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榮倉奈々&豊川悦司
『娚の一生』
「足キス」は恥ずかしくてまだ観られない
『娚の一生』榮倉奈々&豊川悦司 単独インタビュー

取材・文:進藤良彦 写真:平岩亨

都会での生活に疲れ、祖母が暮らしていた田舎の一軒家に移り住んだ堂薗(どうぞの)つぐみ。もう恋はしないと決めた彼女の前に、52歳独身の大学教授・海江田醇(じゅん)が現れる。西炯子の人気コミックを映画化した『娚の一生』は、そんな二人の不器用な恋模様を描いた大人のラブストーリー。しっとりとしたヒロイン像で新境地に挑んだ榮倉奈々と、ダンディーでセクシーな男性を演じた豊川悦司が、本作に込めた思いを語った。

■役づくりはまずリハビリから

Q:今回、それぞれの役柄を実際に演じる上で、特に意識されたり、気を付けたようなところはありましたか?

榮倉奈々(以下、榮倉):どんな作品でもそうですけど、その時の現場の空気とか監督の好みや癖みたいなものが、一本の作品を撮影している間にすごく体に染み付いてしまうと思うんです。だからまず、今までお芝居をしてきた中で自分に染み付いてしまったものを見直すリハビリみたいなところから始めました。

豊川悦司(以下、豊川):リハビリ(笑)。

榮倉:はい(笑)。今回、クランクインの少し前に三重県のロケ地に入ることができたんですけど、つぐみが暮らす一軒家の撮影場所に行って、「この家でつぐみはどんな生活をしているんだろう」「何を思って生きているんだろう」というようなことを考えました。言葉にすると地味だし、繊細な作業でもあるんですけど、つぐみを演じる上でそういうことを大切にしたいと思いました。

Q:廣木隆一監督から、撮影現場で何か具体的な指示はあったんですか?

榮倉:そんなにはなかったんですけど……。廣木監督は、人に伝えようとしてお芝居をすると絶対に……(苦笑)。

豊川:嫌がるよね(笑)。

榮倉:もちろん映画は人に伝えるものなんですけど、廣木さんの現場はそれじゃダメで。だけど、いざカメラが自分の方を向いていると、どうしても何かしなきゃいけないんじゃないかと思ってしまう自分がいて、自分のダメさを毎日反省していました。

■リハーサル通りの芝居をすると怒られる!?

Q:豊川さんは、年の離れた女性を翻弄(ほんろう)する海江田というキャラクターを演じてみていかがでしたか?

豊川:海江田がどういう男に見えるのかは、奈々ちゃんが演じているつぐみによって決まるところが大きいと思うので、とにかくおんぶに抱っこじゃないけど(笑)、まずは彼女にべったり寄り添うことから始めようと思いました。映画のストーリーとしては、初めは距離があった二人がだんだん近づいていくという、わかりやすい大きな流れがあるから、そのためにも僕がまず榮倉奈々という女性を理解して、彼女の感性に共鳴していく作業が大事だな、と。奈々ちゃんとは初共演だったのもあって、そこは最初にすごく考えましたね。

Q:自分がぐいぐい引っ張っていくのではなく、あくまで寄り添うという。

豊川:海江田は口ではああだこうだとつぐみに講釈をしているけど、改めて彼の行動を思い返してみると実際には全然引っ張っていないんですよ。むしろ、つぐみの自主性に任せているところが大きい。強引なようでいて、意外とそうではないし、愛情を伝えたい時に一番大事なのは、そばにいることなんだよというのを愚直なまでに実行していたのが海江田という男なんじゃないかと思ったので、僕もそのように心掛けました。

Q:そういった海江田とつぐみの関係については、お二人で相談することもあったのでしょうか?

豊川:特に相談したことはないかな……?

榮倉:インの前に一度、リハーサルはやりましたけど。

豊川:でも、意外と本番はリハーサル通りにやっていないよね。

榮倉:やっていないですね。現場で一度、リハーサル通りにお芝居をしたら、廣木監督に怒られました(笑)。

豊川:「それはリハーサルでやったじゃん」って(笑)。廣木組のリハーサルって、そんな感じなんですよ。芝居を固めるんじゃなくて、監督も含めてお互いがいかになじんでいくか、肌合いを合わせるための時間を共有するという感じで。

■「足キス」シーンの誕生秘話

Q:海江田がつぐみの足にキスをするところなど、思わずドキドキするようなシーンもたくさんありますけれども、演じるお二人にとっても、こういった場面は重要なポイントだったんでしょうか?

