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妻夫木聡&浅野忠信
『黄金を抱いて翔べ』
知らない街だからこそ、どっぷりと役に感情移入しやすかった
映画『黄金を抱いて翔べ』妻夫木聡&浅野忠信 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ編集部・森田真帆 写真:吉岡希鼓斗

ベストセラー作家・高村薫が1990年に発表した同名小説を、映画『パッチギ!』シリーズで知られる井筒和幸監督が映画化した『黄金を抱いて翔べ』。大阪の街を舞台に、鉄壁の警備システムに守られた銀行から240億円分の金塊を強奪する計画に挑む男たちの生きざまを、疾走感たっぷりに描くクライムムービーだ。犯罪者相手に闇の世界を歩いてきた主人公の幸田を演じた妻夫木聡と、幸田に金塊強奪計画を持ち掛ける友人の北川役に臨んだ浅野忠信が、大阪で行われた撮影の様子を振り返った。

■対照的な妻夫木と浅野の役づくり

Q:本当に男くさい、ハードボイルドな役柄だったのですが、お二人はいつごろから役づくりをスタートされていたのですか?

妻夫木聡(以下、妻夫木):僕が演じた幸田は、幼少の頃に吹田で育ったという設定だったんです。最初は12月にクランクインと聞いていたので、11月くらいから大阪に一人で行っていました。僕にとっては「教会」という場所がポイントになると考えて、何かが自分の心の中に入ってくればいいなと思いながら、吹田にある教会に通ってはキリストの絵を描いたりしていました。

Q:キリストの絵を描くというのは、意外ですね。

妻夫木:『悪人』のときも『マイ・バック・ページ』でも自分の場所を探しに行ったんですが、カチッとはまる瞬間があるんです。『マイ・バック・ページ』は記者だったから、カメラのシャッターを切っていったり。今回も一応聖書を読んだのですが、そういうことではない気がして、2日間かけてキリストと対峙(たいじ)して彼の絵を描き続けました。幸田は悲観主義な男なので、彼の精神性を追求する日々を過ごしました。

浅野忠信(以下、浅野):僕は最初にまず台本を読み込む方なので、ひたすら読んで北川のキャラクターを考えました。それで思い付いたのが、北川のイメージが赤ということ。僕は衣裳について昔から納得しないときはかなり戦ってきた方なので、今回は最初から「赤に統一したい」などと、どんどんアイデアを出しました。角刈りになったのも実は自分のアイデアで、台本を読むうちに「角刈りでしょ!」となって髪を切ったんです。

■井筒監督の演出は、意外なほどきめ細やか!

Q:井筒監督は、現場ではどのような監督なのですか?

妻夫木:僕の中では、「今のいいね~、このまま本番いっちゃおう!」というような、割と感覚的な監督さんというイメージがあったんです。でも実際は真逆ですごくキメ細やかな演出をされる方だなという印象を受けました。例えば、飲み方についても「いやいや、そんな飲み方しません。もっとガーッと飲んで」とアドバイスしてくださったり、セリフの言い方も一つ一つすごく細かく演出されるんです。その細やかさというのは、とても意外でしたね。

浅野:そうだよね! 本当にその通りで、エキストラでさえ容赦しない。むしろ役者よりもエキストラの方が徹底的に演技指導をされていたりするくらいですからね。

妻夫木:監督は、エキストラにも僕らと同じように接するんです。ボランティアで来てくれていたりするから、いきなり監督に「そんな動きしませんわ!」って演出されて驚いたんじゃないですかね(笑)。エキストラの方へ演技指導している間の、僕らの待ち時間が結構ありましたね。

Q:それは意外ですね。井筒監督は「行けオラ~」という感じで、勢いで行くような、怖いような感じかと思っていました。

浅野:本当に逆なんですよ。例えばアパートの爆破シーンなんて、僕らは「もう、本番行こうよ!」というテンションになっていても、監督は「何とかかんとかは大丈夫か~? 何とかやぞ~。よし!……それで何とかかんとかは~」って細かくずっとしゃべっているんですよ(笑)。それから「やっと行けるぞ!」となって「よし本番や! ここ一発勝負やからな! 失敗できひんぞ!」と言われて、僕らも「よし!」って気合入れたら、また「……それで、何とかなんとかは大丈夫?」となったり……。僕らが「監督行きましょうよ~」ってなるくらい、「本番!」になってからが長いんです(笑)。

妻夫木:そうそう! 本番の声が掛かって、僕らもいよいよというときに「北川さん、ここは……」って来るから、皆で「監督わかってますよ、さっき聞きましたよ!」と突っ込んだりしていましたよね(笑)。

■ディープな大阪ロケを語る!

