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世界のクロサワは偉大!世界のツカモトもおもわずサインをおねだり?

第66回ヴェネチア国際映画祭

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サインをもらって大喜びの塚本監督と野上照代さん
サインをもらって大喜びの塚本監督と野上照代さん - Photo:Harumi Nakayama

 来年、生誕100周年を迎える黒澤明監督のシンポジウムが、第66回ヴェネチア国際映画祭で、黒澤監督の命日に当たる6日に行われた。イベントには黒澤作品のスクリプターを務めた野上照代氏や、海外に黒澤作品を紹介したドナルド・リチー氏、仏の映画評論家ミシェル・シマン氏、米誌「タイム」の評論家リチャード・コルリス氏、イタリアの評論家アルド・タッソーネ氏が参加。150席の会場は、満席となった。

映画『TETSUO THE BULLET MAN』

 まず野上さんがヴェネチアと黒澤監督の関係について、「日本で評判の悪かった『羅生門』が、関係者も知らないまま51年のヴェネチア国際映画祭に出品されて、グランプリをいただいた。あのときもし、賞をとらなかったら、黒澤監督の人生も変わっていたと思うし、その後、日本映画が世界へ出ていくのもだいぶ遅れたと思います。それくらい奇跡的な作品なんです。ご存じかと思いますが、『羅生門』は公開直前、編集していた隣のスタジオが火事になってしまった。その大混乱の中、黒澤監督がネガの入った缶を表の畑に出せー! と放り投げさせたおかげで焼けずに済んだ。幸運の女神が付いているとしか思えない。さらに82年には、過去のグランプリ作品の中から与えられる栄誉金獅子賞にも選ばれた。そのとき、わたしも黒澤監督と一緒にヴェネチアに来たのですが、『ラッキーだ』ととても喜んでいました。つまり、ヴェネチアと黒澤監督は深く結ばれ、さらに黒澤監督の人生を大きく変えた映画祭なんです」と語ると、場内から一斉に拍手が沸き起こった。

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 シンポジウムでは主に、「なぜ黒澤作品が海外で受け入れられたのか?」について語られた。コルリス氏は「米国ではヴェネチア後、アジア映画で初めてグランプリを受賞した作品ということで『羅生門』がやっと紹介されたわけですが、西洋的な素質を持っている監督として受け入れられたと思います。それまでの溝口健二などの古い監督と異なり、アメリカ映画の影響を特に受けていたと思うんですね。エキゾチックな作品の中にもスピード感などハリウッド映画に通じる感覚があったので、米国人にも親近感を持たれたのではないかと思います」と分析。シマン氏も「『乱』や『蜘蛛巣城』にシェークスピアを取り入れたり、わたしたちにも理解しやすかった。昔、オーソン・ウェルズと『シェークスピアに詳しい映画人は誰だと思う?』と話したとき、『クロサワしかいない』と言っていましたよ。彼が、われわれの文化を理解したように、わたしたちも日本文化に心を開いていかなければいけないと思いますね」と語った。

 会場からは野上さんに「今の日本の若い監督は、黒澤作品の影響を受けていますか?」という質問が飛び出した。野上さんが「若い人は、黒澤監督を否定しているでしょうね」と答えると、客席にいた塚本晋也監督が立ち上がって反論。塚本監督はマイクを取ると「僕は黒澤作品に相当影響を受けています。高校2年生の時に、東京・有楽町の劇場で『七人の侍』のリバイバル上映を観に行ったのですが、上映時間が長いので途中に休憩の文字が出た瞬間、一番前の客席からザワザワザワ~とどよめきが起こったんです。映画を通して、お客さんが一体化した感じがしたんですね。僕もそんな映画を作りたいと思ったんです」と黒澤監督への愛を明かした。 

 続いて塚本監督はおもむろに、カバンから野上さんが黒澤作品でのエピソードをつづった著書「天気待ち 監督・黒澤明とともに」の英語版を取り出すと、野上さんの元に駆け寄りサインをおねだり。世界のツカモトが普通の映画ファンに戻った瞬間を見た観客からは、大爆笑が起こっていた。(取材・文:中山治美)

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