豊川:どうかなあ……僕としては、このシーンは足にキスをするという行為そのものよりも、そこに至るまでのお芝居の方が難しかった。海江田の心がどんなふうに解放されていったのか、その結果としてのキスなわけで、海江田は彼女に触れたい、彼女を抱き締めたいという気持ちが高まっていく中で、たまたま目の前につぐみの足があったから足にキスしただけなんじゃないかな、とも思うんですよ。別に足じゃなくてもどこでも良かったんじゃないか、と(笑)。

榮倉:わたしはやっぱり、恥ずかしかったですね(笑)。実はいまだに「足キス」のシーンだけは、ちゃんと観られないんです。ただ、普通に抱き合ってキスをして……というのが、どこか照れくさかったり恥ずかしかったりする二人の気持ちもわかる。やけに緊張するから、あえて足にキス、だったのではないでしょうか。

Q:ほかにも「壁ドン」ならぬ「床ドン」とか、印象的な描写がいくつもありますね。

榮倉:「床ドン」ですか(笑)。でも、わたしは京都の竹林のシーンとか、日常の中で、二人がたたずんでいるだけのシーンなんかが、すごく好きだったりします。

■役者を大きく飛躍させる廣木監督の演出術

Q:お二人とも廣木監督とは以前にも組まれていますが、廣木監督の現場に参加することの楽しさや難しさなどがあれば、お聞かせいただけますか?

榮倉:廣木監督は厳しいけど、すごく愛情がある優しい方です。本当の優しさってこういうことだなと、現場で毎日感じていました。わたしのことを信用してくださっているからこそ、その責任も重いですし……。

豊川:うん(うなずく)。

榮倉:ほかの現場でお芝居をしている時に当たり前だと思っていたことが、実は当たり前じゃないんだって不意に気付かされることが廣木組ではたくさんあって、今回の1か月の撮影の中でも、金づちで殴られるような衝撃というか、凝り固まったわたしの頭を柔らかくほぐしていってくれるような感覚がありました。わたしはつぐみとしてこの場所で生きていればいい、それをただ撮るだけだから、っていう現場のありがたみと難しさがあって、いろいろ感じるところが多かったです。

Q:豊川さんがしきりにうなずいて、同意されていますけれども。

豊川:廣木監督は、役者がいかにもなお芝居をすることを嫌うんですよ。まあ、役者は芝居するのが仕事なんだけど(笑)。

Q:いわゆる、お芝居の「型」のようなものは嫌いですよね。

豊川:そうそう。奈々ちゃんがたまに「それじゃ、つぐみじゃなくて榮倉奈々じゃん」って言われたりして。僕もいつ「それじゃトヨエツじゃん」って言われるんだろうとひやひやしていたんだけど。

榮倉:言われなかったですね(笑)。

豊川:役者が本気で向かってきてくれないと嫌だ、という。役者が本気で向かってきているかどうかを、すぐに見抜く方なんですよね。だから変な話、廣木組が終わったあとは、また逆の意味でリハビリが必要になるというか(笑)。

Q:榮倉さんが大きくうなずいていらっしゃいます(笑)。

榮倉:そうなんです。でも、本当に尊敬、信頼できる監督で、今回、久しぶりに廣木さんとご一緒できて、しかも大人の恋愛を撮ってもらえたということが、とてもうれしかったです。

榮倉は『余命1ヶ月の花嫁』(2009)『だいじょうぶ3組』(2012)で、豊川は『やわらかい生活』(2005)で廣木組を経験し、本作で再タッグ。まだ少女のようだった榮倉は大人の女性に、浮遊する危うい魅力を持つ青年を演じていた豊川はダンディーな中年紳士にと、それぞれ大きな変貌を遂げてこの作品で邂逅(かいこう)した。型にはまった芝居や小手先のテクニックを嫌う廣木監督の要求に応え、二人は映画の中で互いのキャラクターを自然に生きている。だからこそ、つぐみと海江田の恋愛模様が観る者の心を揺さぶるのだ。

【榮倉奈々】
ヘアメイク:足立真利子
スタイリスト:斉藤くみ(SIGNO)

【豊川悦司】
ヘアメイク:山崎聡
スタイリスト:長瀬哲朗

(C) 2015 西炯子・小学館/「娚の一生」製作委員会

映画『娚の一生』は、2月14日より全国公開

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