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『柘榴坂の仇討』広末涼子 単独インタビュー

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『柘榴坂の仇討』広末涼子 単独インタビュー

この映画は、男も女も本当にカッコいい!

取材・文:斉藤由紀子 写真:杉映貴子

人気作家・浅田次郎の短編小説を『沈まぬ太陽』の若松節朗監督が映画化した『柘榴坂の仇討』。暗殺された主君・井伊直弼のあだ討ちを命じられ、13年間も刺客を捜し続けた主人公の志村金吾(中井貴一)と、金吾の仇敵(きゅうてき)である水戸藩浪士・佐橋十兵衛(阿部寛)、二人の男の生きざまを描く骨太の人間ドラマだ。あだ討ちに執念を燃やす夫・金吾を支えるために、献身的に尽くす妻・セツを演じた広末涼子が、作品に込めた熱い思いを明かした。

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草食男子も侍スピリッツを刺激される!

広末涼子

Q:武士道を貫く男たちと、彼らを支える女たちのドラマに涙してしまいました。広末さんはどうご覧になりましたか?

わたしも本当に泣きました。武士の信念に心を揺さぶられて、夫婦のエピソードに涙して……。中井さん、阿部さんをはじめ、役者さんたちが素晴らしかったです。撮影現場での演出もすごくステキだったので、自分も安心してお芝居をさせていただいたのですが、完成版でも日本映画の感動とだいご味をしっかり味わわせてもらいました。原作も読ませていただきましたが、浅田次郎さんの作品は、不思議な空気に包まれるんですよね。泣いてしまうけれど、それが「悲しい」「つらい」ではなくて、すごくすがすがしい涙なんです。今回も「浅田さんワールドに連れて行ってもらった!」という感覚でした。

Q:あだ討ちをテーマに描かれた本格派時代劇ですが、誰もが共感できる物語なんですよね。

普通は、これだけの時代劇だと歴史上の偉人や教科書に載っているような人を取り上げるストーリーが多いと思うんです。今回も井伊直弼さんは出てくるのですが、メインは彼に仕えた武士の物語。今で言うと大企業のサラリーマンの話のような感じなので、余計に感情移入しやすいのかもしれません。お勤めしている人の忠誠心や覚悟を描いているので、時代や世代を超えて心にグッとくるのだと思います。

Q:なるほど、主人公をサラリーマンに例えると、わかりやすいかもしれませんね。

武士の時代とは向かっているところが違っても、男気やこだわり、曲げられないものは、現代の男性にもあると思うんです。今は、どちらかというと女性の方がキラキラしているし、強くもなっていて、「男クサい感じの男性よりも、優しくて面白い人の方がモテる」みたいな、それこそ草食系の時代かもしれないのですが(笑)。でも、どんな男性も、小さい頃はチャンバラごっこをやったり、戦隊モノに憧れたりしたのではないでしょうか。それは、DNAに組み込まれたもののような気がするんです。現代の男性がこっそり閉じているプライドの扉を、開いてくれる作品のような気がしました。

耐えて尽くすヒロインは、男にとって理想の日本女性

広末涼子

Q:主人公・金吾のりりしさには、現代の男性はもちろん、女性たちのDNAも反応してしまうような気がします。

そうなんです。「金吾みたいな人がいたらついていく! 金吾ならわたしもセツのように支えられる!」と、映画を観た女性はみんな言っています(笑)。男の人は「セツのような女性をキライな男なんていない。でも、あんなに尽くしてくれる女性は今の時代にはいない」と。しかし、今の女性だって、古風な日本女性の耐え忍ぶ美しさや強さに憧れるのではないでしょうか。男性も女性も、本当にカッコいい映画だと思います。

Q:金吾があだ討ちを果たしたら生きては帰れないとわかっているのに、献身的に尽くすセツが切なかったです。かなり難しい役だったのでは?

