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井上真央
『それいけ!アンパンマン りんごぼうやと みんなの願い』
ふるさとへの思いと真のヒーロー像
『それいけ!アンパンマン りんごぼうやとみんなの願い』井上真央 単独インタビュー

取材・文:須永貴子 写真:高野広美

『アンパンマン』シリーズ第26作『それいけ!アンパンマン りんごぼうやとみんなの願い』は、やなせたかしさんが取り組んだ“復興3部作”の最終章だ。第1作は“復興”、第2作は“希望”、そして今回は“望郷と故郷の再建”がテーマ。何者かによって、リンゴが全て毒リンゴにされてしまったアップルランド。ふるさとを元通りにしたいという思いから、魔法の種を探す旅に出るりんごぼうやの声を担当したのは、意外にも声優初挑戦となる井上真央。縁がつないだ出演の経緯や、初めての経験に思うこと、ふるさとへの思いなどを語った。

■「アンパンマンのマーチ」につながれた縁

Q:オファーのきっかけは、井上さんがラジオで「アンパンマンのマーチ」を流したことだそうですね。そもそも、なぜラジオであの曲を流したんですか?

「アンパンマンのマーチ」は小さいころから好きでしたが、大人になってあらためて「すごく深いよね」なんて、友達と話していたんです。大学時代の友達とカラオケに行くときも、みんなで一緒に歌うと、なんだか元気が出るんですよね。震災後、この歌に励まされている方が多いと聞いて、勇気をもらっているのはわたしたちだけじゃないんだなって。震災の年にラジオに出させていただいて、「好きな曲を選んでください」と言われたのでこの歌にしました。

Q:オファーを受けたときの心境は?

声優の経験もないですし、復興3部作を締めくくる作品というプレッシャーもありましたし、正直言うと、本業の声優の方がやられたほうがいいんじゃないかと思いました。でも、頂いた台本を読んでみると、そこに込められたメッセージにグッときてしまったので、純粋に「こんなすてきな作品に関わりたい」と思って、覚悟してお引き受けしました。

Q:どんなメッセージを受け取りましたか?

りんごぼうやは、ヒーローは格好良くて力が強くなきゃ、と思っているんですね。彼がアンパンマンたちと関わりながら、ただ単に悪い人を懲らしめるのではなく、困っている人を助ける優しい人が本当に強い人であり真のヒーローだと気付き、成長していくところに感動しました。

■ふるさとの景色や匂いは今も覚えている

Q:この作品では、“ふるさとは「ただいまー!」と帰る場所”と表現されていますが、井上さんにとってのふるさととはどんな場所ですか?

もちろん生まれ育った横浜もそうですし、自分のルーツである両親が生まれ育った長崎と福岡もふるさとです。今の自分があることに感謝をしたくなる場所、守りたいと思える場所がふるさとなのかなと思います。自分が好きな場所だから、その土地出身の方に会うと、すごく親近感が湧きます。

Q:特に「守りたい」と思う“もの”はありますか? 全部すてきな場所ですね。

ありますね(笑)。わたしが育った横浜は、海も山もあって、都心へのアクセスもよくて、すごくいい環境でした。自然に囲まれて育ったので、周りにいる人たちもおおらかなんですよ。子供のころに見た海の景色や、高台の学校から見下ろす景色、匂いみたいなものは今でも覚えていますし、大切にしたいです。

Q:りんごぼうやは、破壊されてしまったふるさとのアップルランドを元通りにするために、世界一大きな実をつける魔法の種を探しに出ます。一方、仲間たちは地道に頑張ります。やり方が違うだけで、ふるさとを思う気持ちは一緒なんだなと思いました。

そう思います。地元に残る人、頻繁に帰省する人、めったに帰れない人と、人それぞれふるさととの物理的な距離は違っても、ふるさとの力になりたいという気持ちは誰にでもあると思いますし、わたしにもあります。

■自分で自分にプレッシャーをかける

Q:やなせ先生は、引退を考えていた時期に震災が起こったことで、日本を元気にしたいという思いから、復興3部作に取り掛かりました。井上さんは、自分の仕事が誰かのためになったらいいなと思いますか? それとも、作品の中で役割を全うすることに集中していますか?

