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宮崎あおい
『天地明察』
ちゃんとした女性になって、やりたいことが明確に見えるといい
『天地明察』宮崎あおい 単独インタビュー

取材・文:前田かおり 写真:吉岡希鼓斗

冲方丁のベストセラー小説を映画化した『天地明察』は、江戸時代に日本独自の暦作りに挑んだ、実在の人物・安井算哲の半生を描いた物語。アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『おくりびと』の滝田洋二郎監督が手掛けるとあって、原作、映画ファンのみならず注目されている。そんな話題作で、岡田准一演じる主人公・算哲の妻えんを演じた宮崎あおいが、夢を諦めない夫を支えるえんの女性としての魅力や、滝田監督との現場でのエピソードを語った。(※「崎」は正式には旧字。「大」が「立」になります)

■宮崎あおいも役柄のように、頑固!?

Q:まず脚本を読まれたときの印象はどうでした?

初め読んだときはちょっと難しかったですね(笑)。星のことは詳しくないですし、算数も苦手なので文字で読むと、わかりにくくて(笑)。でも、えんという女性にとても惹(ひ)かれました。裏表がないというか、すごくさっぱりした気持ちのいい人だと思いました。

Q:江戸時代には、珍しいタイプですよね。

そうですね。ただ、何故か、わたしはそういう女性をやらせていただくことが多いんです。「篤姫」もそうですけど、女性が自己主張をしない時代に自分の思いをきちんと言える人をやらせていたただくことが多いので、えんさんに親しみを感じました。

Q:自分とつながるところがあるとか?

わたしも結構、頑固なので(笑)。

Q:えんという女性について、どうアプローチしようと思われましたか?

どんな現場でも、自分がどうアプローチしようと事前に考えて現場に入るということはないんです。脚本を読んだときの感覚と、現場に入って他の役者さんとの間で生まれるものの中から自然とキャラクターが出来上がってくるので、自分から何かを用意していくことはないですね。今回は特に、わたしは岡田(准一)くん演じる算哲と佐藤(隆太)くんが演じる兄・村瀬義益の中でえんという女性が作られている……。えんさんが一人でいるシーンで、彼女のキャラクターがわかることもあるけれど、えんさんが他の人と交わることで、えんさんという女性がはっきりしてくる部分がある。少ないシーンの中で、すごくステキな女性として撮っていただいたという思いがありますね。

■滝田監督は、まるで子どものよう!?

Q:数多くの監督たちとお仕事されていると思いますが、その中で滝田監督の印象や演出はいかがでしたか?

わたしは監督の『おくりびと』が好きで、ストーリーはとてもシリアスで重くなってもおかしくない題材なのに、その中にクスッと笑える要素がたくさんある作品を作られた滝田さんはきっとステキな監督さんだと思っていたんです。だから、今回、ご一緒できるのはとてもうれしかったですね。現場で、監督から具体的にこうしてくださいって言われた記憶はあまりないんです。それよりも覚えているのはいつも明るく、楽しそうに映画を作られている方だなと。なんだか少年みたいな方でした。大好きなことが目の前にあってワクワクしている夏休みの男の子みたいな、かわいらしさを持っている方でした。

Q:まるで、算術を解くことや星の観測に夢中になる算哲に似ていますね。

そうですね。映画を作っていると、そういう方々がたくさんいます。監督もそうですし、照明部さんや、撮影部さんだったり……皆さん大人でプロフェッショナルなんですけど、どこか子ども心を忘れていない人たちの集まりみたいな。映画を作ることは大変で、必ずしも大きな見返りがあるわけではないけれど、やっぱり好きだからいいものを作りたいという志を持って集まってくると思うんです。考えてみれば、わたしは子どもの頃から、その仲間に入れることがすごく好きだったし、そんな大人たちを見ることが楽しかった。わたしもそんな一人かもしれないです。

■えんだから算哲が成り立ち、算哲だからえんが成り立つ

Q:宮崎さん自身は、算哲のように自分の好きなことのために寝る間も惜しむほど夢中になる人を描いた話は好きですか?

好きですし、何かに夢中になってしまう気持ちはわかります。そして夢中になれるものがあるということは幸せだなとも思います。それに、算哲のように日本独自の暦を作ろうという夢を持って、何度くじけそうになっても諦めなかった彼のような人がいたおかげで、今わたしたちの生活がスムーズに進んでいるんですよね。

Q:映画では、そんな算哲をえんさんがずっと支え続けるというか、彼の夢のために待ち続けますよね。二人の関係について、どう思いますか?

えんさんだから算哲さんが成り立っているし、算哲さんだからえんさんが成り立っている気がします。えんさんって上手に算哲さんを引っ張っている部分があったり、算哲さんが不安にならないように家をちゃんと守る強さがあったり、自分でいろんなことを判断できる女性だと思うんですよね。もし、「あなたの判断がないと何もできません」という女性だったら、算哲さんも成り立たない気がする。だから、算哲さんにとっても、えんさんにとってもよかったねって(笑)。

■まず考えるのは、「人としてどういるか」

Q:撮影現場で思い出深いエピソードはありますか?

今回、女性キャストがあまりいなかったので、すごく大事にしてもらいました(笑)。わたしが参加したのはずいぶん後半だったので、皆さん撮影も進みリラックスされていたので、すごく入りやすい環境を作っていただいたと思います。それに、岡田くんも佐藤くんも初共演ではなかったので、あまり戸惑うこともありませんでした。監督は初めてでしたが、カメラマンの浜田毅さんはちょうどその年に別の作品でご一緒していて、10年前にも違う作品でご一緒していました。「初めまして」じゃなくて、「またよろしくお願いします」でやれる環境ってありがたいことですし、安心します。

Q:宮崎さんぐらいにキャリアを積んでいても……ですか?

やればやるほど、現場に入るときは不安を感じます。昔の方がかえって軽い気持ちというか、ポンッと現場に入れていた気がします。最近では、自分が無力なんだということを感じるし、自分に対する自信がどんどんなくなっていく。本当に自分だけだったら何もできないと思うんです。メイクしてもらって、いい環境の中に入れてもらえるからこそ、演技ができますけど。人の力によって生かされている。見てもらえるものになっているんだなと思います。年々、その思いは強くなっています。

Q:今後も『北のカナリアたち』『きいろいゾウ』『舟を編む』など話題作への出演が続きますね。女優として、こんなジャンルに挑戦したいとか、何か目標とされていることはありますか?

役者として先のことはよくわからないですね。自分ではどうにもならないことも多いですし、やっぱり必要としてもらえないと何もできない仕事なので。それよりは「人としてどういるか」ということが先に立ちます。役者としては、なるようにしかならないと思っているんです。年齢的に今、いろんな仕事をさせていただく状況があって、それはすごく幸せなことだと思います。でも何よりもまず人としてちゃんとしていないと、何事もうまくいかないと思うので。ちゃんとした女性になって、自分のやりたいことが明確に見えるといいなと思います。

終始、穏やかな笑みを浮かべながら静かに答えた宮崎。だが、時折力強い言葉が、ずしりと響いてくる。まるで、映画の中で事がうまく運ばず、悩み戸惑っていた算哲を支え、時にはその背中を押したえんそのもの。「女優としてどうありたいというより、まずちゃんとした女性になってやりたいことが明確になるといい」と率直に今の思いを語った宮崎がどんなステキな女性になり、今後どう花開かせていくのか、注目したい。

映画『天地明察』は9月15日より全国公開

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