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 9月2日に日本でもサービスを開始する、世界最大手のインターネット動画配信ネットワークNetflix。なぜ、テレビ局や既存のメディアは「黒船がやって来る」とまで言って騒ぐのでしょうか? 一体どんなサービスなのか、どんな作品が観られるのか、今までの動画サービスと何が違うのか……? その謎に迫るべくロサンゼルスへ向かいました。取材で見えてきた「Netflix」という会社についてお伝えします。(編集部・井本早紀)

■インターネット動画配信って何?

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Netflixの画面イメージ - (c) Netflix. All Rights Reserved.

 インターネットにつなぐことができる端末を利用して映像を視聴できるサービスのこと。VOD(ビデオ・オン・デマンド)という呼称でも知られている。主な形態に、iTunes?やAmazonインスタント・ビデオなどのように1作品ごとに期間が定められたレンタル型や何度でも無制限に視聴する購入型を選ぶ方式と、HuluやdTVなど定額制で公開されているコンテンツを見放題としている方式の二つが存在する。Netflixは後者のサービスを行っている。

 インターネット動画配信のメリットは、何よりもテレビやプレーヤー、DVDなどを必要とせずどこでも見られるところ。スマートフォンやパソコンなどインターネット環境が整いさえすれば、例えば店の中や道路を歩きながらなど、場所や時間を問わずに視聴することができる。またレンタルDVD店とは異なり、「DVDを返す」という行為を必要としないため、延滞料金も発生しない。反対にデメリットはインターネット環境が必要なこと。

 以前は、映画やドラマ、アニメなど劇場やテレビで上映&放送された作品を取り扱うことが多かったが、現在、オリジナルコンテンツを制作している会社も増えてきている。Huluの「THE LAST COP/ラストコップ」やdTVの「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 反撃の狼煙」などだ。米Netflixではエミー賞を受賞した「ハウス・オブ・カード 野望の階段」は最も成功した例として挙げられる。このオリジナルコンテンツは、特に定額制のサービスを展開している会社によく見られる。レンタル型・購入型のサービスを展開しているAmazonも、テレビ番組制作・劇場用映画制作会社Amazon Studiosを所有するなど、自社コンテンツ制作には力を入れている。

■Netflixの特徴って?

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(c) Netflix. All Rights Reserved.

 現在50か国以上で事業を展開しており、全世界における契約世帯数はすでに6,500万世帯を超えているNetflix。アメリカでは、全世帯の4分の1がそのサービスを利用しているというほど、人を惹(ひ)きつけているNetflixの特徴は主に三つ。

 まず一つ目は、ドラマを1話ごとに配信するのではなく、全話一気にまとめて配信するスタイルであること。この一気見スタイルは「binge-watch」と呼ばれ、オックスフォード英英辞典が2013年を代表する言葉に選ぶほど、社会現象を巻き起こした。最新話を観るために1週間待たなければならないといったストレスがほぼないことが魅力的だ。

 二つ目は、リコメンド機能というおすすめ作品が表示される機能。膨大な量の作品が視聴できる環境では、自分の観たい作品を選ぶのも一苦労となってしまう。それを解消したのが、会員たちの好みや資料パターンを分析したデータに基づき、それぞれのおすすめ作品を紹介するこの機能だ。同機能を利用して新たな作品を発掘する人は多く、会員全体の視聴時間の7割強が、リコメンド機能で表示された作品を観ている時間だという。

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リモコンに専用ボタンだと……!?

