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有村架純
『夏美のホタル』
何も考えないことが課題だった撮影現場
『夏美のホタル』有村架純 単独インタビュー

取材・文:前田かおり 写真:高野広美

今年もドラマに映画に出演が続く女優・有村架純。新作『夏美のホタル』は、森沢明夫の同名小説をもとに、親子の絆や人と人とのつながりを優しく描き出すヒューマンドラマ。スマッシュヒットを記録した『ストロボ・エッジ』の廣木隆一監督と再びタッグを組んだ有村が、撮影現場のことや等身大の主人公を演じた作品への思いを語った。

■原作と思いがけない“再会”

Q:原作を先に読んでいたそうですね。

19歳のときに原作者の森沢明夫さんとお会いする機会があって、そのときにオススメされて、原作を読ませていただきました。映画の設定とは少し違うのですが、ひと夏の経験を経て成長していくという物語で、夏美が等身大で年齢も自分と近かったので読みやすかったです。自然豊かな田舎での人との出会いで自分も言葉をかけられているような気持ちになり、共感するところも多かったように覚えています。

Q:台本はいかがでしたか?

原作の持っている雰囲気は変わっていないんですけど、台本には夏美の感情の説明があまりなかったので、会話から彼女の心理を読み取らなくてはいけなくて……。ちょっと難しくて苦戦しました。夏美は亡くなった父親のことも思っているし、恋人の慎吾のことも思っている。そして写真家になりたいという夢も大事。その間で揺れ動く感情を描くのが、この作品なんですけど、何かを軸にして夏美を演じなくてはいけないんじゃないかと悩んでしまいました。本読みしたときに、廣木さんに相談したら、廣木さんは私がすごく考える性格だということをよく知っているので、「何も考えなくていいから、そのままで来て」って言われて(笑)。何も考えないってことを、今回の課題にして現場に行きました。

Q:夏美が訪れた思い出の地は自然があふれる素敵な場所でした。千葉の大多喜町というところだそうですね。

はい。本当に静かで、ゆったりとした空気が流れていて、緑があって、ホタルが出てきそうな場所でした。人生の壁にぶつかった夏美が答えを見つけたいと思ったときに、ここなら何か見つかりそうだなと思いました。私もこの撮影現場に入ったことで、夏美の気持ちになれたというか、何かを感じ取ったような気がします。

■廣木監督からの厳しいダメ出し

Q:廣木監督とは2度目のタッグですが、今までになく伸び伸びとした自然な表情が見えるのは監督との信頼関係からくるものですか?

演じているときは意識していたわけではないのに、出来上がった作品を観たら、夏美はすごくサバサバしていて。男前なところもあるけれど、恋人の慎吾の前では甘えるような微妙な表情も見せる。廣木さんは、何でもわかる監督だから、私の中の要素をうまく引き出してくれたんだと思います。

Q:廣木監督はどのように演出をされる方ですか?

たとえば、悲しかったら悲しい顔とか、怒っていたら怖い表情をしちゃいますよね。すると、「余計なことをするな」と言われるんです。小手先の技術みたいなことをやると、どんどん取り除かれる。『ストロボ・エッジ』の現場で、いちおう“廣木スタイル”には慣れていたつもりだったんですけど、あるシーンで「つまんねぇーな」と言われたとたん、頭がフリーズしちゃって……。違うようにやろうとすると、ますますNG。すると、「考えるならもう1回」と言われて、結局15回以上はやり直すことになりました(笑)。

Q:光石研さん、吉行和子さん、小林薫さんといったベテランの方たちとの共演はいかがでしたか?

特別に何かお話をしたわけではないのですが、その仕事ぶりなどを見ていて、いらっしゃるだけでその場の空気感が本当に変わるんだなと感じました。光石さんがいらっしゃっても変わるし、小林さんがいらっしゃってもまた変わる。その空気の変わりようが面白いし、演技のやり取り一つとっても、私にとって刺激的でした。佇まいとかを見ているだけで羨ましいなと思いました。でも、そんなベテランの方たちでも廣木さんは容赦なかったんです(笑)。俳優の経験値が高かろうが低かろうが納得いくまで繰り返す監督なんだなとよくわかりました(笑)。

■女優も出会いで大成する

Q:劇中、夏美は父親の中型バイクに乗っていますね。

本当は実際に免許を取って乗りたかったのですが、時間も限られていたので、運転しているシーンは引っ張ってもらったり、スタントの人にやっていただいています。バイクを起こしたり、押すシーンは実際にやっていますが、重かった。おまけに、真夏だったからライダースーツを着ているのが暑くて、大変でした。

Q:メインの舞台となったよろず屋が本当に田舎町で見かけるような店構えで懐かしくなりました。

使われたお店は、実際に原作のモデルになったところだったそうなんです。それを聞くまで「こんなに原作にそっくりな場所があるなんて!」と思っていたので、びっくりしました(笑)。

Q:人生の岐路に立っていた夏美が、心温かい人々との出会いによって少しだけ成長する。ささやかな物語だけれど、後味がさわやかな作品でした。

この作品には、いろんな要素が詰まっていると思うんです。夏美と同じように人生に迷っている方が観れば、何か気づくことがあるかもしれないし、人と人との結びつきに感銘を受ける人もいるかもしれない。観客の方に自由に感じてもらえたら嬉しいですね。

Q:有村さんもヒロインの夏美のように、さまざまな作品や出会いによって、女優としての成長を遂げていると感じます。今後、どんな女優を目指したいですか?

今はこれまで演じたことのないような役にどんどんチャレンジして、もっと幅広い演技ができる女優になりたいと思っています。確かに映画で描かれた夏美のように、女優の仕事も人と人とのつながりや出会いで、「新しい世界」あるいは「新しい自分」を知ることができます。そうやって大きく成長して、私を信じて使ってくださる監督さんやスタッフさんにお芝居でちゃんと恩返しもしていきたいですね。

決して簡単な世界ではない邦画界で、一つ一つの仕事を真面目に丁寧に積み重ねながら、女優としてのキャリアを着実にアップさせている有村架純。インタビューでは仕事への取り組み方を表すかのようにそれぞれの質問に誠実に答えていた。その反面、意外とクールに今の自分を客観視する「目」も持ち合わせている。今後も話題作への出演が続く有村が、等身大の女性を「何も考えずに」ごく自然に演じきった本作。更なる高みへと一歩ずつ歩みを進める彼女にとって大切な一本になったことは間違いない。

(C) 2016「夏美のホタル」製作委員会

映画『夏美のホタル』は全国公開中

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