Q:大阪でのロケはいかがでしたか?

妻夫木:吹田の商店街での撮影は本当に大変でしたね。結局ギャラリーが集まりすぎてしまって、断念せざるを得なかったんですが、ロケをする予定だったお豆腐屋さんが、実際に原作者の高村さんが買っていたゆかりのある場所だったので、とても残念でした。

浅野:大阪は何度か行ったことはありましたが、ディープな場所には行ったことがなかったんです。知らない街だからこそ、どっぷりと役に感情移入しやすかったですね。それに関西の方々は皆本当にフレンドリー。駐車場から僕が突然出て行くシーンの撮影では、本番の声が掛かって、あとは助監督さんのキューサインで出て行くというときなのに、おじさんが、「映画の撮影ですか? お兄さん、名前何ていうの?」と聞いてきますからね(笑)。「あ、映画の撮影です。浅野忠信です」とあいさつしていました。でも、大阪は本当に寒かった。

Q:映画ではかなり暑そうだったので、夏に撮影したのだと思っていました。

妻夫木:映画では夏の設定なんですが、僕らはめちゃくちゃ寒い中撮影していたんです。でも映画を観ると、暑さはもちろん、ムンとするような汗臭さまでもが伝わってきたからすごく驚きましたね。

浅野:チャンミンの最初のシーンも試写で初めて観たんですが、すごい汗だくで「チャンミン暑そうだな~」と素直に思いましたね。でも本当に寒かった! 寒いから白い息が出ないようにって、氷を口の中に含まされるんですが、あれはまったく意味なかったです。

妻夫木:いや、死ぬほど寒かったですもんね。でもその寒さが、本当にスクリーンでは1ミリも伝わらないのがすごい! 完全に夏になっていますよね。

■お互いが語る、男としての生きざまとは?

Q:本作では、男の生きざまが描かれていますが、お互いの役者として、男としての生き様をどう感じますか?

妻夫木:浅野さんは、すごく素直に人生を生きているという印象がありますね。嫌なことは嫌だってはっきり言うし、いいことはいいってはっきり言ってくれる。今の日本人ってどちらかというと、お茶を濁すようなところがあると思うんですが、そういうことを一切しない人なので、そういう生き方は見ていて、すごく格好いいですし、うらやましいと思います。ただあまりにも本音を言ってしまうので、隣にいると「大丈夫かな」とドキドキすることもありますけどね(笑)。

浅野:そういう意味では、妻夫木くんってすごく優しいし、頼りになる人なんです。僕は全然気も利かないんですが、妻夫木くんはちゃんと周りを見て、ケアをする心遣いができる人。僕の方が年上なんですが、「妻夫木くんなら何とかしてくれる」ってどこかで頼っていた部分が結構あるんですよ。それに、妻夫木くんは、「自分の中で納得いかないことがあったら、何が原因かを自分で見つけようと努力してみる」ということを実践している俳優さんだと思います。彼のようにエネルギーのある男がどんどん活躍してくれるのを見るのはとてもうれしくて心強いです。

冬に行われた極寒のロケも、お互いが良い作品を作ろうと一生懸命だったからこそ、撮影を振り返ったときに笑顔で語れるのだろう。 性格も生き方も、役づくりの方法もまったく違う二人だが、役者という仕事に懸ける情熱や愛は同じくらい強い。その情熱は、桐谷健太、溝端淳平、チャンミン、西田敏行という本作のキャストたち全員に共通する。 役者道を突っ走る彼らのムンとするような男くささを、スクリーン越しに感じてほしい。

浅野忠信衣装:ジーンディアデム / www.jeandiadem.com

映画『黄金を抱いて翔べ』は11月3日より全国公開

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