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鈴木亮平&園子温監督
『TOKYO TRIBE』
アメリカ人も真っ青の園子温流ミュージカル
『TOKYO TRIBE』鈴木亮平&園子温監督 単独インタビュー

取材・文:須永貴子 写真:金井尭子

累計250万部超、1990年代のストリートカルチャーから生まれた井上三太の人気漫画「TOKYO TRIBE2」を、『冷たい熱帯魚』『地獄でなぜ悪い』の園子温監督が映画化。近未来のトーキョーの各街を仕切るトライブ(族)の抗争を描く本作で、ブクロWU-RONZのボス・メラを演じるのは、NHK連続テレビ小説「花子とアン」で人気沸騰の鈴木亮平。全編ラップでセリフを奏でたこの斬新なラップ・ミュージカルについて、園監督と鈴木がアツい思いを語った。

■鈴木亮平、アメリカでのヒップホップ体験を語る

Q:ラップ・ミュージカルが誕生した経緯は?

園子温監督(以下、監督):原作は完結していたし、全12巻というなかなかの長編。それを今、どう実写化すべきかというところでかなり悩みました。そんな矢先、「本物のラッパーに出演してもらったらどうだろう?」と日本で活躍する現役のラッパーたちと会いまくっていく中で、セリフを全部ラップにしてミュージカルにすることを思い付いてからは悩むことはなかったです。

Q:もともとヒップホップはお好きでしたか?

監督:全く知らなかったです。疎かった。やっていく中で知って、好きになっていった感じかな。

鈴木亮平(以下、鈴木):僕は大好きです。1990年代後半、アメリカに留学していたときに聴き始めて、それから20代前半まではずっと向こうのヒップホップばっかり聴いていました。

監督:どこに留学していたんだっけ?

鈴木:オクラホマ州です。白人の方とそして牛ばっかりで、カントリーミュージックしか聴かないんですよ。田舎ならではの閉塞感の中で、マイノリティーとして「負けるものか」という思いがあったから、ヒップホップがすごくフィットしたんですよね。

Q:俳優としてラップを表現するという体験はいかがでしたか?

鈴木:SIMON(サイモン)という第一線で活動しているラッパーの指導を受けながら挑戦したのですが、監督からは最初に「プロモーションビデオにしたくない」と言われました。ラッパーのマネをする格好いいラップじゃなくて、今まで誰もやったことがない、役者がセリフとして発するラップを自分なりに突き詰めていった感じです。その作業が楽しかったですね。

■録音の仕方は「レ・ミゼ」方式!?

Q:ラップのセリフはどのように作ったのでしょう?

監督:僕が脚本に書いた内容を基に、そのパートを歌うラッパー本人がリリックを考えました。それが役者の場合は、役者にラップ指導するラッパーと役者が相談しながら書いています。ラップとミュージカルって相性がいいんですよ。普通のミュージカルは突然朗々と歌いだして非日常感が生まれるけれど、ラップはスッと日常の中に入っていける。ラップはもともと会話的な表現だから、自分一人の世界に陶酔している感が出ないのがいい。

鈴木:今回、録音の仕方は『レ・ミゼラブル』方式なんですよ。ミュージカル映画は普通、まず歌を録(と)ってから、それに合わせて口パクで演技をするんですけど、今回はリズムをイヤーモニターで聴きながら演技とラップをしました。

監督:海(YOUNG DAIS)とのラップ合戦のシーンに感動したんだよね。ダビングのときも、バックで流れる音楽とメラの声のバランスにめちゃくちゃこだわったから時間がかかった。

鈴木:裸だからマイクを着けられないので、音声さんがガンマイクで追ってくれたんです。しかもアクションもしていたから、エンジニアさんは整音に苦労されたと思います。

監督:後日スタジオで録ってみたけど、やっぱり現場の迫力にはかなわなかったので、メラのラップは全部同録の音を使っています。

鈴木:僕的には、スタジオで録った完成度の高いラップを使ってもらえるぞと思って初号を観たら、「あれ!?」って(笑)。でも、そのことによって何だかよくわからないエネルギーが存分に伝わってきました。

■園子温が頂点のオーガニックピラミッド

Q:これだけ大人数の役者やラッパーを統率するには、大変なエネルギーが必要だったんじゃないですか?

