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今週のクローズアップ クリント・イーストウッド 俳優としての名作選

 『グラン・トリノ』の後、実質的な俳優引退を宣言していたクリント・イーストウッドが、『人生の特等席』で4年ぶりの俳優復帰を果たす。今週のクローズアップでは、そんなイーストウッドが出演した数々の作品の中から、誰もが認める「俳優としての名作選」を最新作と共にご紹介。イーストウッドのどこがそんなにいいのか? 改めてその魅力に迫ります!

1980年代以前 西部劇のスターからアクションスターへ

『荒野の用心棒』
(1964年製作)【主演】


 テレビドラマ「ローハイド」でブレイクした後、イタリアに渡って製作された西部劇で、イーストウッド初の主演作にして代表作の一つ。のちに黒澤明の『用心棒』を無断でリメイクしたとして問題になるが、各国でヒットを記録し、イーストウッドは一躍スターの仲間入りを果たす。本作でメガホンを取ったセルジオ・レオーネ監督とは『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』でもタッグを組み、どれも作品としての評価は高いが、なんといっても無精ひげを生やし、トレードマークの黒い葉巻をくわえるイーストウッドの姿が男くさくてしびれる。ポンチョをあれほどカッコよく着こなせる男はほかにいないだろう。

 

『荒野の用心棒』
United Artists / Photofest/MediaVast Japan

『ダーティハリー』
(1971年製作)【主演】


 イーストウッド最大の当たり役ともいえるのが、この「ダーティハリー」ことハリー・キャラハン。型破りな刑事を演じた本作のヒットにより、アクション・スターとしての地位を確立し、シリーズは第5作まで作られることとなった。『ダーティハリー』といえば、いちいちシャレたハリーのセリフがとにかくイカす。中でも、弾が残っているかわからない銃を犯人に向け、「Do you feel lucky, punk?(それでも賭けてみるか? クソ野郎)」というセリフは有名。ほかにもシリーズ唯一、イーストウッド自らメガホンを取った『ダーティハリー4』で、カフェの店員を人質に取った強盗に向かって言う「Go ahead. Make my day.(撃ってみろ。望むところだ)」というセリフは、あのレーガン大統領が演説で引用したことでも知られる。

 

『ダーティハリー』
ブルーレイ ¥2,500(税込)
DVD   ¥1,500(税込)
ワーナー・ホーム・ビデオ

『アルカトラズからの脱出』
(1979年製作)【主演】


 『ダーティハリー』のドン・シーゲル監督と再びタッグを組んだサスペンス映画。タイトルにあるアルカトラズは、かつて連邦刑務所として使われたサンフランシスコの島。四方を冷たい海で囲まれ、厳重な警戒を誇るアルカトラズ刑務所からは絶対に脱出不可能といわれ、マフィアの帝王アル・カポネら凶悪犯が多く収監された。イーストウッドが演じるのは、そのアルカトラズからの脱出を図った実在の人物。主人公たちが脱獄を企てる場面では思わずヒヤリとさせられる緊迫感が漂い、シーゲル監督の素晴らしい演出が光る。二人がコンビを組むのはこの作品で最後となってしまうが、イーストウッドは彼から映画製作のノウハウを学び、多大な影響を受けたといわれている。

 

『アルカトラズからの脱出』
DVD発売元:パラマウント ジャパン
価格:1,500円(税込)

1990年代 悲願のオスカー獲得! どこまでも多才な男

『許されざる者』
(1992年製作)【監督・主演】


 映画デビューから37年、悲願のオスカーを獲得することとなった西部劇。イーストウッドは賞金稼ぎのため、かつての仲間と共に再び銃を取る老ガンマンを演じ、自らメガホンを取った。第65回アカデミー賞で作品賞・監督賞を含む4冠に輝いた本作は、イーストウッド最高傑作との呼び声も高く、ファンの間でも人気の高い作品。俳優として主演男優賞にもノミネートされた。共演にはモーガン・フリーマン、ジーン・ハックマンらが名を連ね、冷酷な保安官を演じたハックマンは助演男優賞を受賞している。『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』でスターとなったイーストウッドの原点ともいえる西部劇で、二人の恩師セルジオ・レオーネとドン・シーゲルにエンドロールでささげられているのがなんとも感慨深い。

 

『許されざる者』
ブルーレイ ¥2,500(税込)
DVD   ¥1,500(税込)
ワーナー・ホーム・ビデオ

『ザ・シークレット・サービス』
(1993年製作)【主演】


 大統領暗殺を企てる謎の男と戦うベテランシークレットサービスの活躍を描いたアクション映画。「若いもんには負けてられん!」と言わんばかりに、息を切らしながら戦う姿はまさに監督・俳優としてのイーストウッドそのもの。80歳を超えた今もなお、第一線で活躍する彼の生きざまを表すかのような作品だ。本作では体を張ったアクションはもちろん、意外なピアノの腕前を披露している。実は音楽家としての顔を持つイーストウッドは『ミスティック・リバー』『ミリオンダラー・ベイビー』など数多くの作品で自ら音楽を手掛け、ジョン・キューザック主演の映画『さよなら。いつかわかること』では音楽のみを提供した。まったくどこまでも多才である。

 

『ザ・シークレット・サービス』
BRUCE MC BROOM/COLUMBIA/TRI-STAR/The Kobal Collection/WireImage.com

