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多部未華子&綾野剛
『ピース オブ ケイク』
壁ドンしたら痛っ!となるかっこ悪さに共感
『ピース オブ ケイク』多部未華子&綾野剛 単独インタビュー

取材・文:須永貴子 写真:高野広美

ジョージ朝倉の同名コミックを、『アイデン&ティティ』『色即ぜねれいしょん』の田口トモロヲ監督が実写映画化したラブストーリー。恋愛体質のヒロイン・志乃を演じるのは、『君に届け』などの多部未華子。恋の相手となるバイト先の店長・京志郎を演じたのは、『そこのみにて光輝く』などの綾野剛。特別じゃない男女の出会いが恋に発展していく過程を、時にコミカルに、時に情熱的に演じきった二人。その関係性がどう生まれたのかを、多部と綾野が語った。

■原作との距離感

Q:お二人とも、役柄も表現方法もこれまでの作品とはだいぶ違いますね。

多部未華子(以下、多部):世間の人がわたしに対して抱いているイメージと志乃ちゃんは違うだろうなという自覚はあります。でも実は、志乃ちゃんとわたしは近しい部分がなきにしもあらず。新しいことをやらせてもらっていますが、自分にとっては新鮮なキャラクターではないという感じです。

綾野剛(以下、綾野):多分京志郎の屈託のない笑顔のことをおっしゃっていただいているんだと思いますが、あれは原作に描かれていたものなんです。基本的に僕は漫画原作の作品においては原作に近づけたいという思いがあるので、原作の京志郎が持っている表情の豊かさをそのまま表現しようとしました。

多部:わたしは原作とは見た目が違うので、見せ方みたいなものは考えませんでした。それよりも、志乃ちゃんに共感できる部分がたくさんあったので、心情を大切に演じられたらいいなと思いました。

Q:キャラクターとほぼ同世代のお二人に、刺さったセリフはありますか?

綾野:松坂桃李くんが演じる天ちゃんが志乃に言う「恋愛でかっこつけてどうすんのよ?」というセリフは、単純にステキだなと思います。

多部:京志郎と電話で話しながらカレーの材料を選んでいるときの、「幸せだと感じるほど怖くて不幸の準備をしてしまう」という心の声がすごく頭に残っています。原作にも、台本にもあって、読んだときに「あーわかる」って共感しました。傷つかないように不幸を想像して予防線を張ってしまう感じはあるなと。

綾野:監督は、原作の言葉をすごく大事にしていました。

多部:台本が原作のいいところをピックアップしていたので。

■思い切りぶつかった取っ組み合いシーン

Q:二人で向き合う芝居がたくさんあります。中でも、温泉旅館の布団の上での取っ組み合いシーンが素晴らしかった。リハーサルをしたんですか?

多部:あのシーンはしていません。

綾野:何回も撮ったので、つながりとか考えずに、思いっきりやるだけでした。思い切りやるためにはどうなってもいい状態にしておくことが重要で。浴衣がはだけてもカメラを止めずに進められるように、デリケートな部分に関して最低限の準備はしました。

多部:そうですね(とうなずく)。

綾野:あのシーンは二人の感情がぶつかったと思います。コミカルに見えますが、志乃は本気で怒っています。「京志郎、相手が真剣に怒っているときは、あんまり笑わないほうがいいよ」と思いました。

多部:本気でぶん殴ってやろうと思っていました(笑)。

綾野:バッチリ入りましたから(笑)。

Q:遠慮しない関係ができていたんですね。

綾野:それ以前にお互いを好きだと思っているシーンを撮ったことで二人の関係はできていたので、気負うことなくできてよかったと思います。もちろん京志郎として志乃と向き合うわけですが、志乃を演じる多部さんに影響を受けて僕が引き出される部分がありました。志乃と京志郎、多部未華子と綾野剛という二つの関係性が、いい具合に相乗効果を生み出していたと思います。

■多部未華子の酔っぱらい演技の秘密

Q:お互いに、忘れられない相手の表情はありますか?

多部:志乃が京志郎に告白するシーンを何回もリハーサルしたんです。その最初の京志郎の表情は、今でも覚えています。

綾野:いい顔してた?

