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高良健吾&吉高由里子
『横道世之介』
5年間の信頼関係があるからぶつかり合える
『横道世之介』高良健吾&吉高由里子 単独インタビュー

取材・文:須永貴子 写真:金井堯子

吉田修一による青春小説を、『南極料理人』『キツツキと雨』の沖田修一監督が映画化した『横道世之介』。主人公の世之介を演じる高良健吾と、世之介と恋に落ちるお嬢様・祥子を演じる吉高由里子は『蛇にピアス』以来、5年ぶりの共演となる。これまで多くの作品で経験を積み、本作で恋人を演じた二人が語り合う「あのころ」と「これから」とは?

■本番前に、打ち合わせや練習をしない

Q:5年ぶりの共演です。振り返って、『蛇にピアス』の頃の自分たちをどう思いますか?

吉高由里子(以下、吉高):よく話すんですけど、とにもかくにも「二人とも暗かったよね」って(笑)。

高良健吾(以下、高良):人として面倒くさいヤツだったと思います。疑問に思うことがあるたびに、いちいち人に突っ掛かっていましたから。今でも疑問に思うポイントは変わらないけれど、それをどういうときに伝えたら自分が気持ちいいのかが、だんだんわかってきた気がします。あのころは常に仕事について考えていましたし、吉高さんともそんな話をしていました。

吉高:ね。高良さんが20歳で、わたしが19歳。自分にはたくさんの可能性があると思い込んでいたから、ネガティブになっても、なんだかんだ生きていたんだと思います。今回『横道世之介』で共演したら、お互いにとてもポジティブになっていて、「現場に来るのが楽しいね」って。今は「あのときのうちら、ホント暗かったよね」って笑い飛ばせるようになりました。この5年間、仕事に対する姿勢はものすごく変わったと思います。中心にいる高良さんが楽しそうだから、現場の雰囲気は春みたいに温かかった。

高良:「現場が好きになった」「仕事が楽しくなった」という変化はあるんですけど、その理由はわからないんです。よくよく考えてみると、芝居や仕事に対する考え方はそんなに変わっていない気もする。例えば、『蛇にピアス』の現場で、蜷川(幸雄)さんから「おまえら二人で練習しとけ。普通は練習しとくもんだよ」って言われたんです。でも、僕らはしなかった。

吉高:しなかった(笑)。

高良:その「練習をしない」という気持ちは、今回も変わりませんでした。僕らはあらかじめ何かを決めてお芝居をするのが好きじゃないなって。それなのに、あるシーンで何かがうまくいかなかったとき、僕がつい「こういうふうにしてみたらいいじゃん」ってアイデアを出しちゃったんです。実際、やってみたらやっぱり好きじゃなくて。

吉高:高良さんから提案してきたのに「うわー! 俺気持ち悪いこと言っちゃった。もう俺、こういうこと言わないから!」って激しく後悔していました(笑)。確かに、高良さんとはいつも素っ裸で現場に立って、落ちている服を拾って着ていくように、そこにあるものに対応していく感じでお芝居をしてきたから、事前に言葉で説明しちゃう自分が気持ち悪いのはわかります。

高良:不安なままやるのがいいなって思うんです。不安だから精いっぱいやる。

吉高:不安で無防備なまんま現場に立てるのも、5年前から知っている信頼感があるからかもしれないですね。

■お互いが語る世之介と祥子の魅力

Q:沖田監督と高良さんは東京国際映画祭の舞台あいさつで「吉高さんはどんな芝居をしても返してくれる」とおっしゃっていました。

吉高:それはお互い様です(笑)。

高良:吉高さんとは、カットがかかるまでお互いに芝居を続けられるんです。

吉高:沖田監督はどんなシーンでもなかなかカットをかけないんですよ。だからわたしたち、たまに目が合ったまま停止することもあります(笑)。

高良:せりふをかんでも芝居をし続けることもありました。そこは映画の現場で育ったからできているのかもしれないです。「監督がカットをかけるまで、自分の芝居を止めちゃダメだ」とたたき込まれたので。

