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二階堂ふみ&山下敦弘監督
『味園ユニバース』
カラオケのおはこは意外なあの曲
『味園ユニバース』二階堂ふみ&山下敦弘監督 単独インタビュー

取材・文:イソガイマサト 写真:高野広美

『苦役列車』などの俊英・山下敦弘監督と、『ヒミズ』『私の男』などで当時10代とは思えない圧倒的な演技力を見せつけてきた二階堂ふみ。そんな二人が、関ジャニ∞の渋谷すばるを主演に迎えた大阪が舞台の音楽人情ムービー『味園ユニバース』で初タッグを組んだ。父の残した音楽スタジオを受け継ぎ、渋谷演じる記憶喪失の男“ポチ男”の面倒を見る大阪弁のヒロイン・カスミを演じた二階堂は、憧れの山下監督の撮影現場でどんな新しい顔を見せたのか? 山下監督は彼女に何を託したのか? 二人が忘れられない撮影を振り返った。

■二階堂ふみと山下敦弘監督の幸福な出会い

Q:どんな経緯で、二階堂さんがカスミ役に決まったのですか?

山下敦弘監督(以下、山下監督):カスミ役は最初、15歳ぐらいの設定だったんですけど、15歳では死んだ父親の音楽スタジオを継いだり、赤犬というバンドのマネージメントをしていることにリアリティーがないと思って。それで高校生まで年齢を上げたときに、少し前に知り合いの結婚パーティーで再会した二階堂がすっと頭に浮かんだんです。

二階堂ふみ(以下、二階堂):結婚パーティーで会ったときに隣に座った監督を動けないようにして、「現場に呼んでください。仕事を下さい」って営業したんですよね(笑)。そうしたら割とすぐにお話を頂いたので、山下監督の現場にようやく行けるんだと思って、本当にうれしかったです。

Q:カスミはどんな女の子だと思いました?

二階堂:正直、よくわからなかったんですよね。大阪弁の「アホちゃう」が愛のある言葉だってことが、沖縄出身で今は東京に住んでいるわたしにはわからなくて。そういうことが撮影中に何度かあったので、完成した作品を観るまでは、カスミを自分が等身大で演じられたのかとても不安でした。

山下監督:カスミは少し変わっているけど、ただの男勝りではなくて、基本的には優しいし、弱い部分も持っている子にしたかったんです。それで、二階堂がもともと持っている芯の強さが出過ぎちゃうとダメだなって心配していたんですけど、編集でつないでみたら、ちゃんと10代の未熟な部分や心が揺らいでいる感じが絶妙に出ていて、すごいと思いました。

■現実とフィクションが交錯した不思議な現場

Q:山下監督の撮影現場自体はどうでしたか?

二階堂:すごく新鮮でした。結成して20年ぐらいたつのに、いまだに仲の良い赤犬の人たちが現場でワイワイやっていて、監督と同じ大阪芸大出身のスタッフも本当に多かったから、山下さんの学生時代を垣間見ているようでした。それに劇中に鈴木紗理奈さんの演じるマキコさんが「リシュウ、店を開けて」と言うシーンがあるんですけど、そのお店も赤犬のメンバー・リシュウさんが実際に経営しているバー“マンティコア”だったりするから、現実とフィクションの境目がぼんやりしているところがありました。あの街に行けば、映画の登場人物たちが実際にいそうだなと思える不思議な現場でしたね。

山下監督:僕は、勝手な自己満ですけど、二階堂ふみの10代最後の何かが撮れた気がちょっとしています。いつもは一度仕事をしたら、そのイメージが強くなるので、もう一度その人とやりたいとは思わないんだけど、二階堂はもっといろいろな引き出しがあるだろうし、すぐに違う役もできる予感がしている。それぐらい、今までに会ったことのない女優さんでした。

■ストイックな渋谷すばるは茂雄そのもの!?

Q:茂雄(通称ポチ男)を演じた関ジャニ∞の渋谷すばるさんとのコラボはいかがでしたか?

二階堂:感覚的なところで動いている方で、受け手のわたしもそれを気持ち良く受け取ることができました。現場ではほとんど会話をしなかったのですが、そういうものを必要としない方なんです。ロッカーだと思いましたね。

山下監督:渋谷くんは茂雄っぽいですよね。何かを表現するときの集中力がものすごくあるし、余計なものを入れない、周りに置かない。茂雄にもそういうところがあって、真面目で不器用であるが故にいろいろ選択を間違えて、ああいうふうになった。渋谷くんは別に選択を間違えてはいないけれど、彼のストイックさは茂雄とすごく似ているなと思いましたね。

■スイカの種を飛ばすシーンに山下ワールドが凝縮

Q:茂雄とカスミの素晴らしいシーンがたくさんありましたが、撮影で印象に残っているのは?

二階堂:わたしが大阪弁をうまく言えなくて、ツナ丼を何回も食べさせてしまったのは申し訳なかったですね(笑)。でも、渋谷さんはテイクを何回も重ねても「大丈夫ですよ」と優しく言ってくださって。新鮮な気持ちで一緒にお芝居をしてくださるところは本当にすてきだなと思いましたし、彼の優しさをずっと感じながら演じていました。

山下監督:スイカの種を2人で飛ばし合うシーンはどうだった? 何回もやったけど(笑)。

二階堂:あれはすごく気持ち良かったですね。山下さんのほかの現場は知らないけれど、山下さんの現場っぽい感じがしました(笑)。

山下監督:そうそう。3、4回ぐらいやってもらったと思うけど、俺の現場というか、『リンダ リンダ リンダ』(2005)のときと同じことをやっているなと思って(笑)。自分の中ではすでに全て成立しているんだけど、もっと行ける、もっと行けるってなっちゃって。久しぶりにああいうシーンを撮っちゃったなと思いましたね。

二階堂:でも、全て映っていなくても、画面から伝わってくるものがあるじゃないですか。わたしは山下さんの映画をずっと観ていて、見切れているのにその人の感情が感じ取れるのがいいなと思っていたんですけど、あそこはそういうシーンだったような気がします。

Q:茂雄がカスミの手をつかんで、「指、長いな」と言うシーンも良かったですね。

二階堂:あれ、わたしの指が長いから、あのセリフになったんですよ(笑)。

山下監督:そう、現場で変えたよね。

二階堂:台本には「手、ちっちゃいな」と書いてあったんですけど、わたしの手を見たら渋谷さん、言えなくなっちゃって(笑)。それであのセリフに変わったんです。

Q:今回の『味園ユニバース』は音楽映画でもありますが、お二人がカラオケに行くと必ず歌う歌は何ですか?

山下監督:俺は「ブギーバック」ですね。「今夜はブギーバック」を3回は歌います。

二階堂:聴きたいです。

山下監督:お酒を相当飲んだらね。

二階堂:じゃあ、マンティコアに行きますか?(笑) わたしは、それこそ劇中で渋谷さんが歌っていた松田聖子さんの「赤いスイートピー」を必ず歌っちゃいますね。

写真撮影中も二階堂が山下監督の肩をもみ始めるなど、今までタッグを組んでいなかったのが不思議なくらい息の合った様子を見せていた二人。映画では、そんな彼らだからこそ焼き付けることのできた人間の匂いや体温、息吹を感じさせてくれる。今回、ようやく組んだ二人には、また違った形でコラボしてほしい。そう待ち望んでいる人は少なくないはずだ。『味園ユニバース』は、ある意味、山下敦弘監督と二階堂ふみの未来を担う“序章”といえるだろう。

映画『味園ユニバース』は公開中

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