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二階堂ふみ&長谷川博己
『この国の空』
セリフを噛むたびに死にたくなる
『この国の空』二階堂ふみ&長谷川博己 単独インタビュー

取材・文:柴田メグミ 写真:平岩亨

話題作への出演が相次ぎ、多忙を極める二階堂ふみと長谷川博己が、『地獄でなぜ悪い』以来2年ぶりに共演した『この国の空』。原作は、芥川賞作家・高井有一が戦時下の庶民の暮らしを丹念に描写した谷崎潤一郎賞受賞作だ。『ヴァイブレータ』『共喰い』の脚本家・荒井晴彦が、異色の戦争ドラマから垣根越しの恋にフォーカス。許されぬ恋に突き進む19歳のヒロイン・里子を体現した二階堂、妻子がいながら里子に惹(ひ)かれてゆく市毛役の長谷川が、死と隣り合わせに生きる男女の思いや役づくりについて振り返った。

■成瀬巳喜男や小津安二郎作品の女優を意識

Q:終戦前夜を生きる主人公たちを演じる上で、準備したことや大切にしたことは何でしょう?

二階堂ふみ(以下、二階堂):とにかく日本語が美しい脚本だったので、言葉に重みを持たせたいと思いながら演じました。そして里子というキャラクターがそこに生きていることを見せたいと思い、口調としぐさだけはとにかく作り込んでいきました。

Q:参考にした資料や映画はありますか?

二階堂:成瀬巳喜男監督や、小津安二郎監督の作品の女優さんのしゃべり方を意識しました。

長谷川博己(以下、長谷川):日常のドラマではありますけど、すぐ近くでは戦争が起きていて殺りくも行われている。その緊迫感みたいなものを僕の中で想像し、常にその極限状態にいながら、言葉を発していこうと心掛けていました。

Q:市毛はヒゲを蓄えていますが、長谷川さんご自身のアイデアですか?

長谷川:そうですね、劇中のヒゲも自前です。戦時中の写真を見ていたら、今の同年代よりも昔の方が少し大人びていたと思うんです。男の威厳みたいなイメージで、というのもありましたね。

Q:里子と市毛の互いへの思いについては、どのように捉えましたか?

二階堂:里子は、理屈で何か考えて行動に移す女性ではないのかなと。市毛とも、どちらかというと里子が主導の関係になっている。だから現場でも、頭で考えたり言葉でどうこうするより、人間が生きる上で欲するものを出していきました。

長谷川:この二人の関係は、終戦近くのあの状況下でなければ始まらなかった。単なる隣人に終わっていたと思います。市毛も妻子を疎開させているような、いつ死ぬかわからない状況で、死と隣り合わせの状況になったときに、どういう気持ちになるかを想像しながら演じていたところがあります。

■1カット1カット勝負していく

Q:演じるにあたって、監督からどんな指示がありましたか? あるいは、お二人で話し合ったことは?

長谷川:基本的に、僕ら役者同士で役や芝居について話し合うことはそんなになかったですね。あえてそういう話を避けていたことが、もしかしたら僕にはあったかもしれない。世間話をしつつ、スタートの声が掛かったら自然に入っていく。1カット1カット勝負していくような感じでしたね。台本のト書きにある通りの芝居をすることを前提とした上で、あとは相手がどう出てくるかをお互いに見ながら、すごく楽しんで演じられました。

二階堂:監督は脚本家なので、基本的に全部、脚本に答えが書いてあるんです。やってほしいことも、欲しい表情も。だから余計な説明はなかったですね。

長谷川:監督は現場でも、カメラマンの方とどう撮るかを決めて、あとは(役者の)セリフを耳でよく聞いている、という印象がありましたね。だから耳で(演技を)見ているような感じでした。あまり多くは語らず、「もう1回」となったときも、具体的に何かを直接言うのではなく、察してほしいのだろうなという気がしました。

Q:里子が市毛を見つめる切ないまなざしや、市毛の里子に対する色気を帯びたまなざしにドキドキしました。演じていて実際にドキドキするようなシーンはありましたか?

二階堂:フィルム撮影なので、フィルムを無駄にできないというプレッシャーからのドキドキはありました。

長谷川:確かにね(笑)。

二階堂:セリフを噛(か)むたびに死にたくなるというか。これで何万(円の損)なのかと。ギャラから引かれちゃったらどうしようとか。そんなことばかり考えていました(笑)。

■人間が生きる姿を素直に描いた映画

Q:お二人は出演作のジャンルも演じられるキャラクターも多彩ですが、作品選びの際に特に重視することは何でしょう?

長谷川:同じような役柄ばかりが重なるのはいけないなとは思いますけど、それさえなければ選ぶというか、(オファーを)待つのがほとんどですよね。「何でこの役に僕を選んでくれたのか」ということを考えるのが、楽しかったりしますから。意外な役の話が来たら、なおさらやりたいなと思いますね。

二階堂:わたしは現場が好きなので、「この現場に行きたい」と思ったらですね。あまり深くは考えず、行きたいかやりたいかの直感です。

Q:今年は戦後70年だけに戦争ドラマが多く公開されますが、特に本作は個人的に最も反戦の思いを強くした映画でした。完成作をご覧になって、どんな感想をお持ちになりましたか?

二階堂:わたしは「反対」という言葉があまり得意じゃなくて、この作品も反戦映画というよりは、戦時中に生きている、生きようとしている人たちの映画だと思います。人間が生きるということは、食べること、寝ること、欲すること。それがすごく素直に描かれた映画です。

長谷川:僕は文学的な良い映画に仕上がったなと思いました。同時にいろいろ考えさせられる、想像力をかき立てられる作品ですよね。良い仕事ができたと思っています。

ファッションセンスに定評のある二階堂と、日本人離れしたスタイルを誇る長谷川がドレスアップした2ショットは、まさにファッション雑誌のグラビアから抜け出たよう。さらに写真撮影後のインタビューでは、共に背筋をピンと伸ばして答える姿から、作品に懸けるストイックな姿勢が透けて見えてくる。そんな魅力的な顔合わせの『この国の空』には、少女から大人の女へと変貌を遂げる二階堂と、落ち着きの中に情熱を秘めた長谷川の魅力が強烈に焼き付いている。

映画『この国の空』は8月8日よりテアトル新宿ほか全国公開

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