『パーフェクト ワールド』
(1993年製作)【監督・出演】


 脱獄犯とその人質となった少年に芽生える心の絆を描いたヒューマン・ドラマ。当時『アンタッチャブル』『ボディガード』などで名を上げたケヴィン・コスナーとの共演が話題を呼んだ。イーストウッドが演じるのは、コスナーふんする脱獄犯を追う警察署長という役どころで、珍しく脇役に徹している。父親から虐待を受けたトラウマを抱える脱獄犯ブッチと、父親の顔を知らず厳格な母親のもとで育った少年フィリップ(この子役がまたかわいすぎ!)が、次第に心を通わせていく姿には思わず胸を打たれる。そんな二人を追いながらも、最後には心のどこかでブッチを信じているかのような目で見つめるイーストウッドの表情が印象的だ。

 

『パーフェクト ワールド』
Warner Bros./Photofest/ゲッティ イメージズ

『マディソン郡の橋』
(1995年製作)【監督・主演】


 イーストウッド作品としては珍しい恋愛映画。橋を撮影するためにやってきた写真家ロバートと、そこで偶然出会う農家の主婦フランチェスカ(メリル・ストリープ)の永遠に忘れることのない4日間の恋が描かれる。いつも寡黙でしかめっ面なイーストウッドが本作では満面の笑みを見せ、あの低い声で「これは生涯に一度の確かな愛だ」と甘い言葉をささやく。「そんなイーストウッドは見たくない!」と昔ながらのファンには賛否あったようだが、世界中を旅しながらもどこか孤独なロバートをイーストウッドは繊細に演じてみせた。家族のために思いを秘めたまま生きていくと決めたフランチェスカが、車の窓越しに、雨に濡れながら立つロバートを見つめるシーンは涙なくしては観られない。やはりイーストウッドは何をやっても素晴らしいのだ。

 

『マディソン郡の橋』
Warner Bros./Photofest/MediaVast Japan

2000年以降 いぶし銀の魅力炸裂! 引退宣言からの俳優復帰

『ミリオンダラー・ベイビー』
(2004年製作)【監督・主演・音楽】


 イーストウッドが自身2度目のオスカーを獲得した作品。歴代最年長となる74歳での監督賞を受賞したほか、作品賞、主演女優賞(ヒラリー・スワンク)、助演男優賞(モーガン・フリーマン)と主要4部門を総なめにした。本作では、イーストウッドふんする小さなボクシング・ジムの老トレーナー・フランキーのもとへ弟子にしてほしいとやってくる女性マギーとの親子のような関係が描かれる。試合で首の骨を折り、全身まひの体になってしまったマギーの最後の願いに戸惑いながらも、実の娘のように愛する彼女のために苦渋の決断をするフランキーをイーストウッドは見事に演じた。惜しくも受賞を逃したものの、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた彼の演技はまさに最高の一言。

『ミリオンダラー・ベイビー』
Warner Brothers / Photofest/MediaVast Japan

『グラン・トリノ』
(2008年製作)【監督・主演】


 頑固な老人ウォルトと、隣に住むアジア系移民の家族の友情を描いた感動作。妻に先立たれ孤独に暮らしていたウォルトが、自分の大切な庭で気弱な少年タオにからむ不良グループを追い払ったことから、タオ一家との風変わりな交流が始まる。イーストウッド演じるウォルトはとにかく頑固で口が悪い。アジア系移民のタオには「米食い虫め」と差別的な発言をし、亡くなった妻に頼まれてやってきた牧師には「神学校出たての若造に懺悔(ざんげ)などできん!」と言って追い払う。あまりの口の悪さに思わず笑ってしまうが、それでも憎めないのはイーストウッドだからこそ。エスカレートする不良グループの暴行からタオたちを守るために立ち向かうウォルトの姿はたまらないほどカッコよく、これぞいぶし銀の演技というものだ!

『グラン・トリノ』
Warner Bros. Pictures/Photofest/ゲッティ イメージズ

『人生の特等席』
(2012年製作)【主演】


 『グラン・トリノ』の後、実質的な俳優引退宣言をしていたイーストウッド4年ぶりの俳優復帰作。自身の監督作以外に出演するのは『ザ・シークレット・サービス』以来、実に19年ぶり。そんな本作は、年老いたメジャーリーグのスカウトマンと、わだかまりを感じつつもスカウトに同行することになった娘が徐々にお互いと向き合い、親子の絆を再認識するさまを描いた心温まる作品。『グラン・トリノ』の口は悪いが憎めない愛すべき頑固オヤジっぷりは本作でも健在で、『ザ・シークレット・サービス』のときのように若者に負けじと頑張る姿がなんともイーストウッドらしい。「もう積極的に役は探さない」なんて寂しいことを言わずに、まだまだスクリーンで元気な姿を見せてほしいと改めて思う。

『人生の特等席』
(C) 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 さて、今回は誰もが認める「俳優としての名作選」ということでこの10作品を選んでみたが、ほかにも『アウトロー』『ペイルライダー』『センチメンタル・アドベンチャー』『ブロンコ・ビリー』『スペース カウボーイ』などなど、イーストウッド作品にはまだまだ名作がたくさんある。皆さんもこれを機に見直してみてはいかがだろうか。

『人生の特等席』は11月23日より全国公開

文・構成:シネマトゥデイ編集部 中山雄一朗

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