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実母を通して老後の現実と希望を描くドキュメンタリー 監督が明かす出発点

実母を通して老後の現実と希望を描くドキュメンタリー 監督が明かす出発点
4年間にわたって実母をカメラで追った坂口香津美監督

 日本人の老後の現実と希望を、監督自身の母親の姿を通して描いたドキュメンタリー映画『抱擁』の試写会&記者会見が、14日に有楽町の日本外国特派員協会で開かれ、坂口香津美監督が撮影のいきさつと作品の意図を語った。この日は落合篤子プロデューサーも出席した。

 本作は、娘と夫を相次いで亡くし、老いの孤独と恐怖から精神的な混乱にまで陥った78歳(当時)の老婦が、郷里の島での暮らしの中で再び生きる希望を見いだしていく姿を、息子である坂口監督が4年間にわたって追いかけた作品。昨年、第27回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で正式上映されると、その衝撃と感動が大きな話題になった。

 これまで数々のテレビドキュメンタリーや、映画『ネムリユスリカ』『夏の祈り』などで、家族や若者をテーマにしてきた坂口監督。本作で実母にカメラを向けたきっかけを尋ねられると、「母がパニックを起こして救急車を呼ぶので困っていると、父から電話があり、初めて長女を亡くし悲嘆に暮れる母に気付いたんです。一緒に暮らしだした後も、自分を置いて仕事に出る僕を母はなじる。反論しても仕方がないので、手元にあったカメラを何の気なしにいじっていたんですが、そこに映った母がとても小さく見えました」と静かに語る。

全体
会見に出席した落合篤子プロデューサーと坂口香津美監督

 続けて、「母といると、いつか自分は母に手を上げるかもしれないという緊張感があった。でもカメラ越しに母を見ることで、一定の距離で接することができた。そこが出発点です。撮影は、僕が母親への愛情を取り戻す結果にもなったんです」と撮影を通して自身も母親との関係を見つめ直すことになったと明かした。

 「お母さんは、今もお元気ですか?」という記者の質問に、坂口監督は「郷里の種子島に戻って見違えるほど元気になり、島の人たちは『奇跡のようだ』と言っています。1971年、高度経済成長期の東京に出てきて、僕ら子供を養った両親ですが、2025年には団塊世代が70歳以上になり、かつてない高齢化社会になりますね。母や父はこの東京で、都市で老いた第1波、予兆だったかもしれません。その意味で普遍化はできる。本作を撮ってから、介護の悩みを聞いてほしいと相談に来る人が増えて、僕は美輪明宏さんみたいになっていますが」と最後は会場の笑いを誘っていた。(取材/岸田智)

映画『抱擁』は4月25日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開


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