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前田敦子&成宮寛貴
『クロユリ団地』
「ん?」と思ってもらえたら、この映画は成功
『クロユリ団地』前田敦子&成宮寛貴 単独インタビュー

取材・文:小島弥央 写真:金井堯子

『リング』『仄暗い水の底から』などの作品で、一大ホラームーブメントを巻き起こした中田秀夫監督の最新作『クロユリ団地』。日常に潜む孤独と闇が、じわじわと一人の少女の心をむしばんでいく恐怖を描いた本作で、いわくつきの古びた団地に家族で引っ越してきた明日香を演じた前田敦子と、彼女の異変に気付き、相談に乗る遺品整理会社の笹原を演じた成宮寛貴が、ホラー映画ならではの撮影の裏側を明かした。

■中田監督が「あたりまえ体操」!?

Q:ホラー映画界の巨匠、中田秀夫監督の最新作ということで、台本からすでに怖かったのではないかと思うのですが、どう思いましたか?

前田敦子(以下、前田):中田監督と聞いて驚きましたし、ぜひやりたいと思いました。でも、現場に入るまでは怖いんだろうなと思って、ちょっとイヤで……(笑)。中田監督が「ホラー映画は笑いと紙一重だから、笑いが絶えない現場ですよ」と言ってくださって、そこで初めて「あ、大丈夫なんだ!」と思いました。

成宮寛貴(以下、成宮):僕も怖くて(笑)。マネージャーに「怖いよ~!」と脅されて、普段は家で読む脚本も、人がいるところで読んでいましたね。でも、撮影は和気あいあいとしていて、すごく楽しかったんですよ。中田監督って、ちょっとクレイジーですごく面白い方なんです。毎朝、テンションを上げるために「あたりまえ体操」をやってくれるんですけど、朝早いから眠くて、まだみんなそのテンションになっていないんですよね。前田さんはiPadで映画観ているし、俺はマッサージしてもらっているし(笑)。

前田:そうでした(笑)。それぞれが自由にしていましたよね。

Q:監督としての中田監督はいかがでしたか?

前田:自分の世界をすごく持っている方なので、中田監督でしか味わえないものがたくさんあったんだろうなと思います。現場の雰囲気も独特なんですよ。前からやられているみたいなんですけど、「ここは恐怖レベル8ぐらいで」と感情を1から10で表したり。独特ですが、わかりやすかったです。

成宮:俺は、恐怖レベルは言われなかったな(笑)。でもすごく驚いたのは、監督の1カット、1カットへのこだわり。涙を流したり、叫んだりするシーンってそう何回もできないから、普通は本番が一発でOKになるように何回かテストを重ねるんですけど、監督は「もうちょっとできるんじゃないか」って何回も撮るんです。監督が言うには「普通の女優さんはだんだん良くなって、すぐ落ちる。でも、前田さんはずっと上がり続けるからもっと見たいんだよ」ということだったらしいんですけどね。だから撮影がすごく長かったのは、おまえのせいだ(笑)!

前田:長かったですよね! 「またやるの~!?」って(笑)。もう必死でした。

■前田と成宮の不思議な距離感

Q:そんな前田さんを気を使って、成宮さんがチョコレートをあげたとか?

成宮:それはギャグなんですよ(笑)。心理的に追い込まれていく設定だから、彼女はちょっとかわいくないメイクをしているんです。それで本当に具合が悪そうに見えるから、チョコレートをあげるっていう、俺らのネタなんです(笑)。

