シネマトゥデイ

三池崇史監督、二階堂ふみ、染谷将太、林遣都
『悪の教典』
新たな可能性が広がる「三池組」を実感!
『悪の教典』三池崇史監督、二階堂ふみ、染谷将太、林遣都 単独インタビュー

取材・文:斉藤博昭 写真:吉岡希鼓斗

貴志祐介のベストセラーを映画化した『悪の教典』は、サイコパス(反社会性人格障害)の高校教師が、生徒たちに仕掛ける残虐な凶行を描いたセンセーショナルな一作だ。監督は、バイオレンス描写に定評のある三池崇史。教師に狙われる生徒を熱演するキャストにも注目の面々が集まった本作。二階堂ふみ、染谷将太、林遣都という若手演技派が、三池監督の下、どんな自分を発見したのか。監督と三人が、撮影の舞台裏を語り合った。

■監督の笑顔も怖かった!? ライブ感のある現場

Q:過激なバイオレンスシーンも満載の『悪の教典』ですが、現場ではどんな指示や、やり取りがあったのでしょうか。

三池崇史監督(以下、監督):僕は基本的に役者に委ねるんだけど、もともとみんな想像以上の能力を持っていたので、その力を引き出せるのか、逆にプレッシャーだったね。現場を仕切る側として、彼らに何を投げ掛けられるのかを考えていた。特にこの三人には、特別な才能があると感じたよ。

Q:演じる側として、監督から何を引き出されましたか?

染谷将太(以下、染谷):何かを引き出されたとかいう以前に、監督のこだわりに驚きました。僕の場合、ガムテープですね(笑)。テープでグルグル巻きにされるシーンがあるのですが、(自分の体を指で示して)こっちからこの方向へとか、テープの巻き方まで細かく監督が指導していましたよね。

監督:(染谷が演じる)早水は、教師の蓮実から必要以上に攻撃されるキャラクターだからね。どれだけぶざまに見せるかが大事だったんだよ。

染谷:脚本に書かれた指示を覚えて臨んだのですが、ガムテープで巻かれた状態になると、全部頭からとんじゃいました。でもその状態が面白いと開き直ったから、変な間が空いたり、(蓮実役の)伊藤英明さんがいきなり鼻をつまんできたりと、逆にライブ感が生まれたんだと思います。

Q:二階堂さんはいかがでしょう。

二階堂ふみ(以下、二階堂):監督は基本的な説明しかしなかったですね。ただ、現場は怖かったです。映画なのに、「本当に殺されるかも」なんて感じて、震えている女の子もいました。そういう状況でも、監督は笑顔でキャンディーをなめながらモニターを眺めたりして……(笑)。あの笑顔でさらに恐怖が増したんですけど、あれは狙いだったのですか?

監督:いや、そういうわけじゃなくて、映画はコマ切れに撮るわけだから、翌日へのテンションを保つためにも、スタッフ側としては、撮影を楽しんでいる雰囲気を心掛けているんだよ。今回は初めて映画に出る人も多かったので、それぞれ死ぬシーンで、生きている証としてのパワーがさく裂するように演じてもらった。僕自身も、初めて参加した撮影現場での新鮮な気持ちを思い出したね。

■スネ毛をそって、衝撃のラブシーンに挑む!

Q:それぞれの見せ場ということで、林さんは男性との衝撃的なラブシーンもありましたね。

林遣都(以下、林):現場での監督はジョークも多いので、実際にどこまで本気なのかわからなかったんです。あのシーンでも「今からこんなことされるんだよ」と説明されたけど、絶対にジョークだと思っていました。実際にやったときは、ちょっと驚きましたね(笑)。でもそれが三池組のやり方で、演じる側は可能性が広がるんです。

監督:脱いだら、スネ毛がなかったよね?

林:そりました。何が起こるかわからないので、脱いだときのために……(笑)。

監督:「どこまでそっているのか見ようじゃないか」と、過激になったのかも(笑)。

林:脇毛は中途半端にカットしていたところ、結構大胆なポーズも要求されたので、「もう一回、そってきます」と時間をもらいました(笑)。それも含めて、三池監督の現場は、自分の存在価値を試される感じです。気が抜けない危機感がありつつ、やっちゃいけないことがないので、楽しかったです。

Q:蓮実を演じた伊藤英明さんと生徒役のキャストは、どんな距離を保っていたのでしょう。

監督:こういう設定だと、現場で無理に引き離して、対決するシーンで初めて会わせたりする方法もあるかもしれないが、それは演出する側の自己満足でしょう。演じる側は、みんなプロなんですから。ただ、現場での「もどかしさ」は、いい演技につながるので、そのもどかしさを作るのは得意ですね。

Q:監督はそう言っていますが、実際に現場での伊藤さんの雰囲気は?

