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2023年アカデミー賞授賞式の見どころは?デーブ・スペクター徹底解説

デーブ・スペクター

 今年もアカデミー賞授賞式の季節がやって来た。ハリウッドのトップ俳優陣が勢ぞろいし、有名歌手による豪華パフォーマンスや司会者の巧みなジョークも楽しい華やかな映画の祭典は、特別感と生放送の緊張感も相まってさまざまなドラマを生んできた。しかも、今年のアカデミー賞は例年以上に見どころが満載! アカデミー賞授賞式の現地取材経験もあり、アメリカのテレビ番組や情報等を日本に紹介している放送プロデューサーのデーブ・スペクターが鋭い視点で解説する。(取材・文:市川遥、写真:中村好伸)

『トップガン』に『アバター』!大作も入った作品賞

 歴代アカデミー賞授賞式の視聴率は、作品賞にどのような作品がノミネートされ、受賞したかに大きく左右されている。デーブは近年のアカデミー賞にバッサリ切り込む。

「一番視聴率が高かったのが『タイタニック』が受賞した年で、今からちょうど25年前。近年、アメリカで決まり文句になっているのが“アカデミー賞作品賞、誰も観ていない”というもの。ヘビーすぎたり、マイナー系だったり、そんなのばかり!」

トップガン マーヴェリック
『トップガン マーヴェリック』は作品賞などオスカー6部門ノミネート - Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 だが、今年はエンターテインメント大作『トップガン マーヴェリック』『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』『エルヴィス』も作品賞にノミネートされている。デーブは特にトム・クルーズがたたえられるべきだと語る。

「配信作品が全盛の中でよくやったなと思います。トム・クルーズには特別賞をあげた方がいいですよ! コロナの後、配信を断って『トップガン マーヴェリック』を劇場公開し、ハリウッドを復活させたんですから。外国でのプロモーションでも彼の右に出る人はいないしね。だから今年の見どころは、果たしてそういう大作が受賞できるかどうか、です」

デーブ・スペクター

 アカデミー賞は、2010年より作品賞だけノミネーション本数をそれまでの5本から最大10本に拡大した(第94回以降は10本に固定)。デーブはこの件に関してもユニークな見解を示す。

「“作品賞誰も観てないよ!”が決まり文句になったくらいですから、そのイメージをなくすために作品賞は幅を広げたんですけど、だからと言ってそうした作品が獲れるという意味じゃない」

 そうは言っても、受賞結果は信頼が置けるものだという。

「一つだけ言えるのは、投票するアカデミー会員はちゃんと全作観て、判断していると思います。多くのカテゴリーでノミネーションは専門の人しか選べない。ちゃんとわかっている人が投票するから」

アンドレア・ライズボロー
サプライズノミネートを果たしたアンドレア・ライズボロー - Dia Dipasupil / Getty Images

 そんななか、今回のアカデミー賞でデーブが注目しているのが、主演女優賞にサプライズノミネートを果たしたアンドレア・ライズボロー(『トゥ・レスリー(原題) / To Leslie』)だ。

「普通ならスルーされるような小さな映画なんですけど、演技はすごいので、女優たちがみんな『彼女をノミネートしてね!』とキャンペーンをやったんです。これは異例。普通は映画会社が、見ている側が具合が悪くなるくらいしつこく広告を打つんですよ。お金があれば、影響力がある。『こんなに言われているんだったら……』って思っちゃうんです。でも今回珍しいのは、役者たちがSNSでムーブメントを作った。こういうことは、今まで記憶にありません。それがいいことかどうかはわからないですよ。でも、映画会社が一方的に広告にお金を出して影響を与えるよりは、まあいいんじゃないかと。だって演技下手だったらやらないですよ。トップの俳優たちが言っているから、満更でもないと思うんですよね」

 デーブの言う通り、日本でもヒットした『トップガン マーヴェリック』などの大作がどれだけ爪痕を残せるかは、今年のアカデミー賞の注目ポイントだろう。さらに異例のノミネートとなった主演女優部門からも目が離せない。

ウィル・スミスのビンタも!アクシデントも魅力

ウィル・スミス
第94回米アカデミー賞授賞式でウィル・スミスにビンタされたクリス・ロック - Myung Chun / Los Angeles Times via Getty Images

 アカデミー賞授賞式は、後世まで語り継がれる数々の名場面を生んできた。赤狩りによってアメリカから追放され、1972年に名誉賞受賞のために凱旋したチャールズ・チャップリンにささげられた12分間のスタンディングオベーション。黒人初の主演男優賞を受賞したシドニー・ポワチエ、女性で初めてアカデミー賞監督賞に輝いたキャスリン・ビグローなど史上初の瞬間は、まさに感動の場面だ。『ゴッドファーザー』で2度目の主演男優賞に輝くも人種差別に抗議するため受賞を拒否し、代わりにネイティブアメリカンの活動家にスピーチさせたマーロン・ブランド。そしてステージに乱入した全裸男や昨年のウィル・スミスのビンタといったアクシデントまで、デーブはアカデミー賞授賞式の印象深いシーンを次々と挙げる。そしてそうしたアクシデントは、視聴率にとっても必要なことの一つだという。

