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心揺さぶるハリウッドの名スピーチを今こそ読みたい!

今週のクローズアップ

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 先月行われた第74回ゴールデン・グローブ賞授賞式で、メリル・ストリープのスピーチが話題を呼びました。偉大なハリウッドスターは、スピーチの場でも人々の心をつかむもの。アカデミー賞授賞式を間近に控えた今だからこそ、新たな名スピーチが誕生することに期待を抱きつつ、過去の素敵なスピーチを振り返ってみましょう。(編集部・石神恵美子)

メリル・ストリープ 2017年

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大女優メリルらしいスピーチに拍手喝采! - Handout / Scott Olson / Getty Images
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【シチュエーション】第74回ゴールデン・グローブ賞授賞式にて、米ドナルド・トランプ大統領の名を出すことなく痛烈批判しました。

(全文)

 どうもありがとう。どうもありがとう。ありがとう。どうぞ着席してください。ありがとう。みなさんのことを愛しています。どうか許してください。週末に叫んだり嘆いたりしたので、声が出なくなってしまいました。それにこの1年の間に正気を失うことがありました。だから読ませてくださいね。

 ハリウッド外国人映画記者協会のみなさんありがとう。先ほどヒュー・ローリーの語ったことに続ければ、この会場にいる私もみなさんも今は、アメリカ社会で最も中傷されている層に属しているんですよ。考えてみてください。ハリウッド、外国人、記者ですよ。私たちって一体何者なんでしょうか? そもそもハリウッドって一体何なのでしょうか? それは、さまざまな場所からやってきた人たちの集まりにしかすぎません。

 私はニュージャージーで生まれ育ち、公立学校で学びました。ヴィオラ(・デイヴィス)はサウスカロライナ州の小作人の小屋で生まれ、ロードアイランド州のセントラルフォールズで育ちました。サラ・ポールソンはブルックリンでシングルマザーに育てられました。サラ・ジェシカ・パーカーはオハイオ出身で7か、8人兄弟とともに育ちました。エイミー・アダムスはイタリア生まれです。ナタリー・ポートマンはエルサレムで生まれました。彼女たちの出生証明書はどこにあるのでしょうか? そして美しいルース・ネッガはエチオピアで生まれ、ロンドンで育ち……いえ、アイルランドだったかしらね。そんな彼女はバージニアからやってきた片田舎の女の子を演じたことで、こうしてノミネートを受けています。ライアン・ゴズリングは、善人ばかりのカナダ人です。デヴ・パテルはロンドンで育ち、映画の中ではタスマニアで育ったインド人を演じています。

 ハリウッドはアウトサイダーと外国人の集まりです。もし彼らを追い出せば、フットボールと総合格闘技しか見るものがなくなりますし、それらは芸術ではないです。これを伝えるためにみなさんが3秒くださいました。役者の唯一の仕事というのは、異なる人々の人生に入り込み、どんな感じなのかを観る人に感じさせることです。今年も力強いパフォーマンスがたくさん、たくさん、たくさんありました。息をのむような、熱のこもった演技ばかりです。

 しかしこの1年間で、頭を殴られたかのような衝撃を受けたパフォーマンスが一つありました。私の心にその釣り針が刺さったままです。そのパフォーマンスが良かったからではありません。これぽっちも良いところはありませんでした。しかし効果的で、その役目を果たしていました。特定の聴衆を笑わせ、歯をむき出しにさせるように仕向けたものでした。それは、この国で最も権威ある座に就く人物が、障害のある記者のマネをした瞬間でした。特権、権力、抵抗する能力において彼のほうが勝っているという相手に対してです。それを見たとき、私の心は打ち砕かれました。いまだにその光景が頭から離れません。映画の中ではなく、現実に起きたことだったからです。

 このように衝動的に他人を侮辱することが、公の場に立つ権力者によって行われるとき、それは人々の生活にも広まっていきます。同じことをしても許されるのだと考えるようになるからです。軽蔑は軽蔑を招きます。暴力は暴力を招きます。権力者がその地位を利用して他人をいじめようとするとき、我々はみな敗北するのです。

 ここで記者の話になります。私たちには、どんな横暴に対しても厳しく非難する信念を持った記者が必要なのです。建国者たちが報道の自由を憲法で定めたのはそういう理由からです。そこで裕福であると有名なハリウッド外国人映画記者協会と映画界にいるみなさんに、ジャーナリスト保護委員会の支援をお願いします。ジャーナリストたちが前進することが私たちに必要になってくるからです。そして、彼らも真実を守るために私たちの助けを必要とするでしょう。

 もう一つ。ある日、セットの脇で愚痴をこぼしていたことがあります。夕食抜きで長時間働いたりするからでしょう。トミー・リー・ジョーンズが私にこう言いました。メリル、役者でいられるっていうだけで、特権じゃないか? って。本当にそうです。私たちには共感を呼ぶ責任と特権があるのだということを互いに言い聞かせる必要があります。私たちはみんな、今夜ハリウッドがたたえる仕事を誇りに思うべきです。

 そして私の友、亡くなったレイア姫がかつて言ったように、打ち砕かれた心をもって、芸術にしましょう。ありがとうございました。

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ナタリー・ポートマン 2015年

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ナタリーが紹介、誇るべき日本文化! - Stefania D'Alessandro / WireImage / Getty Images