染谷:存在自体が怖かったですね。先入観もあるんでしょうか。現場で「おはよう!」と言われただけで、ハッと背筋が伸びる感じでした(笑)。

二階堂:役の関係もあるのですが、撮影中も伊藤さんとわたしは微妙な距離を保っていて、その距離がスクリーンに出ていてよかった気がします。

林:威圧感がスゴかったです。お話しされるときも、頭をフル回転していないとついていけないときもありましたし、ボソボソ答えると怒られました。

染谷:やばい。オレ、いつもボソボソしゃべってた(笑)。

林:襲われるシーンなんて、本当に殺されるかと思ったんです。刺さったように見える先が折れたナイフを使うのですが、伊藤さんが僕の首にすごく強い力で押し付けてきた。でもその強さのおかげで、変な汗が出てきたし、本気でおびえている演技ができたと思います。

Q:そのあたりは監督から伊藤さんへの特別な演出があったのでしょうか。

監督:最初はサイコパスの役として試行錯誤もあり、裏表のある演技や、邪悪な表情を試したけど、結局、フラットな感じで演じてもらいました。でも伊藤英明が本番中に見ているのは、相手となる生徒の芝居なんですよ。「あいつらスゴいですね!」と、わざわざ僕に言いに来たりする。テンションを上げて役に没頭している中で、もう一人の自分が客観的に演技を見ているんでしょうね。

■それぞれが気付いた「悪」に対する思いとは?

Q:この『悪の教典』は、一見、穏やかに見える人間の隠された「悪」の心を描いていますが、皆さんも本作に参加して、眠っていた悪の心が揺り起こされたりしましたか。

監督:誰でも周りを不快にさせないためには、何らかの魂胆があったりする。自分がよく見られたいとか、居やすい場所を作りたいとか思うわけで、そういう意味では邪悪じゃない人なんていないはず。染谷くんなんかは、悪の心が目覚めっぱなしでしょう(笑)?

染谷:いやいや、そんなことは……。この現場に限って言えば、何でも自由にやれる場を用意してもらったので。いろいろイタズラをしたいという「悪の心」が目覚めたくらいです。でも実際には大してできなかったので、その程度の邪悪さですが(笑)。

二階堂:わたしは『悪の教典』の後に、『脳男』という作品で初めてダークな役を演じるのが決まっていたんです。『悪の教典』の現場にいながら、次の作品のために減量していましたし、ここで悪の存在におびえている自分が、次の作品では悪になるのが不思議な感覚でした。でも、悪役の伊藤さんと間近で接して、なんで人間ってこんなに悪にときめくんだろうと感じましたね。

林:(演じる前島が関係を持つ)久米先生とのシーンでは女性の気持ちになろうとしたんですが、自分が弱みを持っているとき、たくましくて魅力的な人が近づいてきたら、ふっと心を許してしまうと考えたんです。でもそれって、僕が心の奥底で女性をそういう目で見ていたってことですよね。女性の気持ちになったことで、男の邪悪さを後から気付いた感じです。ちょっと反省しました(笑)。

伸び盛りの俳優たちに、三池監督がどんな特別な演出を与えたのか、非常に気になったのだが、若い彼らを信頼し切って自由に演じさせたことがインタビューから伝わってきた。通常、監督と若いキャストの座談会の場合、キャストが緊張することも多いのだが、今回は「何でも言える」空気が漂っており、これこそ三池組の現場そのままなのだろう。「起用した俳優を信じ切る」という三池監督の姿勢と、それに存分に応えたキャストの思いが、究極のポイントで化学反応を起こし、『悪の教典』は完成したのだ。

(C) 2012「悪の教典」製作委員会

映画『悪の教典』は11月10日より全国東宝系にて公開/「悪の教典 -序章-」はBeeTVにて10月15日より毎週月曜日更新(1話30分全4話)

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