シネマトゥデイ

伊藤歩&青柳翔&財前直見&甲本雅裕
『渾身 KON-SHIN』
隠岐の島の人ありきで完成した作品
『渾身 KON-SHIN』伊藤歩&青柳翔&財前直見&甲本雅裕 単独インタビュー

取材・文:柴田メグミ 撮影:金井堯子

いにしえより伝わる隠岐古典相撲を題材にした川上健一の小説「渾身」を、『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』の錦織良成監督が映画化。隠岐諸島挙げての協力のもと、豊かな大自然を背景に、血のつながらない家族の誕生と、なくした絆の再生が紡がれてゆく。亡き親友の夫・英明とその娘への愛に戸惑う多美子役の伊藤歩、周囲に支えられて力士・男として成長する英明役の青柳翔、二人を見守りつつ自らも前へ進む決意をする伸江&清一役の財前直見と甲本雅裕が、撮影時のエピソードを明かした。

■未知のことが起こりそうな予感

Q:出演の決め手を教えていただけますか?

甲本雅裕(以下、甲本):いい台本だと思ったこともありますが、錦織監督の作品に関わりたいというのが一番の理由です。今までご一緒した経験から、絶対に面白くなるのはわかっていましたから、参加できなかったら後悔するに違いないと思ったんです。

財前直見(以下、財前):わたしも台本を読ませていただいて、ストーリーの源にある古典相撲に興味を引かれたことと、子どもを通じて島の人たちと家族が一つになる物語に共感して、即座にお受けしました。

伊藤歩(以下、伊藤):原作をまず読ませていただいて、こんな島が本当にあるのかなと興味が湧きました。それから台本を読んだときに、自分の今までの人生に未知のことが起こりそうな予感がして。古典相撲もそうですが、人と人のつながりが今も当たり前に続く場所に行ってお芝居をしたいなと思ったのが、出演のきっかけです。

Q:青柳さんはオーディションだったんですよね?

青柳翔(以下、青柳):このチャンスをなんとしてもつかみたいと思い、無心で臨みました。

■小さかったはずの役が、甲本がやるとメインの役に!?

Q:青柳さんは、甲本さんのお芝居に対する姿勢が勉強になったそうですね?

甲本:僕から学ぶなんて、とんでもないですよ。財前直見がよく知っていますけど、自分のことしか考えていないですから(笑)。

財前:否定はしないけど(笑)。いかに自分が目立つかに一生懸命かな? すごいのは、小さかったはずの役が、甲本さんがやるとメインの役になっている。

伊藤:確かに、そうですね。

甲本:本当は何も勉強していないだろ?

青柳:しています、しています。

Q:財前さんと甲本さんは、恋愛絡みの役で共演するのは初めてですか?

甲本:初めてです。

財前:昔から飲み友達なんですよ。同い年だし、男と女というより同志みたいな感じなんです。

甲本:だから、すごく恥ずかしかった。ただ、財前直見に恋をするなんて、プライベートでは絶対にかなわないことなので、この役を利用して思いっきりほれてみましたけど、まったく通じていないですね。

財前:いや、わたしも恋していましたよ(笑)。

伊藤:現場でお二人と錦織監督のやりとりを見て、とても勉強になりました。

青柳:二人のシーンで、台本に書かれていないセリフに感動しました。1シーン1シーンを大切にして、いいシーンにしたいという気持ちがすごく伝わってきました。

伊藤:甲本さんのお芝居で特に好きなのが、食事の席でお酒を飲むシーンなんです。長谷川初範さんがしゃべっているときに、お酒を注(つ)ぐようにお願いしたり、ライターをいじったり。

財前:間が持たないから、あれやったりこれやったり(笑)?

伊藤:しかも相手が地元のエキストラの方なので、お芝居というより、リアルなリアクションなんです。わたしは甲本さんのそういうところを盗みたいなと思いました。

■2トンの塩と地元の方たちの応援が後押しに

財前:酔っぱらいの演技も、さすがですよ。

甲本:実は酒、飲めないんですよ。逆に粟野(史浩)くんなんて、普段は大酔っぱらいなのに、映画ではすごくりりしかったね。翔くんと粟野くんの対比がやっぱり……。

財前:カッコよかったね。

甲本:体のつくりがまったく違う相手同士の対戦じゃない? そのぶつかり合いときたら、カッコいいよね。基本的にはなんでも肉眼で見るほうがすごいはずなのに、今回はスクリーンならではの迫力で楽しめる。一番の見どころでしょうね。

Q:青柳さんは体が硬かったそうですが、練習を重ねて力士らしくなっていくさまは、そばで見ていて感じられましたか?