 三つ目は簡単操作を追求していること。通常の操作画面もだが、退会や休会、そして再開するのにも、なにかと入力する手間はなくいくつかのボタンを押すだけでスムーズに進めることができる。また“簡単さ”は操作画面だけにとどまらずアメリカでは、テレビに向かってボタンを押すだけで直接「Netflix」の画面になるという、「Netflix」ボタンを導入しているテレビリモコンがポピュラーになっている。「Netflix」ボタンが付いているのは、インターネット対応テレビのリモコンのみだが、すでに東芝、パナソニック、シャープ、ソニーという日本のテレビのシェアのほとんどを占める大手4社が、日本で販売する「4K」テレビにこのボタンを搭載していると表明している。

Netflixを見ることができる機器

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スマートフォン、タブレット、デスクトップパソコン、ノートパソコン、ブルーレイプレーヤー、PS3、Wii、Xbox、スマートテレビ、スティック型ストリーミング端末やセットトップボックスを用意したテレビなど

■サービス開始前に知りたいNetflixの代表作&新作

 Netflixはオリジナル作品がとにかく人気。もちろん人気だけではなく質も高く、アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞、エミー賞にもノミネートされた作品も多い。今回はNetflixオリジナルドラマ入門編として代表作と新作を一挙ご紹介。

・「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」

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(c) Netflix. All Rights Reserved.
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(c) Netflix. All Rights Reserved.

 本作は、女性刑務所を舞台としたブラックコメディー。主人公のパイパー・チャップマン (テイラー・シリング)は、10年前に付き合っていたドラッグの売人アレックス(ローラ・プリポン)との関係が災いして逮捕され、罪を償うために1年間、連邦刑務所に入ることに。婚約者のラリー (ジェイソン・ビッグス)と快適なニューヨークライフに別れを告げたパイパーにとって、オレンジ色の囚人服に身を包む刑務所生活は面食らうことばかりだった……。
 2014年米Facebook上で話題になったテレビ部門で第2位になるなど、アメリカでは超が付くほどの人気ドラマ。第72回ゴールデン・グローブ賞テレビの部コメディ/ミュージカル部門の作品賞にもノミネートされた。

・「デアデビル」

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(c) Netflix. All Rights Reserved.
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 超人的感覚を持つ盲目のマーベルヒーロー・デアデビルを描いた作品。少年時代に不慮の事故で化学物質を顔に浴び視力を失った主人公マット・マードック(チャーリー・コックス)が、昼は盲目の弁護士として働き、夜は極限まで鍛え上げた身体能力を武器に謎のハンター「デアデビル」として、法では裁ききれない悪との戦いに身を投じる。ドラマは彼の背景を生かし、スーパーヒーローとして活躍しているほかのマーベルヒーロー作品と比べて、画面は薄暗くよりバイオレンスに仕上がっている。またその薄暗さこそ4Kの威力が発揮される部分でもある。大手映画レビューサイト Rotten Tomatoes のトップ批評家による批評家満足度で、98%と驚きの数字を獲得した。

 また「デアデビル」のほかにも、ジェシカ・ジョーンズ、アイアン・フィスト、ルーク・ケイジのマーベルヒーローのドラマ化権利をNetflixは持っており、彼らが集結するドラマ「ディフェンダーズ(原題) / Defenders」も企画中だ。

・「Sense8(センス8)」

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(c) Netflix. All Rights Reserved.
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(c) Netflix. All Rights Reserved.

 『マトリックス』シリーズのラナ&アンディ・ウォシャウスキー姉弟が初めて挑んだドラマ。『マイティ・ソー』などのJ・マイケル・ストラジンスキーと共に製作・脚本も担当している。
 暴力的な幻覚を体験し、お互いの思考、行動、感情に感応する能力を与えられた8人の男女をめぐるSF作品。それぞれ違う国や地域に住み、お互いに見知らぬ者同士であった8人は、なぜ自分たちの身に異変が起こったのか、謎の組織から殺される前に解明する必要に迫られる。
 世界9都市で撮影したというそのスケールの大きさはもちろん、1話の長さは80分だったり45分だったりと1話ごとに異なっていてもよいというスタイルで撮影されており、まさにドラマの常識を打ち破っている作品だ。

