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坂本龍一が明かす『レヴェナント』オスカー監督との妥協なき創作現場「ノイローゼになりかけた」

坂本龍一が明かす『レヴェナント』オスカー監督との妥協なき創作現場「ノイローゼになりかけた」
オスカー監督との妥協なき創作現場を明かした坂本龍一 - 写真:奥山智明

 アカデミー賞で主演男優賞・監督賞・撮影賞の3冠を獲得したアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の映画『レヴェナント:蘇えりし者』で音楽を担当した坂本龍一がインタビューに応じ、その妥協なき創作現場について明かした。実在したハンターの大自然でのサバイバル劇を描いた本作は、主演のレオナルド・ディカプリオに「今までで最も困難だった」と言わしめた過酷なロケが話題となっているが、その過酷さは撮影現場だけにとどまらなかったのだ。

 坂本がイニャリトゥ監督作に携わるのは『バベル』(2006)に続いて2回目。『バベル』ではメロディアスな「美貌の青空」など既存曲を2曲提供する形での参加だったが、今回はオリジナル曲での依頼。さらにイニャリトゥ監督は、「間が重要」「メロディーよりもサウンドの積み重ねが必要」といった課題を次々に投げてきたという。

 創作現場での監督とのやりとりを振り返り、「あるシーンで音楽をつけると、『あなたは今までこういうことをやってきたでしょう。でも今回は違うのが欲しい』と。それが、2001年から10年間組んできたドイツの音楽家アルヴァ・ノトとのノイズ的な音の感じを使いたかったようです。後で知ったのですが、彼は映画音楽だけではなく、僕の音楽を全て聴いていたんです」と語る坂本。イニャリトゥ監督は、坂本の手の内を知る実に手強い相手だった。

 だがそれは、始まりに過ぎず。編集が変わるたびに坂本の元へ映像が送られ、それに合わせて音楽をつける作業が続く。バージョン1から始まり、2、3、3.4、3.5……そして最終は8.5まで。坂本は「3.4で作った音楽は、シーンも変わっているので3.5ではもう合わない。また作り直しをしながら、新たな音楽も作らねばならない。ノイローゼになりかけました」と苦笑いした。

 そうした切磋琢磨の末に生まれた音楽の数々は、撮影監督エマニュエル・ルベツキが自然光でとらえた美しくも厳しい表情を見せる極寒の大地に威厳を与え、息子を殺害されて復讐に燃える主人公ヒュー・グラスの激しい内面をも表現する。「監督は、前作『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でもそれまでと全く違う音楽の使い方に挑んでいました。彼は今、既存のルールをぶち壊そうと挑戦的になっているんじゃないかな」。

 常に新たな試みに挑んでいる二人だけに、イニャリトゥ監督と再び仕事をするか? との質問に、坂本は「もう十分でしょ、お互いに」と笑って即答した。その言葉には世界のトップアーティスト同士、とことん追求して最高の芸術作品を作り上げたという達成感に満ちあふれていた。(取材・文:中山治美)

映画『レヴェナント:蘇えりし者』は公開中


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