【シチュエーション】母校ハーバード大学で日本でのエピソードを交えながら卒業生にお祝いの言葉を贈りました。

(抜粋)

 数年前、夫と一緒に東京に行ったときのことです。すばらしいお寿司屋さんで食事をしました。私は魚を食べません。ビーガン(完全菜食主義者)なので。でもこれで、いかにそのお寿司がすばらしかったか、おわかりでしょう。野菜だけのお寿司なのに、それはまさに夢にまで見たお寿司だったのです。そのお寿司屋さんは6席だけの店でした。私と夫は「一体ほかの誰がこんなにシャリをおいしく握れるものか」と驚嘆してしまいました。そして私たちは、こう不思議に思ったものです。「なんでもっと広いお店にして、街で有名なお寿司屋さんを目指さないのか」。

 すると、現地の友人が説明してくれました。東京で最高のレストランはどこも小さくて、一品だけを扱っているものなのだと。例えば、寿司、天ぷら、照り焼きという具合に。なぜなら、彼らはその一品にこだわって、美しく料理したいと思っているからです。量ではなく、その一品の完璧さや美しさの中に喜びを見出しているのです。私はまだ学びの途中です。良さというものについて、そしてそれは決して終わることはないでしょう。一つの仕事に対する喜び、意欲、そして妙技というものは、一種の楽しみを人々に与え、そしてもちろん自分自身にも楽しみを与えることができるものだと思います。

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エマ・ワトソン 2014年

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その後も国連でのスピーチを行うエマ! - J. Countess / Getty Images

【シチュエーション】国際連合における女性の権利のための機関「UN Women」の親善大使に任命され、「HeForShe」というキャンペーンを立ち上げる際に、男女平等の権利を訴えました。

(抜粋)

 男女ともに繊細でいられる自由があり、男女ともに強くいられる自由があるべきです。今こそジェンダーを、対立する2つのものと考えるのではなく、1つのスペクトラム上にあるものと考える時です。偽りの姿でお互いを定義し合うことを止め、ありのままの姿でお互いを認め合うことができれば、私たちはみなもっと自由になれるのです。それこそが「HeForShe」なのです。自由に関することです。

 男性にもこの活動に参加してほしいと思っています。そうすれば、あなた方の娘や姉妹、そして母親たちが偏見から解き放たれ、息子たちは弱さを抱える人間であってもいいんだと思えることでしょう。私たちがやむなく捨て去った部分を取り戻すのです。そうすることで、より本物の、より完全なる自分自身になれるはずです。

 このハリー・ポッターに出ていた女の子は何者なの? と、あなたは思うかもしれません。彼女は国連のステージで一体何をしているの? って。本当にそうですよね、私も同じことを自問してきました。ここに立つ資格が私にあるのか、私にもわかりません。わかるのは、私がこの問題に関心があるということだけです。そしてより良い世界にしていきたいという思いがあること。

 これまで経験してきたこと、そしてこのチャンスが巡ってきたことを考慮すると、声を上げるのが私の務めであるように感じました。イギリスの政治家エドマンド・バークがかつてこう言いました。「悪が勝利するために必要なたった一つのことは、善良な人たちが何もしないことである」。このスピーチをするのに緊張や疑念を抱いたときは、自分に強く言い聞かせました。「私でなければ、いったい誰が。今でなければ、一体いつ」。あなたの目の前にもチャンスがやってきて、同じような疑念を抱いたときに、この言葉が助けになるといいなと思っています。

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マーロン・ブランドではなくサチーン・リトルフェザー 1973年

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サチーン、マーロンからのスピーチを手に - Michael Ochs Archvies / Getty Images

【シチュエーション】マーロンは『ゴッドファーザー』で2度目の主演男優賞に輝いたものの、映画界にはびこる人種差別に抗議するため受賞を拒否。代わりにネイティブ・アメリカンの活動家で女優のサチーンが登壇し、スピーチをしました。

(全文)

 こんにちは。サチーン・リトルフェザーです。わたしはアパッチ族(ネイティブ・アメリカンの一民族)で、全米におけるネイティブ・アメリカンのイメージ向上を目指す会の会長を務めています。今夜は、マーロン・ブランドの代理でやってきました。

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演技以外でも話題を呼んだマーロン(画像は『ゴッドファーザー』より) - Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 彼はとても長いスピーチを私に託しましたが、時間の都合により今ここで読むことができません。しかし後ほど、記者の方々にお伝えできればうれしいなと思っています。彼は非常に悔やみながらも、この偉大な賞をお受けすることができないのです。なぜなのか、それは映画業界におけるネイティブ・アメリカンへの待遇が理由です。すみません、それはテレビや映画での扱いに、ウンデット・ニーの虐殺(1890年、アメリカ軍の騎兵隊が民族浄化としてネイティブ・アメリカンを虐殺した事件)といった近年の出来事もです。

 私は今、ここで切に願っています。私が今夜のステージを台無しにしていないということを。そして将来、私たちの心と思いやりが、愛と寛大さに出会うことを。マーロン・ブランドに代わって、どうもありがとうございました。

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