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北野武監督&加瀬亮
『アウトレイジ ビヨンド』
心の底にある欲望を見せずに、野望に向かっていく
映画『アウトレイジ ビヨンド』北野武監督&加瀬亮 単独インタビュー

取材・文:編集部 森田真帆 写真:奥山智明

北野武監督が巨大暴力団組織の内部抗争を強烈なバイオレンスで描いて大ヒットを記録した『アウトレイジ』の続編『アウトレイジ ビヨンド』。警察、関西の暴力団組織をも巻き込んだ、血で血を洗う骨肉の一大抗争を、前作からの三浦友和、加瀬亮、小日向文世、中野英雄に、西田敏行、松重豊、高橋克典、桐谷健太、新井浩文ら新キャストを加えた豪華俳優陣で描く。前作に続き、現代風なインテリヤクザの石原を演じる加瀬と、監督・脚本・編集を手掛け、主人公・大友を演じた北野監督が、撮影を振り返った。

■続編のアイデアは、前作の撮影途中に生まれていた!

Q:前作『アウトレイジ』を作っていたときから、続編の構想はあったのでしょうか?

北野武監督(以下、北野監督):続編の話はなかったんだけど、途中で「これは続編作れそうだな」とは思ったね。だから撮影の最後の方から少しは続編を意識して撮ったところもあるかもしれない。

Q:加瀬さんは、続編が作られるということを意識されていたんですか?

加瀬亮(以下、加瀬):全然知らなかったです。正直、前作では自分がヤクザを演じるということ自体、まったく想像ができていなかったんです。それを監督や衣装部さん、メイクさんはじめ、スタッフ総動員で助けていただき、なんとかヤクザになれた感じでした。なので、さらに続編が作られるって聞いたときは、驚きと不安でいっぱいになっていました。

Q:加瀬さんが演じられた石原は、一気に出世して、山王会の若頭にまで上り詰めていますね。

北野監督:『アウトレイジ』のときは、深作欣二作品ともVシネマとも違う何かを作りたいと思っていて。ちょっとヨーロッパ調にしたいと考えると、インテリで金融やなんかに強い若いヤクザが欲しかった。金に強いってことでかわいがられて、金の威力だけで若頭にまで上り詰めていくんだけど、古いヤクザからは疎んじられてしまうっていう。「こっちは体張って組をでかくしたのに、あいつは金だけでのし上がりやがった」と裏で同じ組のやつらにも文句言われちゃう。中尾彬さんが演じる富田には、さんざん悪口言われちゃってね(笑)。

加瀬:台本を受け取ったときは、石原の豹変(ひょうへん)ぶりにびっくりしました。セリフも前作に比べるとすごく多くて、怒鳴り散らしていることも多かったので。前作から5年の間に、一体どんなことが石原にあったのかということを考えて「石原はきっとヤクザの若頭の器ではなかった」と思うことを、出発点にしました。大友が出所してからは、前回裏切った後ろめたさもあって、どんどん追い詰められていく感じでしたね。

北野監督:今回セリフは、かなり増やしたからね。『アウトレイジ ビヨンド』ではなるべく暴力描写を減らして、セリフを多くしようと思ったの。前回のカンヌ国際映画祭で褒めてくれた方は「暴力シーンがすごかった」とか、暴力の話題ばっかりで内容についてあまり触れなかったんだよ。ストーリーとしても面白かったんだけどな……と思って。関西と関東の抗争に、汚い動き方をする警察とか、ヤクザ同士の裏切りとか、ストーリーもさらに面白くしてサスペンス的な要素も盛り込んだんだよね。今回は、役者の芝居やストーリーをちゃんと評価されたいと思って作ったんだよ。

■怒号飛び交う「関東VS関西」のシーンは、編集でテンポアップ!

Q:監督からの演技指導はどれくらいあったんですか?