Q:世之介と祥子、それぞれの魅力を教えてください。

高良:祥子ちゃんの魅力は天真爛漫(らんまん)さだと思います。それは吉高さんが演じたことで生まれた魅力だと思うし、そうであるべきだし。吉高さんの独特なテンションが出ていると思います。

吉高:世之介は一貫してズレないんです。相手とのやり取りではズレているんですけど(笑)、世之介は最初から最後まで自分の歩幅で歩いている。人って、相手によって変わるじゃないですか。でも、世之介は変わらない。そこがステキ。(綾野)剛さんが演じる加藤とのシーンで、ゲイが集まる公園に自分がいるとわかった世之介が加藤に「用事が終わるまで待ってる」って言うんです。「えー? 待つの?」って、びっくりしました(笑)。

高良:台本を読んだときに、「大事にしたいなあ」と思う大好きなシーンがあって。ラストのほうで、世之介が祥子ちゃんを見送るシーンなんですけど、二人の会話は最後までちょっとかみ合わない。コミカルな笑いにもっていこうと思えばいけるんだけど、あそこは普通にしゃべりたかったし、それができた。現場にいると、不安になっていろいろなことをしたくなるんですけど、今回は普通を大切にするために、「何もしない勇気」みたいなものを持てた現場だと思います。

吉高:そのシーンのあと、世之介は祥子のトランクを持ってくれるんです。それはいいんだけど、バーッと先のほうを走っていっちゃう(笑)。そういう「ガタガタの真っすぐ感」が世之介なんですよね。

■変わらないこと、大人になるということ

Q:お二人にとって、世之介のような「忘れられない人」「ふと思い出してうれしくなる人」はいますか?

高良&吉高:います。

高良:地元の友達とか。名前は覚えていないんですけど、思い出します。

吉高:小さいころって、変わった人がいっぱいいましたよね。そういう人が周りから「変なヤツ」と指を差されることで、模範とか規範に近付いていってしまうのがもったいない。変な自分を崩さないまま大人になった世之介は、すごく貴重な存在だと思います。

高良:変わらないのって難しいですよね。僕もばくぜんと「大人ってやだなー」「大人になんかなりたくないなあ」って思っていたんですけど、この世界に入ったら面白い人がたくさんいて、「大人も悪いものじゃないかもしれないな」と思うようになりましたし。少しずつ変わっているのかな。

吉高:わたしも大人が嫌いだったし、なりたくなかった。ステキな大人に会って救われることがある一方で、自分が嫌いだった大人になってしまっているかもしれないという葛藤もあります。

高良:あるね。

吉高:昔の自分を裏切ってしまう自分がいます。でも、高良さんは世之介に通じる真っすぐさ、手あかの付いていない感じがあると思います。

■共演するとしたら5年以内を希望

Q:5年分の成長をしたお二人の共演作が、本当にステキな作品に仕上がりました。次に共演するとしたらどうなりそうですか?

吉高:5年後だと30歳になっちゃうから、もうちょっと手前がいいな(笑)。

高良:ガチなぶつかり合いをしたいですね。もう一回『蛇にピアス』みたいな関係の役柄を演じるのも、今はまた違った感じになりそうで面白そう。

吉高:争い合う役柄もいいよね。

高良:バチバチする関係ね。

吉高:本当にむかついちゃいそうだけど(笑)。他の俳優さんの5倍はぶつかる自信があります。それくらい、高良さんには思いっきり感情の球を投げられる。その反応が楽しみ。

高良:それは、楽しそうっすね!

デビューして早々に『蛇にピアス』というヘビーな作品に出演した二人。ネガティブからスタートして5年間、それぞれの場所で経験を積み重ねて成長し、『横道世之介』という温かな作品で再会した。苦楽を共にした二人はまるで戦友のようなきずなと、お互いへの揺るぎない信頼感で結ばれている。『横道世之介』は、沖田監督の魔法の力もあり、世之介という人物が観客の友人のように思えてくる、とても親密な映画に仕上がった。観た人の心の中に、こんなにも鮮やかな色彩を残す映画はそうそうない。

(C) 2013『横道世之介』製作委員会

映画『横道世之介』は2月23日より新宿ピカデリーほかにて全国公開

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