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高良健吾&尾野真千子
『きみはいい子』
希望にあふれているわけではないけど、希望はある映画
『きみはいい子』高良健吾&尾野真千子 単独インタビュー

取材・文:前田かおり 写真: 金井尭子

第28回坪田譲治文学賞や、2013年本屋大賞第4位を獲得した中脇初枝の同名小説を基に映画化した『きみはいい子』。幼児虐待やいじめ、学級崩壊といった問題を盛り込みながら、「人が人を愛すること」を描いたヒューマンドラマ。『そこのみにて光輝く』で昨年度の日本映画賞を総なめにした呉美保監督の下、生徒たちの問題に直面する小学校の新米教師・岡野匡役で主演した高良健吾と、親からの虐待を受けたことで娘に手を上げてしまうヒロイン・雅美に扮(ふん)した尾野真千子が作品への思いや、撮影秘話を語った。

■子供たちと向き合う演技

Q:難しい問題をはらんだ作品だと思うのですが、脚本を読んだ率直な感想は?

高良健吾(以下、高良):まず、どうやってこれを演じたらいいんだろうと思いました。子供たちが目の前にいることはわかっているので、教師役として、ちゃんと子供たちと向き合って演技できるのかな。ずっと不安に感じていました。

尾野真千子(以下、尾野):わたしは台本を読んで、「あ、虐待か」と思い、悩みました。正直なところ、やりたくないと思ったので。でも、読み進めていったら、最後は希望のある結末で、救われたんです。だから、演じることに意味があると思った。「虐待」だけを取り上げられてしまうと、何か引いてしまうし、単純にキレイに話をまとめて終わりだとダメだと思うんですが、そうではなくて「ああ、これからなんだな」というリアルで、気持ちのいい終わり方になっているので、これはやって絶対に意味があると思ったんです。

Q:作品のテーマや演じるキャラクターのバックボーンなど、監督と話し合われたのですか?

高良:監督とは特に話していないのですが、「岡野はこれからも大丈夫、と思われるように演じてほしい」と唯一言われていました。監督はそこから後は、僕に考えさせるという考えなんだなと受け取りました。でも、僕自身、演じる前から役についていろいろと言われるよりも、どう演じるのかを任される方がうれしいし、その方が楽しめるんです。だから、現場では自分には岡野をどう演じられるだろうと考えながら、テスト、そして本番に臨んでいました。 尾野:初めて監督にお会いしたとき、バックボーンの話はされました。でも、緊張もしていたので、実はあまり覚えていないんです(笑)。雅美という人は、抱き締められたことがない人というぐらいで……。

■母親役は何度やっても慣れない!?

Q:子供を相手に演技することは俳優にとって、とても難しいと聞きますが、どうでしたか?

高良:今、とっさに浮かんだのは、子供ではなくて、ベテランの人や先輩たち大勢に取り囲まれて芝居するのも嫌だな……と(笑)。そう考えたら、子供たちの前で芝居するほうが全然いいです。

尾野:ハハハ、確かに。

高良:振り返ってみると、そんなに構えずにやっていた気がします。むしろ、現場に入る前のほうが、子供たちにどうやって接したらいいんだろうと考えてしまいました。でも、冷静になって考え、子供と勝負するわけでもないのだから。

尾野:わたしの場合、娘のあやねちゃんを演じた子(三宅希空)は本当に賢い子で。オン、オフを切り替えられる子だったんです。あんな小さいのに、本番はちゃんと演じて、終わったらみんなでお話をしたり、歌を歌ったり。だから、その子に対して全く大変な思いはなかったんです。ただ、わたしは演技でも子供をたたくことはイヤでした。それだけですね、難しかったのは。あとはできるだけ多くコミュニケーションを取って、お母さんとも話をしましたね。何をされるのがイヤですかとか。他人のお子さんを預かるわけですから、そこはきちんとしておかないとと思います。子供相手だと大人同士みたいにわかり合えることって難しいですからね。言ってもわからないし。もどかしさもある。母親役はもう何度もやっているんですが、なかなか慣れないですね。

高良:僕は現場で、ずいぶん子供たちに質問攻めにされたりしました(笑)。こちらの言うことを聞いてくれない子もたくさんいたけれど、子供だから、それはそれでいいんじゃないかと思っていました。

■大人に観てほしい、希望ある映画

Q:本作がモスクワ国際映画祭に出品されるに当たって、呉監督は「日本のどこにでもあることを描いているけれど、世界のどこかの誰かにも通じるのでは」ということを話されていますが?

高良:岡野を演じながら、大人の人に観てほしいなということを思っていました。この作品には、今ニュースを見れば報道されているようなことがたくさん描かれている。例えば、岡野は生徒が家庭で虐待されていることや学級崩壊のことを決していいと思っているわけではなくて、何とか変えようと思っている。それは、なかなかうまくいかなくてももがいていれば進めると思うんです、諦めなかったら。この映画にはそういうことが描かれているから、僕はこの映画はとても好きです。希望にあふれているということではないけれど、希望は必ずある映画だと思います。

尾野:わたしはきっかけになる映画じゃないかなって思います。何かを抱えている人にとって、きっかけになればいい。あるいはヒントになればいい。助けてはあげられないし、わたしには何もないけれど、この映画がそういう人たちにとって、何かに気付くためのものになればいいかなと。

■ハグされながらの言葉は、骨身に染みる

Q:この映画では、抱き締めること、抱き締められることの大切さが描かれていますが、そんな人から得る優しさを感じることはありますか?

高良:そればかりだと思います。いつのまにか、自分一人で何でもできて、何でも決めた気持ちになりがちではあるけれど、そこまでになったのは、誰かからの励ましや亡くなった人の言葉のおかげだったり。自分の背中を押してくれていることばかりですね。

尾野:わたしも同じです。特に思うのは親から受ける優しさ。田舎に戻って、東京に帰る間際にハグしてくれるんです。その時に、掛けてくれる言葉は「体に気を付けるんやで」とか、何でもないような言葉なんですけど、肌が触れ合っているからこそ、骨身に染みて伝わってくる。それを聞くと、いつも泣いてしまうんですけど。それぐらいちょっとした言葉、当たり前の言葉なのに、わたしには特別なものになっていますね。

高良:僕の場合、家族とハグはあんまりないですね、みんな恥ずかしがり屋で。

尾野:うちは娘ですし、心配なんでしょう。遠く離れているから、余計に。

高良:でも、仲間とはしょっちゅうハグします。「久しぶりぃ」と言いながらのハグもあるし、「じゃあね」というハグもある。やはり、ハグっていいものだと思います。抱き締められた瞬間、ヨシっ! って力が入る。悔いなし! という感じ(笑)。

尾野:フフフ(笑)。

現在、放送中のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」などに出演し、演技派として評価が高い高良と、女優としてシリアスからコメディーまでオールマイティーに演じてきた尾野。本作では、残念ながら共演シーンはなかった二人だが、気鋭の女流監督・呉美保とのタッグに芸達者な子役たちとの仕事をそれぞれに楽しんだようだ。彼らが語るように、現代社会が抱えるセンシティブな題材に真正面から向き合った本作。それでいて、最後には希望と優しさにあふれている。「大人こそ観てほしい」と語った高良が魅せるラストシーンに注目だ。

(C) 2015「きみはいい子」製作委員会

映画『きみはいい子』は6月27日より全国公開

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