北野監督:みんな本当に役をつくってきていて、「抑えてください」ってお願いするくらいつくりすぎで(笑)。みんな間を持たせてセリフを話すから、加瀬くんにも「もっと速くしゃべっていいよ」って言ったよね。関西と関東の怒号のシーンなんて、もっと漫才みたいにやってほしかったんだけど、やっぱりキャリアのある役者さんはクセもあるから、一人ずつ撮って編集でジャンジャン切ってものすごくスピード上げたんだよ。

加瀬:僕は撮影の初日に、監督からそのアドバイスをいただいて。そのときに、自分がいかに違うことをやっていたのかってことに気が付きまして(笑)。そこから修正していきました。

Q:加瀬さんもそうですが、新キャストの西田敏行さん、塩見三省さんをはじめ、普段は優しい役柄の多い役者さんが悪人を演じているのはとても新鮮でした。

北野監督:悪役を演じる人って、意外に普段はものすごく優しい人が多いの。役者って相反するものをいつも持っているから、結局いい人役ばかりやっている人は、悪いやつを演じたくてしょうがないんだよ。西田さんなんて、R指定をとにかくやりたいって言うんだよ。俺のところにきて「やらしてやらして」って頼んでくるから、「一番嫌な役だよ」と言ったんだけど「もうやらして!」って(笑)。塩見さんも優しい役しかやったことないらしいんだけど、どの役者もみんなうまいから、結局できちゃう。すごく新鮮だと思うよ。

加瀬:僕も西田さんと同じで、「ヤクザ役って楽しそうだな」と思っていたんですが、実際に演じてみるとものすごく難しくて……。先輩たちの怒号を聞いたときに、「自分はちゃんと怒鳴れていないな」って反省することばかりでした。僕は本当に普段は大きな声をまったく出さないので、事前に大きな声を出す練習をしておかないと出ないんです(笑)。

北野監督:石原ってさ、経済ヤクザとしてのし上がってきたから全然腕力ないんだよ。頭の悪いヤクザをボコボコ殴っているんだけど、そいつは体を張ってきているから仕方なく殴られてやっているだけで。石原はテンション上がっちゃってハアハア言っちゃってるんだけど、パンチは全然効いてない(笑)。「カシラ、やめてください!」って取り押さえられるのも簡単でね。そういうのがすごくよく出ていたよね。

加瀬:そう言っていただけると、本当にうれしいです。

■二人が考える、『アウトレイジ』的な男のかっこよさ

Q:今回もバカヤローの応酬は、半端じゃない量でした!

北野監督:うちの近所の友達なんかと話すときは、言葉と言葉のつなぎ目みたいな役割なんだよ。よく英語で「ユー、ノウ?」って入れるでしょ? あれと一緒。「なんだバカヤロー」「元気かよバカヤロー」「おごってやるよバカヤロー」って、とにかくバカヤローが付くわけ(笑)。だから接続詞みたいなもんなんだよ。

加瀬:僕は普段バカヤローとか、全然言わないので、すごく苦労しました。だから今日監督が話していることは全部、撮影の前に聞いておきたかったですね(笑)。

Q:男性として本作に登場する男たちを見ると、どんなところにかっこよさを感じますか?

北野監督:もしこの映画を人間じゃなく、獣の世界として当てはめると「全員悪人」じゃなくて「全員素晴らしい人」になると思うんだよね。自分が生きるために、どうやって生き抜いていくかっていうことを一番に考えているから。世界中の食べ物がなくなってしまったときは、この映画の登場人物が勝つと思う。男はさ、本質的な欲望を心の底に持ちながら、それを見せずに自分の野望に向かっていくのがかっこいいと思うね。

加瀬:僕は新井浩文さんと桐谷健太さんが演じる若者二人と中野英雄さん演じる木村との男同士の単純な感じが好きでした。前作は全ての人間関係がドライな印象があったのですが、今回の彼らには温度がある。ああいう思いというのは男らしいし、なんだかいいなと思いました。

劇中の迫力あふれる大友と石原の姿からは、想像できないほど穏やかな北野監督と加瀬。北野監督はもちろんだが、加瀬もまた穏やかさの中に男としての芯の強さを感じる役者の一人だ。キャスト陣を見てみると、芯の通った俳優たちが顔をそろえている。だからこそ、野心あふれる男たちの姿を迫力満点に演じることができるのではないだろうか? 男たちの殺気立った戦いを通して、ハングリーな気持ちをぜひ思い出してみてほしい。

映画『アウトレイジ ビヨンド』は10月6日全国公開

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