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ギレルモ・デル・トロ監督&菊地凛子
『パシフィック・リム』
「いつか一緒に」8年越しの夢が、最高の作品で実現
『パシフィック・リム』ギレルモ・デル・トロ監督&菊地凛子 単独インタビュー

取材・文:斉藤博昭 写真:奥山智明

怪獣やロボット、特撮など日本カルチャーを愛するギレルモ・デル・トロ監督。その思いをたっぷり詰め込んだ話題のSFアクション超大作『パシフィック・リム』で、人型巨大兵器「イェーガー」を操縦する日本人パイロット、森マコを演じたのが、菊地凛子だ。オタク監督として知られているデル・トロ監督のこだわりに、今やアメリカを拠点に活動する菊地はどう応えたのか。二人が、その出会いや撮影現場での秘話、作品への思いを、満ち足りた表情で語り合った。

■ミステリアスな素顔に一目ぼれ!

Q:お二人が初めて会ったのは、菊地さんが映画『バベル』に出演した頃だったそうですね。

菊地凛子(以下、菊地):そうなんです。もう8年前になりますね。『バベル』のプロモーションツアー中に、アレハンドロ(・ゴンサレス・イニャリトゥ監督)の紹介でお会いしました。同じメキシコ人監督だけれど、アレハンドロとデル・トロ監督は全く違ったタイプ。監督はとにかく話していて楽しい人でした。

ギレルモ・デル・トロ監督(以下、デル・トロ監督):『バベル』の凛子を見て、彼女が役に与えたリアリティーに感動した。女性の深い心理をエモーショナルに表現していたからね。そして実際に会うと、さらに感動したんだ。強い意志を持ちながら、同時にガラスのように壊れそうな繊細さもある。そして、それらも彼女の一面で、僕を惑わせるミステリアスな部分も秘めていた。そこが今回のマコ役にぴったりだったのさ。

Q:では『パシフィック・リム』は、二人の思いがようやく実現した作品ということになりますね。

菊地:8年前に「いつか作品に出してください」と伝えましたから(笑)。今回、最初に監督から呼ばれたとき、オーディションだと思って行ったら、いきなりカメラテストを受け、監督が一生懸命、わたしに演出をつけてくれたんです。

デル・トロ監督:マコ役は凛子だと想定して脚本を書き進めていたので、もし彼女に断られたらどうしようかと思った(笑)。マコは、この映画のハートの部分。僕は常に、作品にリアルな感情をもたらすキャラクターを必要としており、さらに一言のセリフや、わずかなシーンでその感情を伝える俳優を求めている。凛子には、僕が短いアドバイスを与えただけで、役に完璧な真実をもたらすテクニックがあったね。

菊地:監督の温かい人柄のおかげなんですよ。パンク精神の持ち主でありながら、俳優を心から信用しているのが態度でわかる。一緒にいるだけで、いろいろ学べる上に、「人を信じる力」をわたしに与えてくれた気がします。

■愛菜ちゃんの天才ぶりに二人も驚がく!?

Q:マコはイェーガー(人類が開発した巨大ロボット)を内部で操縦する役です。操縦シーンは、機材につながれ、背中に50キロもの重みがのしかかってくる過酷な撮影だったそうですが……。

菊地:セット自体も揺れ動くので、真剣に集中しないと生き残れないような感覚でした。実際にわたしの動きがイェーガーに伝わって、(敵の)KAIJUとリアルファイトをする設定ですから……。

デル・トロ監督:僕が「凛子、大丈夫か?」と聞くたびに「Yes、 I am OK.(大丈夫です)」と答えていたよね? でも同じ演技をしていたチャーリー・ハナムやイドリス・エルバを見たら、(倒れ込むポーズをして)こんな感じで「もう限界です」と訴えていた(笑)。男性が女性よりタフだという考えが間違っていると、凛子が証明してくれたよ。

菊地:とにかく必死だったんですよ。「監督はわたしを信じているから、絶対に乗り越えなくちゃいけない。せっかくこの役をもらったんだから」とひたすら考え続けていました。

Q:マコの子ども時代を演じるのが、芦田愛菜さんです。現場での彼女の印象はいかがでしたか?