デーブ・スペクター

「映画離れが深刻な中、なんでアカデミー賞授賞式を観るかというと、やっぱり “今年は誰がビンタをやるか”ですよね。アワード番組が話題になるにはそうした瞬間が必要ですから。ウィル・スミスにはあれでオスカー像あげてもいいくらいです。みんな批判しながらも盛り上がったからね! 過去にもいろんなアクシデントがあったじゃないですか。『ラ・ラ・ランド』の幻の作品賞(※封筒の取り違えにより発生。『ラ・ラ・ランド』チームはステージに上がって喜ぶも、本当に受賞したのは『ムーンライト』だった)や、ジョン・トラボルタがイディナ・メンゼルを間違えて“アデル・ダズィーム”と謎の名前で呼んだこととか。そうした瞬間があるからこそ、アカデミー賞授賞式は最高なんです」

司会者は自身3度目のジミー・キンメル

ジミー・キンメル
もうオスカーの司会はお手の物?3度目の登板となるジミー・キンメル - Eddy Chen / ABC via Getty Images

 今年の司会者は、これが3度目の登板となるジミー・キンメルだ。アカデミー賞授賞式は第91回から第93回まで司会者なしで開催。昨年の第94回で司会が復活したものの、レジーナ・ホールエイミー・シューマーワンダ・サイクスの3人が務める形であり、今年は久々に一人が仕切る、伝統的なスタイルとなる。

「アカデミー賞授賞式には緊張感があるんです。オスカー像がもらえるかもらえないか、慣れているベテランでもやっぱり緊張しますよ。大きいイベントで全世界が観ているわけですし。だから彼らの緊張感を和らげるために、司会者は大体コメディアンなんです。徳光(和夫)さんだったら呼ばれません(笑)。ちゃんとしすぎているから。ちょっと弾けているような人が求められているんです」

 これまでもボブ・ホープジョニー・カーソンビリー・クリスタルなどコミカルな名司会者によってアカデミー賞は一層盛り上がったが、ジミー・キンメルはいい選択だとデーブは言う。「コメディアンで夜のトークショーをやっていて、それは映画のプロモーションには欠かせない番組だから、ジミーは俳優陣とほとんど会ったことがあると思います。彼は時事ネタとか、ジョークがいいですよ! ギリギリまで攻めるんじゃないですかね? だから、ウィルのビンタ事件にどうやって触れるかが見ものです」

レディー・ガガに『RRR』!豪華な音楽パフォーマンス

 歌曲賞にノミネートされた楽曲が、人気アーティストたちによって実際に披露されるのもアカデミー賞授賞式の大きな見どころといえる。

「過去によかった音楽パフォーマンスといえば、ファレル・ウィリアムスの「ハッピー」。子供たちとかいっぱい出て来て、オリンピックの開会式みたいで楽しかった! あと、マイケル・ジャクソンが14歳で「ベンのテーマ」を歌ったのも、今観るとすごいですよ。マライア・キャリーとホイットニー・ヒューストンがデュエットした「ホエン・ユー・ビリーヴ」も。FNS歌謡祭みたいにコラボが多いんですが、あれも楽しくて贅沢! 一番良かったと思うのは、やっぱりライオネル・リッチーとダイアナ・ロスの「エンドレス・ラブ」です。最高でしたね」

レディー・ガガ
レディー・ガガ&ブラッドリー・クーパーのデュエットには観客総立ち! - Kevin Winter / Getty Images

 今年の歌曲賞は、レディー・ガガの「Hold My Hand」(『トップガン マーヴェリック』)や日本でもロングランヒットとなっているインド映画『RRR』の「Naatu Naatu」がノミネートされたことも話題だ。

「ガガは第91回、ブラッドリー・クーパーとデュエットした「シャロウ」(『アリー/スター誕生』)がガチで良かったですからね! インドのぶっ飛んだ映画『RRR』、あれもいい! インド映画は急に歌い出すのが、ちょっと不気味で面白いじゃないですか。歌曲賞のラインナップからして、今年の授賞式はかなりスケール感があるパフォーマンスになるといえるんじゃないでしょうか」

ゼンデイヤ、
第94回アカデミー賞授賞式のレッドカーペットでのゼンデイヤ、リリー・ジェームズ、ジェシカ・チャステイン - Momodu Mansaray / Mike Coppola / David Livingston / Getty Images

 そのほか、美しく個性的なドレスがあふれるレッドカーペットから、授賞式の華やかな幕開けとなるオープニングナンバー、プレゼンターたちのジョークや受賞スピーチなど、「もはや映画だけの“何か”ではなく、授賞式自体がエンターテインメントなんです。一番盛り上がるアワード番組ですから」とデーブ。アカデミー賞授賞式はまさに、全エンタメファンにとって見逃せない番組。お気に入りの映画や俳優の受賞結果をハラハラ追いながら、エンタメの本場が総力を尽くした本気のショーの楽しさにどっぷりと浸かってほしい。

第95回アカデミー賞授賞式は、3月13日(月)午前7時30分よりWOWOWプライム、WOWOWオンデマンドにて生中継 字幕版は午後22時より 公式サイト

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