前田:成宮さんとは一緒にはいたんですけど、おしゃべりする機会があまりなくて。だから、たまに気を使って盛り上げてくださるんですよ。

成宮:あまり仲良くする感じの映画でもなかったから、手の届く距離にいるんだけど、二人とも好きなことをしているんですよ。でも、沈黙が気まずくないって、いいよね。

前田:はい、気まずくなかったですよね。

成宮:特に彼女は、感情が揺れ動くハードなシーンが多かったから、オフのときはぼーっとしていたよね(笑)。

前田:すごく自由でした。ふわ~っとした感じでした(笑)。

成宮:そうそう、その自由さを横で感じていました。すごくフラットな子なんですよね。気付くとそこにいたりして、「あれ? いつ来た!?」みたいな(笑)。でも現場では、みんなのやりたいことをまとめあげるスピードが速いんです。僕は彼女を支えるキャラクターだし、彼女のそのスピードに合わせていけたらと思っていたんですけど、思った以上に速くてすごいなと思いました。

前田:成宮さんこそ、フラットなのに完璧なんですよ。だから、現場の方はもちろん、わたしにとっても安心できる存在でした。

■台本が急きょ変更!?

Q:成宮さんも、最後のほうにハードなシーンがありましたよね。

成宮:実は、あのシーンはいきなり台本が変わって、百八十度違う終わり方になったんですよ。いきなりだったから、僕も彼女もびっくりしました。でも、それが世の中に対する監督の今の気持ちなんじゃないかなと思います。

前田:そうなんですよ。出来上がりがすごく楽しみだなと思いました。

Q:ちなみにホラー映画の撮影現場では、本当に変なことが起こることもあるようですが……。

成宮:俺たちの知るところではなかったよね。でも、どうなんだろう。ぼーっとしていたから、知らない間にあったかもしれない(笑)。もしかしたら、二人の間に何かいたかもしれないし! それはわからないよね。

前田:そうですね(笑)。わたしたちは全然気付かなかったです。でも、音が録(と)れていなかったところがあったそうで、監督は「このデジタルの時代に、こんなことはありえないんだ!」とおっしゃっていました。

成宮:雑音とか……怖いよね(笑)。

■違和感でまとまった映画

Q:お二人が思う、この作品の魅力はどんなところにあると思いますか?

成宮:孤独なとき、人ってもろいと思うんです。映画では、そこに霊が入ってきますけど、僕らの日常でも、何か悪いことやものが入ってくることがあると思うんですよね。知らず知らずのうちに、そういうものに侵されている恐怖というのも、この映画にはあると思います。あと、雰囲気がB級映画っぽいんですけど、それをA級の人たちが全力で作っているところ。そういうジャパニーズホラーを楽しんでもらいたいと思っています。

前田:老人の孤独死というところから物語も始まりますし、誰もが持っている孤独や寂しさというものに気付いてもらえるんじゃないかなと思います。

成宮:あと、監督は意外と編集マンなんだなと思います。実際に撮影していたときの感覚と、出来上がったものが違っていて、かなりマニアックな作りになっていたんですよね。撮影のとき、「よーい、スタート」から一拍置いてセリフを言い始めて、終わるときも一拍あってから「カット」が掛かるんですけど、その「間」も映像に使っているんです。だから、会話に変な違和感があるんですよね。

前田:わかります! 独特の「間」があるんですよね。

成宮:変なんですよ、逆に言うと。それが最初に観たときはイヤだったんですけど、2回目に観たとき「あ、これがこの映画の違和感なんだ」と。だいたい、明日香のお父さんとお母さんも変に若いし……。つまり、この映画は違和感でまとまっているんです。

前田:わたしもまったく同じことを思っていました。だから、そこを「ん?」と思ってもらえたら、この映画は成功なんだと思います。

「苦手」というホラー映画でも、フラットな状態で撮影に臨んでいた様子の前田。そして、感情の起伏が激しい役どころを演じる彼女を、役柄の上でも、役から離れたところでも、さりげなく支えていた様子の成宮。そんな二人の関係はこの日も健在で、インタビューでも成宮が話題を提供して前田のコメントを引き出していた。互いに距離を保ちつつ、でも一緒にいる。沈黙も気まずくないという二人の、ほほ笑ましい不思議な距離感をこの日も感じた気がした。

(C) 2013「クロユリ団地」製作委員会

映画『クロユリ団地』は5月18日より公開

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