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松山ケンイチ&東出昌大
『聖の青春』
まるで男と男の“ラブストーリー”
『聖の青春』松山ケンイチ&東出昌大 単独インタビュー

取材・文:斉藤博昭 写真:杉映貴子

将棋の天才として、あの羽生善治のライバルとなるも、29歳という若さでこの世を去った村山聖(さとし)。その短くも熱い日々を描いた映画『聖の青春』は、村山役・松山ケンイチと、羽生役の東出昌大による渾身の演技が大きな見どころになっている。伝説の棋士にどのようにアプローチしたのか? 対局シーンも含め、互いの演技から何を感じたのか? 初共演となった彼らが完成作への強い思いも込めながら、語り合った。

■全身全霊で挑む!外見と内面から役づくり

Q:村山聖を演じるというのは、松山さん自身の希望だったそうですね。

松山ケンイチ(以下、松山):そうなんです。原作を読んで、ぜひ演じてみたいと思いました。病にも負けず、こんなにも「生きる」ことに真剣だった人がいるのかと、心を揺さぶられたのです。日常で幸せを感じる瞬間はあるけれど、“生きている喜び”ってなかなか感じないですよね? 限りある時間でどう人生と向き合うかを、村山さんから突きつけられました。

Q:東出さんにとって、羽生善治という存在はどんなものだったのでしょう。

東出昌大(以下、東出):僕が最初に羽生さんに興味を持ったのは「プロフェッショナル 仕事の流儀」というテレビ番組で、そこからプロ棋士の世界のファンになりました。だから今回、役のオファーを受けたときはうれしかったですね。

Q:実在の天才棋士を演じるうえで、どんな役づくりの過程があったのですか?

松山:僕が村山さんに近づいていかないと、この役は成立しないと思ったので、残っている映像から話し方やしぐさを参考にしつつ、内面的には彼が自分の病をどうとらえたのかを考えていきました。

東出:クランクインが関西の将棋会館での撮影だったのですが、そこに村山さんの師匠の森信雄先生がいらっしゃいました。松山さんを見て、「また村山くんに会えた」と話していましたよね? うれしそうとか、悲しそうとかではなく、愛おしそうに……。でも、改めて振り返ると、松山さんは体重も増やして大変だったんじゃないかと。

Q:大幅に増量したんですよね。

松山:でも、体重が増えてからは、何事にもどっしり構えられるようになったんです。撮影が終わって、もし体重が元に戻らなかったら『次は力士を演じるしかない』と思ったけど(笑)、こうして無事に戻りました。

■男同士の純愛

Q:東出さんは羽生善治さん本人にもお会いしたそうですね。

東出:羽生さんに直接お会いして、その存在と志すものの大きさを実感しました。羽生さんは村山さんと違って、生きるか死ぬかという境遇ではありません。でも以前に羽生さんはインタビューで「さらに先の世界へ行くと、もう帰って来られない気がする」と語っています。狂気のような世界にとりつかれ、“生”が終わる感覚ですよね。ですから羽生さんが人生を賭(と)している場所に、僕なりに近づけたらと努めました。

松山:そんな東出くんと(将棋の)盤を挟んで向き合うと、たたずまいからオーラを感じ、うれしくなりましたよ。村山さんは羽生さんに憧れと尊敬を感じ、ライバル視もしていたと思うけれど、東出くんが将棋と羽生さんを愛していたから、僕もその感覚を共有できたんじゃないかな。

Q:対局シーンは緊迫感満点ですが、劇中には2人が酒を飲みながら本心を打ち明け合うシーンもありますね。

東出:あのシーンは脚本を読んだときから、演じられる喜びを感じていました。だだ、あそこでのセリフは、羽生さんが心の中で思っていても、絶対に口には出さない言葉なんじゃないかと……。

松山:そのあたりを直接、羽生さんに確かめたいけど、聞くだけヤボだよね(笑)。

東出:完全な“勝負師”ですからね。でも映画だから、羽生さんが解放される瞬間を作ってもいいんじゃないかなと。その結果、僕にとっても大好きなシーンになりました。

松山:あそこはラブストーリーですよ。恋愛感情とは違うけど、「自分の人生に、こういう人が1人でもいればいい」と感じさせる。こんな人に出会えるように、自分も正直に、志をもって生きなくちゃいけないと思えましたから。

東出:同感です。男女の仲にも尊敬や愛があるように、言葉に出さなくても理解し合っている男同士の関係が凝縮されている。まさに純愛ですね。

■小手先じゃない、演技は心

Q:今回、初共演ということですが、お互いの印象は?

松山:僕はキャリアの初期から「テクニックは後からついてくる。演技は心だ」という言葉を信じてきたのですが、東出くんからも同じ思いを感じる。小手先の演技じゃないんですよ。僕は勝手に親近感を持っています(笑)。

東出:ありがとうございます。

松山:伝えるためには演技のテクニックも必要だけど、それだけでは、やっぱり俳優としてはダメだと思うし……。

東出:今回、僕にとっての村山聖は、最初から松山さんそのものでした。それくらい一体化していたので、僕も「絶対にこれだけは譲れない」という気持ちをキープできたんだと感じています。

松山:村山さんの生き方を追体験したことで、僕も自分の人生をすごく大事にできるようになった気がします。どんな思いで人生を生きたのか。日常生活では、なかなかそんなことまで考えないですから。東出くんと酒を飲んでも、おそらくそんな話はしないよね?

東出:まぁそうですね(笑)。

■もし、本気で対局したら……?

Q:お二人は、もともと将棋に詳しかったのですか?

松山:小学校の頃、将棋ブームがあったので、それ以来、何となく続けていました。対局ゲームを買ったりしたし、最近はアプリでやったりとか。

東出:僕もルール自体は子供の頃に覚えたんですけど、「プロフェッショナル~」を見た同じ時期に「3月のライオン」の漫画を読み始めて一気に夢中になり、友達と将棋を指し始めました。

Q:では今でも趣味として将棋を続けているんですね。

松山:いや、最近は控えてます。僕が村山さんを演じているのが知られているので、「村山聖に勝った!」なんて言われると困るので(笑)。

東出:僕らとプロ棋士の方の違いって、石ころとダイヤモンドくらい差がありますからね(笑)。

Q:お二人で対局は?

松山:していないです。監督やプロデューサーとは対局して負けちゃいました。そのおかげで、余計に闘争心に火がついたんですけど。でも東出くんの方が、将棋への愛が強そうだからな……。

東出:僕は松山さんとの対局は遠慮しておきます。すでに映画の中では究極の棋譜(対局の手順の記録)で闘っているわけだから……。もうお腹いっぱいです(笑)。

インタビュー中は質問に対して真剣に、まっすぐに答えていた2人だが、撮影でカメラマンが「話している感じで」とリクエストを出すと、お互いの育児の話で盛り上がっていた。双子の父になった東出に、松山がアドバイスする場面も。共に実在の人物を演じるというプレッシャーで、撮影中は緊張も多かったはずだが、こうして作品が完成し、その仕上がりに手応えを感じたからこそ、ようやくリラックスして父親同士の会話ができるようになったのかもしれない。心なごむ瞬間だった。

映画『聖の青春』は11月19日公開

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