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松坂桃李&樹木希林
『ツナグ』
若手俳優と大女優の不思議な化学反応
映画『ツナグ』松坂桃李&樹木希林 単独インタビュー

取材・文:浅見祥子 写真:吉岡希鼓斗

辻村深月の同名小説を基に、ドラマ「JIN -仁-」の平川雄一朗監督が、自ら脚色も手掛けて映画化した『ツナグ』。主人公・歩美の祖母アイ子は、死者との再会を望む人々の願いをかなえる使者“ツナグ”だった。祖母の仕事を引き継ぐことになる歩美は、他人の人生に深く関わることで成長し、やがて謎めいた両親の死の真相に迫る……。松坂桃李と樹木希林、孫と祖母を演じた二人に聞いた。(原作・辻村深月の「辻」は2点しんにょう)

■46歳差の初共演!

Q:共演前のお互いの印象から教えてください

松坂桃李(以下、松坂):周りから厳しい方だと聞いていたので、ものすごく緊張していました。僕の芝居を見て、「帰る!」なんて言われたらどうしようって。でも実際にお会いしたらその不安は一切なくなりました。それくらい温かく迎えていただいて、何をやっても大丈夫! という感覚があったんです。

樹木希林(以下、樹木):わたしはね、他人に厳しいんですよ。自分には甘いけど。だからそういううわさが飛ぶのね。

Q:うわさなんですね?

樹木:いや事実ですけど(笑)。本当に怒ったりするからみんなビックリしちゃう。でも今回はスケジュールが厳しくてね。特に撮影が始まって最初の数日は大変で、自分のせりふを覚えて段取りしなきゃいけなくて、こちら(松坂)のことを考えている暇がなかったんです。

Q:松坂さん、樹木さんの演技はやっぱりすごかったですか?

樹木:それはないわよ。

松坂:(笑)。本番前にカチっとアイ子になるというより、自然とその雰囲気に入っていらっしゃるのですごいですよね。

樹木:まあ、俳優を50年もやっているからね。

Q:当然ですか?

樹木:そうよ(笑)。わたしはデビューして50年が過ぎたけど、あなた(松坂)は“生後4年”って感じでしょ? これからどのような肉を付け、どんな監督や作品と出会うかで人生が決まるから。わたしはもう、この人(松坂)ぐらいの年には結婚して離婚していたからね。「人生もう終わりかな?」という年だったから。こちら(松坂)は夢も希望もあっていいじゃないですか。10年たって……10年は長いかな。5年たって……ごめんなさいね、そのときにいなかったら。

松坂:いやいや、何をおっしゃるんですか(笑)。

樹木:保証できないな、自分の命は。でも頑張ってね。いい役者になってもらいたいなと思う。

松坂:はい、頑張ります!

■“ツナグ”という存在に息を吹き込む

Q:演じた役柄の印象は?

松坂:歩美はすごく優しい人間だなという印象はありましたが、そこから先は現場でつくっていきました。監督からは「普通の青年でいてくれ」と言われましたね。

樹木:アイ子も普通のおばさんだったでしょ。あれをいかにも死んだ人間とつながるような感じの人にするなら、美輪(明宏)さんにやってもらった方がいい。

松坂:なるほど(笑)。リアルな世界観にするためにも、“ツナグ”という使者は普通であるほどいいんですよね。

Q:するとお二人のシーンが重要になりますよね?

樹木:そうね、なんでもない日常がちゃんとないと。それで何かの拍子に、「(死んだ人と)会ったの?」と話すような感じにならないとつまらないと思ったのね。いかにもっていう芝居はやらないようにしようって。

Q:孫と祖母の雰囲気を出すために、カメラの外でもコミュニケーションを取られましたか?

松坂:二人で台本の読み合わせはやりましたよね?

樹木:そうだったっけね。まあわたしは自分のセリフを覚えるためにやっただけですけど(笑)。

松坂:僕自身も本番前に確認できて助かりました(笑)。そこで新しいアイデアが生まれたこともありましたし。

樹木:わたしなんかはやっぱり稽古がたくさんあった方がいい。何度も同じ段取りをするんじゃなく、「もっと違うやり方ができないか?」と感性をぶつけ合う場があった方が。なかなか難しいですけどね。

■実際に“ツナグ”になってみたい?