自分が好きで一生懸命やってきたことが、結果的に誰かに喜んでもらえたり、奮起するきっかけになったりしていることを年々知るようになりました。表現する側には、誰しもに多かれ少なかれ、不安が付きまとうものだと思うんです。だから、そういうリアクションを少しでも知ることができると、それが原動力になってまた頑張れるという感じです。

Q:いいループになっているからこそ、アンパンマン映画のような、国民的な作品にも立ち向かえるんでしょうね。

そうだと思います。あるときから、人に何かを伝える仕事をしている以上、自分で自分にプレッシャーをかけることが必要なのかなと思うようになってきました。だから今回も、やなせ先生の思いを受け継いでいこうとしている方たちがたくさんいる中でのお仕事なんだ、と自分にプレッシャーをかけました。

Q:個人的な感覚ですが、やなせさんは今でも生きているというか、いなくなった感じがしないんです。

そうなんですよね! すごくわかります。アンパンマンの生みの親である、やなせ先生がいらっしゃらないのは残念ですけど、やなせ先生の思いを引き継ぐ人がいて、アンパンマンという作品がある限り、やなせ先生のメッセージは後世にずっと残っていくと思います。やなせ先生の願いは「みんなの願い」。すてきなタイトルですよね。

■ますだおかだ岡田さんの声は記憶になし?

Q:初めての声優という仕事もプレッシャーでしたか?

声優という仕事は、わたしたち役者の仕事とはまた別物なので、興味本位ではとてもできないと思っていたんです。いろいろな方から「難しい」という話も聞いていましたし。でも、ご縁があったら挑戦したいという気持ちもあったので、今回のご縁は「がんばろう」と思えるきっかけになりました。

Q:どのように取り組みましたか?

事前に頂いた映像を観ながら、声を出してせりふを練習しました。普段は台本に書き込みをしませんが、今回は「はあ」とか「んはあ」とか、息遣いを書き込みました。他の人がこの台本を見てもわからないと思います(笑)。アフレコ当日は「戸田恵子さんとご一緒なのかな?」と思っていたら、全てのキャラクターの声が入っている映像を観て、聞いて、最後にわたしの声を入れるというやり方でした。戸田さんにお会いできなかったのは残念ですけど、ご迷惑を掛けずに済んでよかったです(苦笑)。

Q:マジョーラの声を演じたますだおかだ岡田(圭右)さんの声優ぶりはいかがでした?

マジョーラとのシーンはほとんどが戦いのシーンなので、それこそ言葉にならない息遣いなどの表現が本当に難しかったんです。実際に声優の仕事をやってみて、あらためて声優さんの仕事を尊敬しました。というわけで、あまりにも必死だったので、岡田さんの声だということを完全に忘れていました(笑)。

Q:それだけはまっていたということですね(笑)。

そうだと思います(笑)。

子どものころの好きなキャラクターはカレーパンマン。その理由は「アンパンマンと比べたら少しマイナーなので、わたしが好きになってあげないと、誰も好きにならないんじゃないかと思って。あと、単純にカレー好きなので(笑)」。好きなパンで新しいキャラクターを考案してもらったところ、「シナモンロールマン……あ、チョコパンマンもいいですね。夏になるとドロドロに溶けて弱くなっちゃうのが欠点ですけど(笑)。その点、シナモンロールマンは一年を通して安定した力を発揮しそう!」とどんな質問に対して真剣に答えていた井上の真面目さは、本作の役づくりでも十分に生かされているに違いない。

(C) やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV (C)やなせたかし/アンパンマン製作委員会2014

映画『それいけ!アンパンマン りんごぼうやとみんなの願い』は7月5日より全国公開

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