自分のお芝居には、反省点がいっぱいあります。撮影中は、あんなに悲しい顔をしているつもりではなかったんです。それなのに、完成版を観たらすごく悲しそうな顔をしていて、「ああ……(ため息)」ってちょっと後悔しました。若松監督から、「セツも武家で育った娘なのだから、りんとして強くなければいけない。彼への愛情が強くて感情があふれるのはわかるけど、我慢しなさい」と言われていたので、気持ちを出していないつもりだったのですが……。それでもあふれてしまうくらい、自然と感情移入させていただける現場だったんですよね。

Q:中井貴一さんとの共演はいかがでしたか?

中井さんは、常に金吾さんでいらっしゃるんです。役を体から離さない方なんだなと思いました。現場で「今、スイッチが入ったな」と思う方もいれば、ずーっとその役のままの方もいらっしゃいますが、中井さんの場合は、ずっとそうなんだなと思うくらい自然でした。もしかしたら、中井さんご自身が、生真面目な金吾さんと似ているのかもしれません。もちろん、セツに時折見せる優しい笑顔やチャーミングな表情も、中井さんご自身の魅力なのではないかなと思いました。そんな時は、すっと近づけたような、ホッとできるような空気にしてくださる。常に優しくて紳士らしい方でした。

覚悟を決めた男と女の矜持(きょうじ)をお手本にしたい

広末涼子

Q:江戸時代末期から明治へと変わる激動の時代を描いた本作から、何か学んだことはありますか?

この映画は武士の矜持(きょうじ)が描かれているのですが、彼らを支える女にも矜持(きょうじ)があったのだと体感しました。セツは、「自分の大切な人が生きているだけでいい。たとえ生きて帰らなくても、彼が本望を遂げられるだけでいい」と覚悟していた女性なんですよね。中井さんが、「今、足りないのは覚悟なんじゃないか」とおっしゃっていたのですが、何かをすぐに諦めてしまったり、感情の起伏が抑えられなかったり、いろんな悲しいニュースがある今だからこそ、覚悟ある生き方のお手本にできる作品だと思いました。

Q:広末さんは、ご自身の矜持(きょうじ)についてどう思いますか?

わたしは、まだまだ足りないです。自分の生き方は、ぜいたくで欲張りだなと思います。揺るぎない確固たるものや、いちずな強さを持つ金吾やセツから、いい刺激をもらって反省しました。こんなふうに生きたいなと思いましたね。

Q:本作でセツを演じる一方、NHKの連続ドラマ「聖女」ではセツと対照的な悪女役に挑戦されており、振り幅の広さに驚かされました。

いい人を演じてまたいい人をやるよりも、すごく冷たい人をやって、今度はすごく愛情深い人を演じてみたりすると、観てくださる方がワクワクしてくれるのではないかなと思って、そういう選択をする傾向はあるかもしれないです。わたし自身も、メリーゴーラウンドよりジェットコースターのほうが好きなタイプなので、冒険したい気持ちがあるんですよね。

Q:今後はどんな役に挑戦したいですか?

具体的に「次はこういう役を!」など、あまり考えたりはしないのですが、30代になって役の幅がすごく広がったと思うんです。悪女役も初めてでしたし、実は、時代劇の映画も今回が初めてなんです。だから、所作的なこともすごく心配で、いろいろとご指導いただきました。この先も、自分で想像できないくらい新しい役や、新しい人生に出会えるのではないかと思っていて、年を重ねるのがすごく楽しみです。


広末涼子

初となる本格時代劇映画で、りんとした美しさを持つ日本女性を見事に体現してみせた広末。「初めてとは思えない!」とこちらが感嘆すると、「中井さんや(原作者の)浅田さんも、もっと時代劇に出た方がいいと言ってくださったんです」とほほ笑みながら、作品の素晴らしさを饒舌(じょうぜつ)に語ってくれた。彼女が何度も口にした本作の「矜持(きょうじ)」とは、自分の使命に誇りを持ち、覚悟を持って生きることを意味する。最後まで観れば登場人物たちの矜持(きょうじ)に心が震え、自分自身の生き方と向き合いたくなるだろう。日本人が今こそ観るべき日本映画の名作が、また一つ誕生した。

ヘアメイク:岡野瑞恵(TAMAE OKANO) スタイリスト:平野真智子

(C) 2014『柘榴坂の仇討』製作委員会

映画『柘榴坂の仇討』は9月20日より全国公開

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