Q:生者と死者をつなぐ使者“ツナグ”にはどんな資質が必要だと思いますか?

樹木:実際にアイ子のような人はいないのよ。目に見えないものと感応する人たちは存在しても、だいたい商売になっちゃっているから。アイ子の場合は先祖代々の役目として受け継いでいて、職業でないというのがすごくいい。資質……それはやっぱり情というか、人間が好きでないと。そもそも人に無関心だったら、そうしたことをする必要はないんだから。

松坂:“ツナグ”ってある種、人の人生を背負う面がありますよね。そう考えると、並みの精神力ではできないだろうなと思います。もしそういう力を引き継ぐ話があっても僕にはたぶんできません。

樹木:わたしはやりたい。役者をやっているなら、いろんな世界を見てみたいもの。それに、その人が不幸になろうが幸せになろうが、「それは自分で引き受けなさいよ!」くらいの突き放し方をしますしね。無料でそこまで責任を負えませんよ(笑)。

Q:もし“ツナグ”が存在するとして、会わせてほしい人はいますか?

松坂:宮本武蔵に会いたいです。その存在というより、雰囲気を見てみたい。いつか演じてみたいんです。武士としてというより人間として悩みながら生き抜いた印象があって、何か強いものを感じてそそられるんです。

樹木:そんなに好きなら、吉川英治の「宮本武蔵」を読んだほうがいいわよ。わたしは読んでいないけど(笑)。

Q:樹木さんが会ってみたいのは?

樹木:わたしはいないの。普段は日常を生きているから、過去に思いをはせるとかそういうファンタジックなところはないの。

Q:“ツナグ”に依頼する人は、取り返しのつかない思いを抱えた人ですよね? そういった……。

樹木:そういうのはもっとない!

Q:あったらどうするんですか?

樹木:目をつむって、忘れたふりをする! そのうち忘れるものなのよ。年を取って、認知症になったりするのは幸せなことですよ。そんなの、いちいち覚えていたら気が狂っちゃう。神様はうまいようにつくっているわよね。いいのよ、忘れて。わたしなんか最近、「夫の顔ってどういうのだっけな?」とか思って(笑)。

■観ると、誰かとつながりたくなる映画

Q:完成した映画はいかがでしたか?

松坂:エンドロールで自分の名前が上がってきたのを見て、すごくうれしかったです。『ツナグ』という作品でこれだけたくさんの方と共演できたし、監督とも密に時間を過ごせた。自分の名前を見たとき、その証を目にした気がしてグッときたんです。

樹木:わたしなんか、自分の名前がエンドロールのどこに出ていたか全然覚えていないわ。

Q:どんな感想を持ちましたか?

松坂:これからはなるべく親に連絡しようと思いました。それまでは電話をしても、ちょっと邪険にしていた部分があったので。20代前半ってそういうところがあると思うんです。

樹木:そっけないのね。

松坂:そうなんです。でもこれからは「ちゃんと気持ちを表そう。そういうことは大事だな」と思えました。電話を切ったら、そのあとに相手がいなくなってしまうこともあるんだよなって。そんなふうに死を実感できるのはとても大事なことだと思うんです。

樹木:素直でいいわねえ。

予想通りというか何というか、写真撮影からインタビューまで現場は終始、樹木がリード。カメラマンが「見つめ合ってください」と言っても、「あら、孫とおばあちゃんは見つめ合ったりしないわよ」と松坂にカメラ目線を指示し、自分はいとおしそうにその背中に寄り添うポーズを作り、「おばあちゃんってこういう感じでしょう?」。インタビューでも緊張感は皆無で、樹木のおとぼけや奥深い話に笑ったり聞き入ったり、あっという間に時間が過ぎてしまった。まさに旬を迎えこれからのエネルギーにあふれた若手俳優と、大女優の貫禄。不思議な化学反応だった。

(C) 2012 「ツナグ」製作委員会

映画『ツナグ』は10月6日より全国公開

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