・制作中の新作は続々……
 映画『ムーラン・ルージュ』のバズ・ラーマン監督による、1970年代のニューヨークを舞台に、スラムに住む子供たちが音楽で世界を変えていくヒップホップミュージカル「ザ・ゲット・ダウン(原題) / The Get Down」や、ブラッド・ピット主演のアクション大作『ウォー・マシーン(原題) / War Machine』、1970年代に政党クメール・ルージュによる大量虐殺や戦争を経験したカンボジアの女性作家ルオン・ウンの手記を映画化するアンジェリーナ・ジョリー監督作品など企画中の作品はたくさん!
 なんとこれまで作ってきたNetflixのオリジナル作品は、全てプロデューサーや監督から打診されたものなのだそう。クリエイターからのオファーが常に相次いでいる状況で、Netflix側がこういうものを作りたいと企画を立ち上げた作品はまだないとのこと。

■超開放的!Netflix会社探検

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 ロサンゼルスのビバリーヒルズにあるNetflix社にレッツゴー!

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 ひろびろ~それぞれの社員のデスクも楽しそう。それぞれ自由にカスタマイズ。

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机には高さ調節機能が!!

 会議室やそれぞれのオフィスへの扉はガラス製のものが多い。

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 映画やドラマ愛が爆発したゆえか、部屋の名前は、あの名作だったり人気作だったり。また壁や扉一面に劇中の映像が描かれていることも!

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 『アーティスト』のアギーちゃん、かわいい。

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 キッチンは三つ完備。

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なんと、アイス専用の冷蔵庫も。朝には、出社した後の軽食も用意されているそう。でも夜は、残業よりも家に帰ってディナーを食べなさいという方針とのこと! あれ、天国かな?

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 こちらは試写室。革張りのゆったりしたイスでゆっくりと作品をチェックできる。試写室の前にはポップコーンマシンも用意されていた。くつろげちゃう……。

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 受付近くにはエミー賞などのトロフィー置き場も。

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 ある会議室にて……

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!?

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 Netflixのオリジナルアニメ「ボージャック・ホースマン」のキャラクター。馬だけど俳優……らしい……。しかもセレブらしい……!

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 オフィスを探索して感じたのは、社員の会社への愛がすごいということ。Netflixオリジナルコメディードラマ「アンブレイカブル・キミー・シュミット」の劇中歌がみんな好きすぎて、タイトルを印刷したTシャツまで作ったのだそう。

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ほかにも商品としては売っていない社員専用のコップなどのグッズも……。

■日本ならではコンテンツも!Netflixはローカルも大事に

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桐谷美玲主演のNetflix×フジテレビドラマ「アンダーウェア」

 フジテレビと提携し、リアリティー番組「テラスハウス」の新作と桐谷美玲主演の新ドラマ「アンダーウェア」をオリジナルコンテンツとして制作することを発表しているNetflixだが、今回のようにサービス開始と同時にその国のローカルコンテンツを出すのは日本が初めて。「日本は非常に特殊なマーケット」(コンテンツ部門最高責任者テッド・サランドス氏)「日本では特に自国で制作したコンテンツが好まれる」(コミュニケーション部門の最高責任者ジョナサン・フリードマン氏)と語られるように、日本での展開においては、特にローカルコンテンツ作りが重要視されているよう。

 そのため、今後日本のほかのテレビ局と組む可能性もあるとのこと。ワイプ画面を駆使する日本独特のバラエティー番組などについても研究しているという。もちろん制作したコンテンツは日本だけではなく、そのほかの国で配信することも検討されている。

 また日本のアニメ「シドニアの騎士」を昨年世界配信したところ、アメリカやフランスを中心に視聴者数を獲得したこともあり、アニメ作品を最重要コンテンツとして考えているというNetflix。「シドニアの騎士」を制作しているポリゴン・ピクチュアズ以外にも、いくつかの日本のアニメ制作会社とも、シリーズと映画の両方の作品で話を進めているという。

 それぞれの国に合わせたコンテンツを作り、今度はそのコンテンツを海外にも発信していく。そこにはインターネットだからこそかなえられる展開が詰め込まれている。

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