多部:はい。すごく新鮮でリアルな反応でした。

綾野:僕は、温泉で志乃を怒らせてしまった翌朝、二人で海辺を歩くシーンです。「志乃が一番嫌うことをやっちゃったなあ」という後悔と、後ろめたさと、嫌な予感とが入り交じり、前を歩く志乃の背中を見るのはなかなか苦しかったです。

Q:志乃が酔っぱらったときのお芝居が素晴らしかったです。

多部:お芝居(笑)。

綾野:(笑)。

Q:え? 芝居じゃないんですか?

多部:お芝居はお芝居ですけど、お酒は入っています。

Q:トロンとした目とか、顔の紅潮は……。

多部:お酒のせいだと思います。バイト先の飲み会のシーンでは実はみんなで飲んで撮影しました。決められたセリフは1行くらいで、あとは「(菅田将暉演じる)川谷に愚痴を言う」くらいのト書きしか書いていなかったんです。自分なりに愚痴の内容を考えて、それを言おうと心掛けていましたが、酔っぱらってはいます。

綾野:現場のサイズやバジェットによって、アプローチは容易に変えていっていいものだと思っています。今回の現場は監督の指示の下、お酒を一つの材料として作品に使ったということです。

■自分の役を愛することの大切さ

Q:今回、この撮影現場を体験して刺激を受けたことは何ですか?

多部:わたしはほとんど毎日現場にいて、数日現場に来る役者さんたちに刺激を受けていました。松坂桃李くんも、光宗薫さんも、柄本佑くんも、みんなが自分のキャラクターを愛そうとしていたことがすごく伝わってきたことがうれしかったですし、自分も常にそうあるべきだと改めて思いました。もちろん、一番刺激を与えてくれたのはゴウアヤノ(笑)。

綾野:ゴウアヤノ(笑)。

多部:役を愛しているのはもちろん、志乃を愛してくれていることが伝わってきました。志乃は全面的に京志郎が好きだけど、京志郎の心情はほとんど描かれていないので、難しかったと思うんです。そこで「志乃あっての京志郎」という雰囲気を常に出して、志乃の気持ちもわたしのお芝居も全て受け入れてくれました。

綾野:僕は、田口トモロヲ監督と多部未華子さんと作品を作れたことです。あと、過去に共演したことがある松坂桃李くんや菅田将暉くんと、初めて共演する光宗薫さんらと新しい化学反応を生み出せて良かったです。

Q:恋愛を題材にした漫画が原作の映画には壁ドンを筆頭に象徴的な行為が多いですが、この作品にはそれがないですよね。

綾野:それはジョージ朝倉先生の力じゃないですか? もしも京志郎が壁ドンをしたら、「痛っ!」って言うのがこの作品。美しくてかっこいい王道ラブストーリーにはない、面倒くさくてかっこ悪い部分を描いているからみんなが共感できるんだと思います。

多部:参考にならないような人物しか出てこない。いい男もいい女も出てこないですし。

綾野:この映画で問題の種になっている部分に気を付ければ、実生活の恋愛はうまくいくんじゃないかと。

多部:確かに(笑)。人生の通過点で、偶然隣にいた人に、流されやすい女が捕まったくらいのこと。初恋のピュアな感じでもなければ、永遠の愛を誓うわけでもない、ある男女の人生の一片にすぎない恋愛ストーリーです。

松坂桃李、木村文乃、菅田将暉といった主役級の若手俳優がぜいたくに起用された本作。多部は座長として志乃を生き、綾野は役としても俳優としても多部を支えた。写真撮影中も、会話が途切れることがない二人。何一つ遠慮する必要のないリラックスできる関係は、志乃と京志郎として信頼し合い、がっつりと向き合った結果だろう。

【多部未華子】
スタイリスト:轟木節子
ヘアメイク:フジワラミホコ(LUCK HAIR)

【綾野剛】
スタイリスト:澤田石和寛(SEPT)
ヘアメイク:井村曜子(eclat)

映画『ピース オブ ケイク』は新宿バルト9ほか全国公開中

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