監督:統率はそんなにしていないですよ。昔は厳しく演出した時期もあったけど、最近はいい素材をそのまま皿に盛って、「食べてください」というオーガニックスタイルの演出に目覚めたので。彼らが気付かないところで背後から演出はしていますけど、あまり表立った演出はやっていないんです。

鈴木:でも、「オーガニック」という言葉から連想される穏やかな雰囲気はないですよ(笑)。現場のトップにいる監督が常に火が付いた状態だから、役者たちは無意識に、負けないように自分をもっていこうとする。役者全員が“園子温”についていく準備ができているから、それを見ているラッパーの人たちも同じ気持ちになる。だから監督を頂点としたピラミッドが自然とできていたんだと思います。

監督:『紀子の食卓』や『愛のむきだし』の頃は、役者が俺のことをよくわかっていなかったからめちゃくちゃ厳しくする必要があったけど、最近は何も言わなくても“園子温”を認識して役者が最初からちゃんと気を引き締めて入ってくるんですよ。だから何も言う必要がなくなったんだろうね。メラなんて特にそう。そういうときは、監督が出る幕なんてないし。

鈴木:僕も監督に言葉で提案することはほとんどなくて、唯一相談したのは、「ことあるごとに局部を触っていいですか?」の一点だけでした(笑)。

■ノースタントのアクション&唯一無二の世界観で勝負!

Q:役者さんは全員ノースタントなんですよね?

監督:スタントなし。『チョコレート・ファイター』をやりたかったから、全員アクションができる俳優をそろえました。ラップも「PV風にしない」というのは、カット割りをあまりせず、長く回すということ。アクションもラップもうそやごまかしがない。この映画には、間違いなくハリウッド映画に勝っている部分があるし、全世界に発信したい。特にタイで公開したいんだよね、この……何だっけ?

鈴木:「バトル・ラップ・ミュージカル」(笑)。

監督:それ! この前、ロサンゼルス在住の北村昭博(『ムカデ人間』)がバーで飲んでいたら、向こうの黒人たちが『TOKYO TRIBE』について「世界初のラップ・ミュージカルが日本で生まれたことが悔しい。ロサンゼルスで生まれなきゃいけなかったのに……」って話題にしていたらしくて。うれしいよね。

鈴木:今さら誰もマネできないからこれからも作られることがない、世界で唯一無二の映画ができましたよね。どこかの国に憧れて作った感じが全くしないこの無国籍感で、世界で勝負できると思います。個人的には、今後Tバック一丁でラップしながら人を斬ることはないと思うので、すごくいい経験ができました(笑)。

監督:「花子とアン」みたいに、ちゃんと服を着る世界に行っちゃって、もうこっちには戻ってこないんじゃない?

鈴木:いえいえ。あっちでためてためて、突然裏切りたいですね(笑)。

メラと、ムサシノSARUの海のライバル関係が本作の軸。ラストで明かされる、メラが海を敵視する理由の“小ささ”には爆笑必至! 「男の人ってそういうものなんですか?」と質問すると、園監督は「小中学生の男子にとってはUFOを見たかどうかくらい重要。戦争のきっかけにだってなる」と言い、「大人になると他の理由にすり替えていますけど、心理的には結局全てそこに起因すると思います」と鈴木。その驚がくの理由は……スクリーンで!

(C) 2014 INOUE SANTA / “TOKYO TRIBE” FILM PARTNERS

映画『TOKYO TRIBE』は8月30日より新宿バルト9ほか全国公開

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