シネマトゥデイ

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岩井俊二の美少女名鑑

名作『花とアリス』の前日譚(たん)を、岩井俊二監督自らアニメ化した長編アニメーション『花とアリス殺人事件』の公開をきっかけに、岩井作品を彩ってきた希代の美少女たちを大特集!(文・構成:編集部 石井百合子)

おさげ&浴衣姿の奥菜恵は、全男子のあこがれ!

『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(1993)

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?

 岩井作品の中でもとりわけ人気が高い美少女キャラが『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』で奥菜恵が演じたナズナ。「打ち上げ花火(の火の玉)は、丸いのか、それとも平べったいのか」を検証しようとする小学生の少年たちと、クラスのマドンナ的存在であるナズナの、夏の一日の出来事を追った本作。実はナズナは、両親の離婚が決まり始業式を待たずに転校しなければならない。そんな中、ノリミチとユウスケが学校のプールで50メートルを競おうとしていた。プールサイドでその様子を見ていたナズナは、勝者を花火大会に誘う。

 物語は、勝者がユウスケだった場合とノリミチだった場合、二つのパターンで紡がれるのだが、とりわけノリミチパターンで映し出されるナズナが印象的。浴衣姿でノリミチを迎えに行き、花火大会に向かうと思いきや、ナズナは「駆け落ち」をするという。大人の事情に振り回され、傷つき、抵抗する彼女の伏し目がちな表情は明らかにノリミチたちよりも大人びていて、何をしでかすか分からない危うさが漂っている。途中、「駆け落ち」をするために浴衣から洋服に着替えるシーンで口紅をひいて「15歳に見えるかな?」とはにかむナズナには男子ならもん絶必至。オキメグのフィルモグラフィーの中でもひときわ輝きを放っている青春映画の金字塔だ。

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酒井美紀のナチュかわな魅力がさく裂

『Love Letter』(1995)

Love Letter
『Love Letter』より©(C) フジテレビジョン

 婚約者の藤井樹を亡くしたヒロイン、渡辺博子(中山美穂)は、ある日ふと思い立ち、彼が昔住んでいた小樽の住所に手紙を出した。すると、来るはずのない返事が返ってくる。手紙の送り主は樹と同姓同名の中学の同級生で、以来、二人の奇妙な文通が始まり、博子はもう一人の樹から中学時代の彼の記憶を教えてもらう……。岩井監督らしい、ミステリー仕立てのラブストーリー。中山美穂と豊川悦司の濃厚なキスシーンも話題になったが、その二人に負けない存在感を放ったのが中学生ならではの初々しい恋の芽生えを体現した酒井美紀柏原崇

Love Letter
「Love Letter」ブルーレイ:4,800円+税/DVD:3,800円+税/発売元:フジテレビジョン/キングレコード/販売元:キングレコード

 同じクラスで同姓同名の二人は、ことあるごとにクラスメートたちに冷やかされ、笑いの対象に。無理やり二人そろって図書委員に仕立て上げられたときに、酒井演じる樹が流す悔し涙が印象的だ。図書委員の業務はそっちのけで誰も借りない本を借りて自分の名前を残すという柏原演じる樹の屈折した、ぶっきらぼうな性格に萌える女性も多かったが、そんな彼に振り回されるピュアな樹(酒井)に憧れる男性も多かったはず。しかもセーラー服! 「いやなやつ」と思っていた存在が、次第に「気になる」存在に変わっていく過程は、いかにも10代。酒井美紀のナチュかわな魅力、青春のホロ苦い恋模様にときめく一作。

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流ちょうな英語も披露した恐るべき10代の伊藤歩

『スワロウテイル』(1996)

スワロウテイル
「スワロウテイル」※ブルーレイ/3,800円+税/発売元:ポニーキャニオン』©1996 SWALLOWTAIL PRODUCTION COMMITTEE

 「円」が世界で最も強かった時代、日本語、英語、中国語が飛び交う架空の国・円都(イェン・タウン)を舞台にしたサスペンス仕立てのラブストーリー。娼婦(しょうふ)から人気歌手に成り上がったグリコ(CHARA)とその恋人フェイホン(三上博史)をめぐる殺人事件、偽札作りのてん末が、身寄りのない少女アゲハ(伊藤歩)の視点で描かれる。劇中に登場するバンド「YEN TOWN BAND」のシングル「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」をリリースし、ブレイクしたCHARAのアイドル映画としても人気が高いが、岩井監督の「発掘眼」を感じさせるのが伊藤歩のキャスティング。

 まだ15歳だった伊藤は、母親を亡くし過酷な境遇に翻弄(ほんろう)されるか弱い少女から、自ら運命を切り開いていく女性へと成長していく過程を見事に演じ切った。流ちょうな英語を披露したほか、胸にタトゥーを入れるシーンではトップレスになるなど体当たりの演技に目を見張る。

蒼井優がセンセーショナルな役でスクリーンデビュー

『リリイ・シュシュのすべて』(2001)

リリイ・シュシュのすべて
『リリイ・シュシュのすべて』より©2001 LILY CHOU-CHOU PARTNERS

 中学生たちのいじめ、援助交際、レイプ、殺人、自殺……。「若さゆえの残酷さ」を集約したかのような本作は、しかし当時岩井監督自身が「遺作を選ぶならこの作品にしたい」と宣言したほど、彼にとって思い入れの深い作品。岩井監督が立ち上げたインターネット上の掲示板を用いたインターネット実験小説が公開され、そこから派生するかたちで原作本と映画が制作されたという野心作。

