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エマ・ワトソン
『ノア 約束の舟』
10年後も仕事を続けていられたら、最高
『ノア 約束の舟』エマ・ワトソン 単独インタビュー

取材・文:編集部 福田麗 写真:Chris Pizzello/Invision/AP/アフロ, AP/アフロ

ナタリー・ポートマン主演の『ブラック・スワン』が日本でもスマッシュヒットを記録したダーレン・アロノフスキー監督が次の題材として選んだのは、旧約聖書の「ノアの箱舟」。わずかな挿話を持ち前の想像力で膨らませた『ノア 約束の舟』は、哲学的でありながらエンターテインメント色の強い作品に仕上がった。本作でノアの養女イラを演じたエマ・ワトソンが、本作、そして『ハリー・ポッター』以降のキャリアを語った。

■宗教に関係なく楽しめる映画

Q:「ノアの方舟」のエピソードについてはすでにご存じだったかと思いますが、初めて脚本を読んだ時の感想はいかがでしたか?

ダーレン(・アロノフスキー監督)って、何て想像力豊かな、ビジョンを持った監督なんでしょう! って思ったの。聖書ではほんの2、3ページの短いストーリーなのに、こんなに大きなストーリーにしてしまう。それも水増ししたような薄っぺらい感じではなく、内容の濃いリアルなストーリーになっていて、聖書のスピリットとテーマがきちんと備わった長編に変わっていると感じたわ。

Q:聖書が題材ということで、キリスト教徒の間で物議を醸していますよね。日本をはじめ、キリスト教徒の少ない国では、どのように受け入れられると思いますか?

キリスト教徒も、そうじゃない観客も、同じように楽しめる映画だと思うの。この映画は特定の宗教の教えを伝えようとしているわけではないし、観る人が他の宗教を信仰していたとしても、違和感を覚えるようなストーリーだとは思わない。だから日本の人たちも、特定の宗教にこだわって作られた映画だと思わないでしょう。きっと楽しんでもらえると思うわ。

■ラッセル・クロウとの共演

Q:主演のラッセル・クロウとの共演はいかがでしたか?

ラッセルには役者として最高級の敬意を持っているから、共演できることは感謝すべき栄誉だと思ったわ。彼は共演者にとても親切で、必要ならば喜んで助けを差し出してくれるタイプの俳優なの。彼は最高の演技者の一人だから、共演についてはただただ、すごい体験をさせてもらったと感謝しているわ。

Q:ラッセルとの共演シーンでは、何か特別な準備をしましたか?

ええ。共演シーンはまず、脚本全体を隅から隅まで確かめることからスタートしたわ。ラッセルは準備を完璧に整えるタイプの役者で、せりふの一語一句に関して、まずいところや言いにくいところ、ストーリーの流れにぴったり当てはまっているかを徹底的に調べるの。特に今回の映画は複雑だったので、映画のテーマを正確に伝えることができるがどうかを確かめる必要があった。正義と慈悲のバランス、神がノアに与えた試練、ノアに実行するべきだと下した使命は何なのか? ノアが遂行しようとすることの最終的な決断権は、ノアが持っているのか、それとも神が握っているのか? 観る人がちゃんと理解できるように、複雑なプロットラインを隅から隅まで確かめることに準備の初期段階は費やされたわ。ラッセルとの本読みでは、二人のコミュニケーションがスムーズかを追求したり、動きを入れてのリハーサルをしたり、撮影現場でのリハーサルでもいくつかせりふを変えたり……とにかく複雑なストーリーを伝えるため、リハーサルを徹底的に繰り返したの。

■オーディションで勝ち取ったことに価値がある

Q:あなたは劇中で新境地に挑戦していますね。役づくりは大変ではなかったですか?