甲本:硬いままでしたけど、逆にそこがリアルなんですよ。大相撲とは違う、隠岐の古典相撲だということを考えれば、翔くんも粟野くんもすごくリアルだと僕は思います。

財前:相撲の試合は半分、ドキュメンタリーだよね。映画なんだけど、本気になって戦っているわけだから。

甲本:僕も撮られているということを忘れて、思いっきり塩を投げていましたね。楽しすぎて、軽くトリップしましたよ。

伊藤:あんなに楽しいなら、塩も投げたくなりますよね。

青柳:2トンの塩と地元の方たちの応援に、すごく後押しされました。

甲本:これはなんの説明もいらない映画。観ているうちにリアルな時間が進んでいって、自然と涙が出ちゃうんだ。歩ちゃんとハーちゃん(子役の井上華月)のシーンに、とどめを刺された。恥ずかしいけど、試写室で涙をダーッと流しっぱなしにしちゃったね。拭きたくなかった。

伊藤:……(目が潤む)。

■黒澤映画の三船敏郎!?

Q:多美子と英明の関係にやきもきさせられながら、応援せずにはいられない気持ちでした。

伊藤:わたしは複雑でした。財前さんにも相談しましたが、英明の前妻は、多美子の親友だったので、すごく悩みました。丁寧にやらないと勘違いされちゃうし、かといってナイーブにやり過ぎるのも違う気がして。英明に恋をするよりも先に、娘の琴世ちゃんを幸せにしたいという気持ちが芽生えていったはずだから。撮影中は、ずっと悩んでいました。

財前:「子どもとのつながりさえできていれば、それを見ているだけで(英明が)ほれるだろうから。余計なことをしなくていいんじゃない」って、言ったんだっけ?

青柳:サバすきを食べているときに、財前さんが「主役の二人の気持ちがブレなければ大丈夫だよ」と言ってくださったんです。

甲本:完全に“アニキ”だったよね(笑)。

Q:サバすきは、隠岐諸島の名物料理ですか?

財前:牛肉の代わりに、サバを入れるんですよ。そして卵を溶いて食べると……。

青柳:すっごくおいしい!

伊藤:隠岐牛もアワビも、本当においしかったですね。お酒もお水も、なんでもおいしいです。

Q:伊藤さんと青柳さんはモントリオール世界映画祭にも参加されましたが、世界の舞台に立ったお気持ちは?

伊藤:出演作が世界的な映画祭に出品されたのもうれしいですが、隠岐諸島の存在を大勢の方に知ってもらえることが、わたしは何よりうれしかったんですね。隠岐諸島の人ありきで完成した作品ですから。島の人たちの愛によって守られている文化が世界に知られたことが、本当にうれしかったです。

Q:青柳さんは映画祭の創始者から「黒澤映画の三船敏郎のようだ」と絶賛されたそうですね。

青柳:(恐縮しながら)すみません……。『渾身 KON-SHIN』は、共演した皆さんや錦織監督に支えられてやり通せた、僕の宝のような作品です。人を思いやる気持ち、支え合うことの大切さを、この映画を通じて感じてもらえたらうれしいですね。僕自身もこの映画をきっかけに、もっともっとステップアップしていきたいと思います。

隠岐古典相撲は、同じ力士同士が2番続けて相撲を取る2番勝負。最初の取り組みは真剣勝負で、後の勝負は先に勝った力士が、勝ちを譲る。この2番目の相撲は、「人情相撲」と呼ばれる。1勝1敗で終わる人情、思いやり。映画『渾身 KON-SHIN』は、そんな古き良き和の心がちりばめられたヒューマンドラマだ。

(C) 2012「渾身」製作委員会

映画『渾身 KON-SHIN』は1月12日より全国公開

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