リリイ・シュシュのすべて
「リリイ・シュシュのすべて」※ブルーレイ/3,990円(税込)/発売元:ポニーキャニオン

 当時16歳だった蒼井優の記念すべきスクリーンデビュー作であり、まだ少女の面影を残した蒼井がクラスメートに援助交際を強いられ追い詰められていくヒロイン津田詩織にふんし、鮮烈な印象を放った。“客”から盗んだお金でファミリーレストランでやけ食いをしたり、制服のまま川に入って泥だらけになるといった沈痛な表情と、野原でグライダーを操る生き生きとした表情のギャップが痛烈に胸に迫ってくる。一方、もう一人のいじめの犠牲者・久野陽子を演じたのが『スワロウテイル』に続く出演となる伊藤歩。さらさらのセミロングヘア、物静かだが芯の強い性格で、ピアノが得意。いかにも男子に人気のありそうな美少女キャラだが、それゆえ女生徒から攻撃され壮絶な運命をたどる。クライマックスでは丸刈りになって、その女優魂を見せつけた。いずれも「壊されていく」少女の役どころだが、対照的な印象を残している。

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不思議少女を自然体で演じた広末涼子の透明感ある魅力

『Jam Films(ジャム フィルムズ)』(2002)

Jam Films

 堤幸彦行定勲篠原哲雄監督らと名を連ねた7話のショートフィルムから成るオムニバス映画。岩井監督が手掛けたのは、広末涼子とタッグを組んだファンタジー「ARITA」。ノート、テスト用紙……幼いころから自分にだけ見える不思議な生物を「ARITA」と名付け、その実態を探求するヒロイン・鞠子の物語。

 好奇心旺盛。ショートカットの髪型に赤を基調にしたキャミソール&シフォンスカートといった開放的な衣服に、クマの縫いぐるみを手にした姿は少女っぽくもあり、大人っぽくもある。あることがきっかけでふいに消えてしまう「ARITA」に翻弄(ほんろう)され、目まぐるしく表情を変えていく広末がとにかくキュート。岩井監督らしいファンタジックな世界観と、いつまでも少女らしさを失わない広末の浮世離れした魅力がマッチした好編だ。

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鈴木杏と蒼井優が体現する限りなくピュアな少女の園

『花とアリス』(2004)

花とアリス
「花とアリス」※ブルーレイ/3,80 0円+税/発売元:ポニーキャニオン©2004 Rockwell Eyes・H&A Project

 「キットカット」日本発売30周年を記念して作られたウェブ配信のショートムービーから派生した長編映画で、岩井監督の少女観が最も色濃く表れた作品。幼なじみのハナこと荒井花とアリスこと有栖川徹子、2人の少女の恋と友情がリリカルにつづられる。落語研究会に所属する高校生・宮本(郭智博)にひと目ぼれしたハナは、あるウソをついたことから宮本と急接近。やがてさらに重ねたウソがきっかけで、宮本はアリスに惹(ひ)かれていき……と、奇妙な三角関係が繰り広げられる。

 憧れの先輩への恋心から思わずついた大胆なウソによって「恋人」のポジションを確保したものの、ウソのほころびを取り繕うためにあたふたするおとぼけキャラ、ハナを演じた鈴木杏がハマリ役。特に、学園祭で背中越しに先輩に涙ながらの「ざんげ」をするシーンは涙なしに観られない。一方、岩井監督の「ミューズ」となった蒼井優は、おっとりとした性格ながら自由奔放過ぎる母親と2人暮らしで心労が絶えないアリスを好演。クライマックス、ティーン誌の表紙モデルのオーディション会場で披露するクラシックバレエの美しいことといったら……! 長いポニーテールをさらさらとなびかせ、ガムテープと紙コップで作った即席のトウシューズで優雅に踊るシーンは、本作最大の見せ場。切なくてちょっぴりおかしい、限りなくピュアな少女の世界に魅せられる。

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11年ぶりにアニメになって登場した2人の名ヒロイン

『花とアリス殺人事件』(2015)

花とアリス殺人事件
『花とアリス殺人事件』(2月20日公開)©花とアリス殺人事件製作委員会

 『花とアリス』の前日譚(たん)ともいうべきストーリーを、今度はアニメで描いた岩井監督。もちろん、ハナとアリスの声は鈴木杏と蒼井優。アリスの母親を演じた相田翔子、離れて暮らす父親を演じた平泉成、バレエ教室の先生役の木村多江ら前作のキャストが声優として続投するほか、黒木華勝地涼ら新キャストも参加している。両親の離婚がきっかけで石ノ森学園中学校に転入してきたアリスが見舞われる試練、アリスのクラスで語り継がれる怪事件、引きこもりで登校拒否していたハナとアリスの出会い、怪事件の真相を追求する二人の「探偵ごっこ」……。前作よりもコメディー色を強調しながら、多感な少女ならではの鬱屈(うっくつ)した感情や孤独、不安など繊細な心の機微はそのままに、似て非なる『花とアリス』の世界が展開する。

花とアリス殺人事件
©花とアリス殺人事件製作委員会

 アリスのエキセントリックなクラスメートが、黒魔術めいた呪文を唱えるシーン、アリスをからかう男子生徒にパンチをくらわせるシーンなどは、アニメだからこそコミカルに成立するといっていい。前作とは対照的で、新しい環境で四苦八苦するアリスは躍動的、ハナは引きこもりという設定もあって内向的な印象。声の演技ながら、ガラリと異なるイメージを見せる鈴木&蒼井の妙演が、11年を経ての成長を物語っている。アニメになっても、まったく岩井監督らしさは失われず、天才は何をやっても天才だと改めてその才能を目の当たりにする快作だ。

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