菊地:とにかく集中力がすごい。無邪気で子どもっぽい表情が、監督の「アクション」の声で、一瞬で別人になるんです。あの集中力は、どこから生まれるんでしょう? 思わず現場で愛菜ちゃんのお母さんに質問してしまいました(笑)。記憶をたぐって演じているわけじゃなく、本当に役になりきってしまうみたいです。

デル・トロ監督:僕も二人の娘を持つ父親だけど、愛菜ちゃんが演技で叫んでるのを見て、心からドキドキしてしまった。そして「カット!」と言ったとたん、素の自分に戻ってしまうんだ。彼女にはカメラを回す前に「心の準備ができたら、手を振って合図して」と頼んだ。そうすると少し時間をかけて集中し、手を振ってくる。でもカットがかかって素に戻るのは一瞬。ものすごい天才だよ。

Q:記者会見では、芦田さんが「監督は、あんみつが好き」なんて言っていましたね。

デル・トロ監督:僕が食べているのを愛菜ちゃんが観察していたみたい。あのときは5分で3個のあんみつを一気に平らげたから、驚いたのかも(笑)。僕はスイーツ好きで、餅にも目がないよ。

■菊地凛子、ロボット愛に目覚める!

Q:デル・トロ監督は「オタク監督」としても有名ですが、現場でもそういう雰囲気なのですか?

菊地:確かにオフィスにはフィギュアがいっぱい並んでいましたが、現場ではものすごい人数のスタッフをまとめ、さらにエキストラの士気を上げるために話し掛けたり、細かい気配りができる人で、その姿に感動しました。

デル・トロ監督:オタクというのは、僕の内面だからね(笑)。モンスター、ロボット、漫画、アニメ、ホラー映画への愛があったから、僕は子ども時代を生きることができた。だからその愛にすぐにアクセスすることができる。同時に、20年もの間、多くの映画を監督してきて、仕事の常識も身に付けてきた。僕はオタクの心を忘れない、社会的人間なんだよ。

菊地:パイロットスーツからわたしの眉に至るまで、完璧なビジュアルの構想がある上に、イェーガーの頭の内部など、後で合成するのではなく、リアルなセットが用意されていました。そこに監督がスタッフやキャストを本気で信じている心が加わるので、本当にスペシャルな現場でしたね。

Q:人類の敵となる「KAIJU」のビジュアルには日本の怪獣へのオマージュも込められていますが、デザインのポイントは?

デル・トロ監督:幼い頃、祖母の家に泊まり、窓越しに深夜の通りを眺めていたことがある。通りを歩く男が、突然、僕を見上げたらどんなに怖いだろうかと想像した。その感覚を取り入れたよ。怪獣は巨大なサイズの割りに目が小さい。高層ビルの高さから小さな目で見つめられると、人間は本当に恐ろしいと感じるはずなんだ。

菊地:怪獣も素晴らしかったですが、わたしはロボット愛に目覚めましたね。この映画のロボットの動きは、過去の映画で観たことがないレベルでしたから。今は、フィギュアやTシャツを集めるのに夢中になっています。

Q:そこまで影響を受けたということは、菊地さんもまたデル・トロ監督の作品に参加したいのでは?

菊地:次のデル・トロ監督の映画に「どんな役でもいいから出してください!」と頼んだんです。でもわたしが演じられる役はなかったみたいで……。

デル・トロ監督:いつか凛子には、スパイムービーで、黒いコスチュームで身を包んだ宝石強盗の役なんかをやってもらいたいな。

菊地:ぜひ作ってください! 監督の映画に出られるなら、他の映画を全部断ってもいいくらいです(笑)!

8年前の出会いをきっかけに、出演を想定して脚本が書かれるなど、ギレルモ・デル・トロ監督と菊地凛子それぞれの念願がかなった『パシフィック・リム』。過酷な撮影も経て、さらに深くなったその絆は、インタビュー中、お互いに向ける信頼のまなざしが証明していた。自分と波長が合う俳優を何度も起用するのがデル・トロ監督の主義でもあるので、いつの日か、菊地が主演する痛快スパイムービーが実現する可能性もあるかもしれない。デル・トロ監督は「日本に移住するのが夢」とも語っており、その映画が日本を舞台に撮られたら……。考えただけで興奮せずにはいられない。

映画『パシフィック・リム』は8月9日より全国公開

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