確かに、わたしは出産も母親であることも体験していないから(笑)、そのことは大きなチャレンジだったわ。YouTubeで出産関係の映像やドキュメンタリーを見たり、本をたくさん読んだりした。でも、そのおかげで、あらためて自分の中の女性への敬意を発見したの。女だけが持つ能力……妊娠、出産という、一人の人間を産み出すことへの敬意を深く感じたわ。だからわたし個人としても、この役を演じ切ったことで新しい力を与えられて、人間として豊かになったように感じたわ。

Q:この役のためにオーディションを受けたそうですね。あなたほどのスターがオーディションに臨むというのはどういう気持ちがするものなんですか?

この役は本気でやりたいと思っていたから、「絶対にものにするぞ!」ってベストを尽くしたつもり。わたしのキャリアの中でベストのオーディションだったと思う。オーディションは、むしろわたしの可能性を信じてくれているのだというふうに取っているわ。ダーレンは、スターを必要としていなくて、彼がイメージしたイラの役を完璧にできる人を探していただけだから。わたしが今までやってきたのとはかけ離れている役にわたしが選ばれたこと、ダーレンがわたしにはできると信じてくれたことはありがたい。決まった時は、自分の実力で勝ち取ったという気持ちがしたもの。『ハリー・ポッター』で有名だからとオーディションなしで役をもらうより、わたしにとってはずっとうれしいことなの。

■『ハリー・ポッター』を振り返る

Q:この作品はあなたにとって『ハリー・ポッター』完結後、初めての大作ですよね。アプローチなどに違いはありましたか?

わたしがバイオリンやチェロを弾くための弓だとしたら、そこにもう一本の線が加わったという感じかしら。確かにオーディションで勝ち取ったんだけれど、わたしはまだ若いし、経験も浅いし、まだまだ学んでいる段階だから、出演する一本一本から何かを学んで進んでいる……という感じなの。他の監督がこの作品を観たときに「エマはこんなこともできるのか!」と思ってもらえるでしょうから。そういう意味で、見せられる武器が一つ増えたわね。

Q:『ハリー・ポッター』の時は、今のように大人になった女優としての自分を想像していましたか?

『ハリー・ポッター』がスタートした時はほんの子供だったから、自分が大人になったときのことをそれほど深く考えていなかったわ。だから、あの頃のわたしが「どんな女優になりたいと考えていたか」とか「何を期待していたか」とか、そういうことははっきりしないの。ただ、『ハリー・ポッター』を10年やって、その終わりの方では「女優になるだろう」と自分のことを考えていたわ。ただ、わたしが大人の女優になった自分を想像していても、周りがそれを受け入れてくれるかどうかは別問題だった。『ハリー・ポッター』以外のこともできると証明するまでは、「女優になりたい」と言っているだけで仕事がもらえるわけではないとは知っていたわ。

Q:逆に、10年後の自分についてはどういう想像をしていますか?

わたしが尊敬する監督たちと仕事を続けていられたら、最高だと思うわ。作品がヒットしたかしないかは関係なく、価値があると思える作品、やって勉強になると思える仕事を続けられていたらいいなと思う。その時もまだまだ学ぶことがたくさんあって、自分を磨いてくれるようなリッチな体験があるといいわね。それに自分を刺激できて、チャレンジできて、脳みそがシャキっとして、新発見ができて、自分をプッシュできて、ダラダラしていられない。そんな仕事を続けられたらいいなあと思う。

スタイリッシュな着こなしで登場したエマは、どんな質問にも的確なコメントを即座に返し、頭の回転が速いプロフェッショナルというのが第一印象だった。だが、話がやや脇道にそれると、「最近の趣味は料理なのよ」と気さくに応じるなど、24歳の乙女らしい一面を見せた。『ハリー・ポッター』からの“卒業”後初となる大作で新境地を開いたことは、エマ自身にとっても大きな意味があったに違いない。そう思えるインタビューだった。

(C) MMXIII Paramount Pictures Corporation and Regency Entertainment (USA) Inc. All Rights Reserved.

映画『ノア 約束の舟』は6月13日より全国公開

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