姿、そして成長していく子どもたちの姿を、13年にもわたって追う物語が、美しいアニメーション映像でつづられていく。そんな本作の魅力を、細田守監督と、主演の宮崎あおい、大沢たかおが語った。

■13年の歳月を丁寧に描く

Q:13年もの時間経過を通して子どもたちの成長を描くアニメーションというのは画期的な作品ですよね。

細田守監督(以下、細田):あんまり見たことないですよね。でも、実写でやったら子どもたちはトリプルキャストにしなきゃいけない。そういう意味で言うと、アニメーションならばデザイン的にも同じ人物が成長していくのを描けるわけだから、アニメーションだからこそのアドバンテージをいかした作品だともいえるかもしれませんね。

Q:その時間経過を演じる上で難しいところはなかったですか?

宮崎あおい(以下、宮崎※「崎」は正式には旧字。「大」が「立」になります):演じているときは大学生だからとか、お母さんになったから声を変えようという意識はなかったです。むしろ順録(ど)り(物語の流れ通りの収録)で、共演者の皆さんと4日間一緒にできたことで、素直に気持ちや感覚の変化を感じられたので、演じやすかったですね。

細田:13年の中で花がどういうふうに成長するのか、彼がどういうふうに見守って、どういうふうに支えるか、みたいなことが、すごく映画の中で大事だと思っていましたから。

大沢たかお(以下、大沢):普段の自分の仕事に近い感じがしましたね。声だけ演じているのに、こんなにドキドキするんだとか、ハラハラするんだとか、こんな熱くなるんだとか、こんなに離れるのが切ないんだとか、それまでは思わなかったんですよ。そういう気持ちが湧いてきてすごくいとおしい現場でしたね。

宮崎:もちろん絵に合わせなきゃいけないし、セリフの間も決まっているんだけれど、その場での気持ちのやり取りがあるんです。それがあるのとないのとでは全然違いますよね。

大沢:僕も短い期間しか花を愛せないから、短い時間に人の何倍も何倍も愛したいというのはシンプルに思っていたし、それが自分の役目だと思っていました。

Q:その愛情は感じられました?

大沢:足りなかったかな?

宮崎:いえ、十分すぎるぐらいに感じました(笑)。最初に聞いたおおかみおとこさんの声は、4日間の収録の間中、自分の中にある感覚があって。それは完成した映画を観ていても感じたんですけど、彼が出てこなくても花がおおかみおとこさんを思っていることとか、花の後ろにおおかみおとこさんがいる感じがずっとあって、大沢さんの声にいっぱい力をもらって、支えられながら演技した部分が本当にたくさんありました。

■子どもたちに寄り添った花の子育て

Q:子育てをメインにしたという意味でも斬新な作品ですよね。

細田:普通、「おおかみこども」というタイトルであれば、子どもが主人公になりますからね。そうじゃなくて、その子たちを育てる親が主人公というのは、確かに珍しいのかもしれません。でも、子どもを育てている母親ってすごく輝いて見えるんですよね。

大沢:この映画でも、花という女性がすごく魅力的ですよね? 自分がおおかみおとこ(役)だからというのももちろんあると思うんですけど、子どもを育てるという、もしかしたら生物として当たり前のことに、美しさとか強さとか憧れみたいな、細田さんの言うような輝きを感じて、ずーっと見とれていましたね、映画を観ている間中(笑)。別にお化粧してきれいになるとかいうことじゃなくて、人ってもっと素直に輝けるんだなって。

Q:子どもたちのために一生懸命な花の、母親としての姿は本当にすてきでした。

宮崎:わたしにとって、花は花でしかなかったので、特に子育てだからという意識はなく、スムーズに演じることができました。ただ、親としての花はすてきですよね。花の子育てからは、「子どもの人生は、子どものもの。親のものでは絶対にない」というのが伝わってきました。子どもたちのしたいことを、その子の個性を伸ばしてあげられる環境づくりをするのが、親の役割であると思っています。「お母さんはコレになりたかったからコレになって」というのもありなのかもしれないけれど、わたしは花のように子どものことを信じてあげて、雨と雪のように全然違う性格の子どものペースに自分がきちんと寄り添って、その子のサポートをしてあげられるような親になりたいなって思いました。

■身近にある輝きを再発見できる映画

Q:リアルに感じられる自然、生活感あふれる空間を見せる映像の中で、描かれる親子のドラマ。実際に完成した作品をご覧になっていかがでしたか?

宮崎:すごく幸せな気持ちになりました。自分がこの作品に参加できたこともそうですし、最初にお話をいただいて台本を読んだときに、「この映画を観てみたい」という気持ちになったんですよね。観たかった作品を観ることができて、いろいろな意味で幸せになりました。

大沢:僕も、自分が出ている出ていないは関係なく、すごく良いものを観させていただいたなあと思いました。心が洗われるような、自分の中のピュアな気持ちがグッと湧き上がってくるような。自分が出ている作品だと、そう冷静に観ることができないのですが、この作品は、すごく客観的に楽しめて、すごくいい映画だなって。でも、冷静に考えたら、自分もそこに参加していて、すごくありがたいと思いました。

細田:そう言っていただけるとうれしいですね。身近なものの中、身の周りにあって当たり前なものの中に、すごく美しいものや大事なものがいっぱい秘められていると思っているんですよ。そういうのを映画の中で再発見していただけたらいいなって。自分が体験してみたい憧れを映画にしたという感じです。

宮崎:わたしは出産も子育ても体験したことはないですが、花を演じながら子どもたちが自立していくことの幸せ、そして何もしてあげられない寂しさも感じられました。だから、子どもを生んだ経験のない女の人でも男の人でも、いろいろな視点で楽しめる作品だと思うんです。わたしの知り合いの男の人は、子どもの視点で観たという話をしていましたし。この映画に出てくるいろいろな人になって楽しんでもらえる映画だと思います。

大沢:僕も最初は子どもたちが楽しめる映画だと思っていたんですけど、子どもたちはもちろん、宮崎さんがおっしゃるように、これから母親になる人、母親として頑張っている人、それを支えている男の人たちにもきっと何か届くような、いろいろな思いが込められた作品だと思うので、ご家族でもご夫婦でも親子でも子どもたち同士でも劇場に観に行ってもらえたらうれしいですね。

自分の考えを素直に力強く言葉にする宮崎。その言葉にうなずきながら優しく見守りつつ、笑顔で応える大沢。そして、そんな二人のコメントをしっかり受け止めながら、常に考えを巡らせている細田監督。インタビューの現場は、まるでアフレコの現場に立ち会っているかのような、程よい緊張感と温かい空気に包まれていた。そんな三人が生み出した本作は、“全世界待望”の言葉にふさわしいクオリティーの高さと、新鮮な驚きに満ちている。ぜひ劇場で堪能(たんのう)してほしい。

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映画『おおかみこどもの雨と雪』は7月21日より全国東宝系にて公開

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